配信二十九回目:もこもこれんちゃん
「れ、れんちゃん、急にどうしたの……?」
「え? えっとね、かっこいいところを見たいなって言ったら、やってくれるようになったんだよ。かわいくてかっこいいでしょ?」
「あ、うん……。そうだね……」
『ミレイ! そこで諦めるなよ!』
『お前が止めなくて誰が止めるんだ!』
「え、じゃあ君たちが止めなよ。私は無理。たまにがおーを見られるなら、それでいいかなって」
『なるほど同意』
『あまりにも早い手のひら返し、俺じゃなくても見逃さないね』
街中でやるなら怒らないといけないけど、ホーム内でなら問題ないでしょ。むしろ定期的にやってほしい。次は是非とも写真がほしいところだ。
「うん。おもいっきり脱線したけど、れんちゃんそろそろ……」
『ミレイちゃんミレイちゃん!』
「次はなに!?」
さくっと説明してさくっと行くつもりが、もうすぐ七時だよ! いつになったら出発できるのかな!? もしかしなくても説明だけで終わらないかなこれ!?
『防寒装備用意しておいたよ! きっといつか行くはずだって思ってたから! 雪山の前で待ってるからね!』
「あ、アリスか……。えと、ありがとう? でもファトスで買っても……」
『もこもこれんちゃん、見たくない?』
「是非! お願いします!」
それは是非とも見てみたい! 店売りの防寒着って本当に必要最低限でかわいげも何もないからね! アリスなら、きっと分かってくれてるはずだ。
『もこもこれんちゃん』
『やばい、楽しみになってきた』
『はやく行こうぜさっさとしろよミレイ!』
「ひどくないかな?」
むしろ時間かかってるの、君たちのせいでもあると思うんだけどね私は。
ともかく、あまり待たせるのも申し訳ないので、れんちゃんと一緒に雪山に向かうことにした。
ファトスから出て少し歩いて、れんちゃんにディアを召喚してもらう。れんちゃんがお願いすると、私たち二人を背中に乗せてくれた。いい子だ。
「もふもふごろーん」
「もふもふごろーん」
『この姉妹はw』
『似たもの姉妹w』
『少し羨ましい……。気持ちよさそう……』
ディアは大きいからね、ごろんとできる。でもさすがに二人だとごろごろは少し危ないけど。
ディアの背中に揺られながら、スライムの森を駆け抜ける。れんちゃんがスライムにも興味を示したけど、そっちはまた今度だ。きりがないからね。
「スライムさんかわいかった……」
「うん。まあ、ぽよぽよしててかわいいかな。意外と愛嬌があるし」
「むう……。キツネさんの次はスライムさん!」
「了解です!」
動物じゃないからだめかなと思ってたんだけど、スライムも大丈夫なのか。忘れないようにしないとね。
しばらくディアの上で揺られていると、すぐに森を抜けることができた。森を抜けた先は一本道が延びていて、その奥に雪山が見える。ちなみに森と雪山の間は雪原だ。
私は以前も見た光景だから気にしなかったんだけど、れんちゃんは私の服をちょんちょんと引っ張ってきた。
「ん? どうしたのれんちゃん」
「ゆき」
「うん」
「あのね……。ゆきだるま、とか、ゆきがっせん、とか。してみたい」
「…………」
とりあえず私は自分のことを殴りたくなった。
れんちゃんにとっては雪も初めてだ。知識として雪だるまとか雪合戦とかは知っていても、そもそもとして雪に触れたことすらない。遊んでみたいって思うのは当たり前だ。
でも、雪だるまならともかく、雪合戦は二人でやるのはちょっと寂しい。
「れんちゃん。キツネさんの後でもいいかな? どうせなら、キツネさんと一緒に遊ぼう?」
「うん!」
お。納得してくれた。むしろ楽しみにしてくれてるかも。一安心だ。
『ああ、そうだよな。れんちゃん、雪も初めてか』
『普段から元気いっぱいだから忘れそうになるな』
『是非ともたくさん遊んでほしい』
終わったら、ね。れんちゃんも、たくさんの友達と一緒に遊ぶ方が楽しいだろうし。
雪原を走ると、すぐに雪山が見えてきた。この一本道はその雪山に真っ直ぐ続く。雪山のクエストがある場所も道の先だから迷うことはない。とても便利。
で、その道の途中、山の入口の前に、見知った人影があった。
「れんちゃーん! ミレイちゃーん!」
「あ、アリスさんだ!」
れんちゃんが大きく手を振ると、アリスもぴょんぴょん飛び跳ねて手を振ってきた。私と同い年ぐらいに見えるのに子供っぽい。
アリスの隣にはエドガーさん。その隣には、彼のテイムモンスのドラゴン。アリスとエドガーさんに面識があったことに驚くけど、なんとなく、彼がここにいる理由を察してしまった。
二人の前でディアから下りる。山の中だとディアは少し大きすぎるので、残念ながらこの子はここまでだ。
「ディア、また遊ぼうね」
れんちゃんがディアをなでなでもふもふしている間に、私は二人に向き直った。
「早いね、アリス。まあ予想がつくけど」
「まあね。優秀な足を見かけたからね!」
「どうも、足です」
哀愁漂うエドガーさん。ドラゴンは飛べて楽しかったのか、どことなく機嫌がよさそうだ。
『ファトスにいるれんちゃんたちより早いって不思議だったけど、そういうことか』
『エドガーさん、ご苦労様です』
『でも美少女と二人きりとか。裏山』
「だったら今すぐ代わってほしいかな。ドラゴンで飛んでる間、早くして急げって何度も蹴られたからね。女性恐怖症になりそう」
『草』
『いやそれでも、お前の立場が羨ましい。だって、れんちゃんと気軽に会えるんだぞ』
『それな。お前ほんと自慢するのもいい加減にしろよ?』
「あれー?」
コメントに罵倒されまくってるエドガーさんはそのままにして、私は早速アリスから衣装を受け取った。れんちゃんと、私の分。うん、いいかも。
「れんちゃんやーい」
「はーい」
ディアがいなくなってちょっとだけ寂しそうなれんちゃんがすぐに駆け寄ってくる。おっと、抱きついてきた。とりあえずぎゅー。
「れんちゃんの防寒着をアリスからもらったよ!」
「わ! ありがとうアリスさん!」
にっこり笑顔でお礼を言うれんちゃん。うん、アリス。すごく笑顔がだらしないよ。でへへ、なんて効果音が聞こえてきそうなぐらい。
とりあえずれんちゃんに服を譲渡して、早速着てもらった。
れんちゃんの防寒着は、薄い青色の毛糸の帽子に、真っ白なもこもこセーター。下はスカートだけど、もこもこが足を覆ってる。手袋ももこもこ。全体的にもこもこ。
「まさにもこもこれんちゃん。何これかわいい。写真写真」
壁|w・)もふもふごろーん。そしてもこもこ。
もこもこであったかれんちゃんです。マフラーもあるかも。
次回はアリスたちとのお話です。
そしてレビューありがとうございます……!
あまりもらえないものなので、とても嬉しいのです。
面白い、続きが読みたい、と思っていただけたのなら、ブックマーク登録や、下の☆でポイント評価をいただけると嬉しいです。
書く意欲に繋がりますので、是非是非お願いします。
ではでは!






