もふもふたいむ
いつものようにログインして、れんちゃんのホームへ。私がここに入ると、真っ先にシロが出迎えてくれる。この子、私のテイムモンスのはずなのに、ずっとここにいるんだよね。解せぬ。
「ねえ、シロ。シロって私がテイムしてるよね?」
私が聞くと、シロがすり寄ってきた。うんうん。だよね。かわいいやつめ。
わしゃわしゃとシロを撫でていたら、れんちゃんがログインしてきた。キツネが楽しみなのか、わくわくしているのが見ているだけでも分かる。そんなれんちゃんは私とシロを見つけると、
「あ、おねえちゃん!」
嬉しそうに手を振って、そしてシロがれんちゃんの方へと走っていった。
うん。いや。えー……。
「わ! えへへ、シロもかわいいね」
シロの首回りをもふもふするれんちゃんと、れんちゃんを舐めまくるシロ。
ねえ、シロさん。れんちゃんが来た時の方が嬉しそうに見えるんだけど、どういうことかな……?
いやいや、うん。気持ちは分かる。分かるとも。れんちゃんかわいいからね!
勝手に一人で納得してたら、シロが戻ってきていた。何やってんだお前、とばかりの冷たい視線。やめてください、心にきます。
「おねえちゃんおねえちゃん」
「んー?」
呼ばれて前を見てみたら、れんちゃんが白虎に押し潰されていた。嫌がってるわけではなさそうだけど、大丈夫なのかなあれ。白虎はぐるぐる鳴きながられんちゃんに頬ずりしてるけど。
「三十分だけ、遊んでも、いい?」
「ああ、うん。いいよ。もちろん。遊んでおいで」
ぱっと顔を輝かせて、れんちゃんは嬉しそうに頷いて。
そして集まってきたウルフや猫や雀にもみくちゃにされていた。
うん。よし。いつもの光景だね!
「てすてす。マイクのテスト中。いろはにほへとちりぬるを。れんちゃんかわいいやったー!」
『お前はいきなり何を言ってるんだ』
『大丈夫? 大丈夫じゃない? 知ってる』
『おいしゃさん、このひとです』
『手遅れです』
『即答で草』
「いきなりの罵倒の嵐に私の心は折れそうだよ……」
みんな知らないだろうけど、私はなんだかんだと打たれ弱いのだ。本当だよ?
「まあれんちゃんがいれば全回復するんだけどね!」
『ですよね』
『知ってた』
『何を今更』
ふむ。いやでも。あれを見ても、同じことが言えるかな?
てなわけで、私に向けていた光球をれんちゃんの森の前に向ける。そこには、ディアを背もたれにして子犬たちを抱えるれんちゃんがいる。れんちゃんの顔はとても幸せそうだ。
他の子犬もれんちゃんのお腹の上に陣取っていて、頭の上はやはりラッキー。
『死ぬ。死んだ』
『しっかりしろ! 致命傷だ!』
『かわいいとかわいいが合体して最強に見える。いや最強になってる』
うんうん。いやあ、いいよねえ。もう、見てるだけで幸せな気持ちになれるよ。楽園はここにあったのだ。なんて。
「れんちゃん、そろそろ行こっか」
「はーい」
よいしょ、とれんちゃんが子犬たちをいつもの柵の中に連れて行く。連れて行く、というか、れんちゃんが歩くと子犬たちもとことこ歩いてついていった。いいなあ、私もやってみたい。
れんちゃんが柵の中に入ると、子犬たちがそれぞれ遊び始める。れんちゃんは満足そうに頷いて、私の方へと戻ってきた。
おお。なんか、子犬たちがれんちゃんの方を見て尻尾をふりふりしてる。さよならの挨拶かな。れんちゃんもすぐに気付いてにこにこしてる。れんちゃんが手を振ると、子犬たちの尻尾の動きが早くなった。
『かわいい』
『あああああああ!』
『いかん、こいつには刺激が強すぎた!』
なんか、コメントが阿鼻叫喚なんだけど。うん。触らぬ神に何とやら。放置だ。
私はコメントを全て見なかったことにして、れんちゃんと一緒にホームを後にした。
というわけで、戻ってきました雪の山。村を出て、山頂を目指します。そこに討伐対象の九尾のキツネがいるわけだ。
『なにそれ強そう』
『強そうだろ? でもここ、最初の街のすぐ近くなんだ』
『つまり?』
『周囲のフィールドボスと大差なし』
『えー……』
まあ、うん。そうなのだ。九尾のキツネはいろんな作品に出てくる妖怪で、どれもこれも最終ボスとか、そうでなくても強敵として描かれるけど、このゲームでは初期のボス扱いだ。
「つまりはある程度レベルが上がった私からすると……」
『ぶっちゃけザコ』
「はっきり言うな」
事実だけどさあ! そこはこう、ちょっとはぼかそうよ!
そして依頼を受けてから村から先に進むと、たくさんのモンスターが出現するようになる。本当に、たくさん。
「ただし全てノンアクティブです」
『ええ……』
『何も知らないで来たら緊張しそうだなw』
『気付いてしまうと拍子抜けだけどな』
本当に。私も最初は知らないで来たんだけど、その時はやばいクエストを始めてしまったと後悔したものだ。あっという間にクリアしちゃったんだけど。
まあ、でも違うのだ。私が言いたいのはそういうことじゃない。
「つまりさ。ノンアクティブとはいえ、キツネさんがたくさん出るわけですよ」
「キツネさん!」
「そう、キツネさん! ……あ、出てきてる」
れんちゃんの視線の先を見てみると、茶色にも見えるキツネがこちらを見つめていた。睨んでいるわけでもなく、じっと見つめている。れんちゃんの反応はいつも通りだ。
「かわいい!」
れんちゃんは早速そのキツネに近づいて行く。けれどそのキツネは、れんちゃんが近づいた分だけ離れてしまった。
「んー?」
首を傾げて、れんちゃんが立ち止まる。キツネも止まった。
「おいで。おいで」
れんちゃんが手招きする。けれど動かないキツネさん。あ、いや、ちょっと誘惑されてるみたい。耳をぴくぴくさせながら、れんちゃんをじっと見てる。
壁|w・)毎日恒例もふもふたいむ。
そして、れんちゃん VS キツネさん。
次回は、白いふわふわキツネさん。
VRゲームで月刊一位になりました。読んでくれている皆様、ありがとうございます。
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