配信130回目:知らない人ぜんめつあーるてぃーえー
本当に、ただただ広いだけの草原。木も岩もない、背の低い草しかない広いエリア。そこが、グラスドラゴンの住処。
「本当に何もなさすぎてびっくりだよ」
「ドラゴンの強さを、エリアの邪魔なしに体感だきるように、らしい」
「ええ……」
それだけ強いドラゴンだってことだね。でもそこまで聞くと気になることがある。
「始祖龍とどっちが強い?」
「始祖龍」
『始祖龍に決まってんだろ』
『比較対象がおかしい』
「あ、そう……」
改めて思うけど……。ストーリーの最後に戦えるボスとはいえ、やばすぎない? 最新のつよいボスよりも強いって……。それだけ特別感もあるけど。
さて。グラスドラゴンだけど。わりと目立つ場所に、というより、草原のど真ん中にいた。丸くなって眠ってるドラゴンだ。
そんなドラゴンに向かっているのは、私たちだけじゃない。別のパーティもいた。
「ミレイちゃん、多分あっちのパーティの方が早くつくけど……。どうする?」
「待つしかないよね?」
「ん。仕方ない」
こればっかりはね、れんちゃんを優先して、とはさすがに言えないから。
『ちゃんとやめた方がいいって分かるんだな、この姉』
『気持ち悪い姉はわりとマナーを守る方だから』
『マナーを守るなら変な笑い声をやめてほしいです』
『絶対に無理だろ』
なんだか好き放題言われてるような気がするなあ。
でも。でもだよ。
「私なら、れんちゃんを最優先にするけどね!」
『知ってる』
『むしろそれ以外考えられない』
理解度が深いってやつだね!
お馬さんから下りるタイミングだけど、これはグラスドラゴンから離れた場所で勝手に立ち止まるみたい。そこで下りて、前のパーティがいなくなるまで待てばいいとのこと。
「はい、れんちゃん。下りてねー」
「えー」
「もっと乗りたいのは分かるけど、そのままだと他のエリアに行っちゃうからね」
「はーい」
れんちゃんもグラスドラゴンに会いたい気持ちが強いらしい。すぐに馬から下りてくれた。名残惜しそうに手を振って、馬とはここでお別れ。ホームに帰ったらファラベラに乗せてもらおうね。
さて。まずはボスとしてのグラスドラゴンを見学しよう。
グラスドラゴンに挑むのは、多分だけど五人組のパーティ。ちょっと離れてるから、どんな戦い方をするのか装備じゃ分からない。
五人が挑もうとした、次の瞬間。
「おお……」
「わあ!」
グラスドラゴンが尻尾でなぎ払って、全滅しました。いや、強すぎない?
「ルル。本当にあれを倒したの?」
「倒した。手強かった」
「だろうね……」
あの人たちが弱かった、という可能性もあるけど、それにしても強すぎだと思う。
グラスドラゴンに挑んだ人たちはそのまま戦闘不能になったみたいで、光の粒子になって消えてしまった。多分、キャンプ地とかで復活してると思う。
「なむなむ」
「なむー」
「なんで二人でなむってるの?」
「なむってるってなに!?」
いつからなむは動詞になったの? なむるっていう動詞なの? いや、いいけど。れんちゃんと二人でなむりました。
それじゃあ、改めて。今度は私たちの番だ。でも、あんな光景の後だから、れんちゃんは怖がってないかな。大丈夫かな?
「わくわく」
うん。大丈夫そうだね。むしろわくわくしてるね。もうなでなですることしか考えてないね。もふもふしてないのがちょっと残念? だよねー。
それじゃあ……。れんちゃんも我慢の限界みたいだし、そろそろいいかな?
「よし!」
「わーい!」
私が合図すると、れんちゃんは嬉しそうに走っていった。犬かな?
『行動がわんこのそれなんよ』
『見える……見えるぞ……わんころれんちゃんが尻尾を振っている姿が!』
『あああわんころれんちゃんかわいいよおおおくんかくんかしたいよお!!』
『こいつついに自分の妄想で錯乱しやがった!』
妄想で錯乱ってある意味最強じゃないかな。普段から狂ってそう。
まあ、ともかく。ともかくだ。私たちもれんちゃんを追いかけよう。何も危ないことはないと思うけど。
「でもさ、アリス。今日のれんちゃんの着ぐるみはわんこの着ぐるみがベストだったんじゃないかな」
「ん……。私もそう思う。きっと似合ってた」
「言わないでよ……。私もちょっと思ってるから……」
走っていくわんこれんちゃんは私も見たい気持ちがあります。よく見てると言われるとその通りだけど。またお願いしたいね。
それじゃあ、れんちゃんとグラスドラゴンを見に行くとしよう。
壁|w・)知らない人は犠牲になったのだ……。ドラゴンの強さを強調する、その犠牲に……。
まあ例のごとく戦わないので特に意味はないのですけど。






