秋本さんとれんちゃん
「わあ……。ウサギさん! もふもふ!」
とってももふもふなウサギのぬいぐるみ。れんちゃんは目を輝かせて、もふもふうさぎをもふもふしてる。もふもふ。
「ふわふわ! やわらかい! かわいい!」
れんちゃんも大興奮だ。気持ちはとても分かる。本当に感動するもふもふっぷりだったからね。
れんちゃんは両手でぬいぐるみを抱いてもふもふしていたけど、そのもふもふに顔を埋めた。もふもふ、と言ってるのが微かに聞こえてくる。堪能してるらしい。
そうして顔を上げたれんちゃんは、とびっきりの笑顔でした。
「すっごくかわいいです!」
「う、うん……。よかった……」
ちょっと不安だったのか、秋本さんは安心したように息を吐いた。れんちゃんはいい子だから、そんなに緊張しなくてもいいのに。
「菫もそう思わない?」
「間違いなく未来を怖がっていたと思うわね」
「なん……だと……」
ばかな。私はとても優しいれんちゃんのお姉ちゃんだ。そんな心配する要素があるとは思えない。
「例えばだけど。もし誰かがれんちゃんを泣かしたらどうする?」
「え。ぶち殺すけど」
「…………」
どうして黙るの? 当然じゃない? 誰であっても、殺るよ、私は。
「この世界はれんちゃんを中心に回っているのです。れんちゃんがこの世の頂点です。人類皆れんちゃんを崇めるべき……!」
「秋本さん、おねえちゃんは気にしないでください」
「あ、うん」
「れんちゃん!?」
れんちゃんへの愛を語っただけなのに、お姉ちゃんはちょっと悲しいですよ!
「そのキツネさんも大事にしてくれてたんだね。嬉しい」
「キツネさんもすごくかわいい、です! もふもふいっぱい……!」
「ふふ……。また作ってくるね?」
「わあ……。楽しみにしてます!」
うんうん。仲良くなってくれて、私も嬉しい。秋本さんもなんだかやる気になってくれてるし、これはまた近いうちにぬいぐるみを作ってくれるかも。
あれ? でもそうなると、私が買ってくるぬいぐるみは基本的にいらなくなるのでは……。
「れんちゃんのお部屋はぬいぐるみがいっぱいだね」
私がちょっと後悔し始めていたら、秋本さんがれんちゃんにそう言った。
「うん! みんな、すっごくかわいいの! おねえちゃんからもいっぱいもらって……。どれも大切なおともだち!」
「そっか」
うん。うん。ちょっとだけ、自己嫌悪だ。
「どうしたのよ」
「純粋なれんちゃんを前に、ちょっと邪悪な気持ちになった自分に対して自己嫌悪しています……」
「いつものやつね」
「いつものやつ言うな」
いつものやつだろうけどな! ああもうれんちゃんかわいいなあ! さすが私の天使だよ……!
れんちゃんはいつものムーブを始めてる。いそいそとベッドから下りて、棚からぬいぐるみを持ってきてはベッドの上に並べていく。たくさんぬいぐるみを並べて、満足げにむふーとしてる。かわいい。
つまりは、ぬいぐるみの自慢だ。
「このキツネさんは、おねえちゃんからもらったぬいぐるみでね……」
「うんうん」
そんなれんちゃんのぬいぐるみ自慢を、秋本さんは嫌がることなく優しげな笑顔で聞いてくれてる。この人、すっごくいい人だね。
れんちゃんのぬいぐるみ自慢、興味ない人は聞き流すからね。殺意がわくね!
れんちゃんはぬいぐるみを紹介しつつ、紹介を終えたら一度抱きしめてふんにゃり笑って、横に置いて。そしてまた次を紹介。あのふんにゃり笑顔がお姉ちゃんは大好きです。
「ところで、未来」
「なにかな菫」
「今日もゲームやるのよね?」
「それはもちろん。今日はれんちゃんのホームで遊ぶ予定だよ」
シカさんがお友達に加わったからね。れんちゃんのホームでシカたちと戯れる予定だ。シカたちと遊ぶれんちゃんもきっとかわいいだろうなあ……。
「うえへへへ……」
「うへるのが早すぎるわよ……」
いやあ、だって。れんちゃんが遊ぶところを想像するだけで、やっぱりすっごくかわいいと私は思うのですよ。れんちゃんかわいいからね! 仕方ないね!
そんな話をしている間に、れんちゃんのぬいぐるみ自慢は終わったみたい。れんちゃんがやりきった顔をしてる。かわいい。
ぬいぐるみを片付け始めるれんちゃん。一個ずつ、丁寧に棚に戻していく。私もちょっと手伝おう。手伝うのはベッドから取ってれんちゃんに渡す程度だけど。ぬいぐるみリレーだ。
ぬいぐるみごとに棚の場所が決まってるらしい。でも今回はもふもふウサギぬいぐるみが増えたことで、ちょっと配置を変えるみたい。並べ終わった後に、ちょっと離れて眺めて、むむ、と唸って、ぬいぐるみの配置を交換したりしてる。
こだわりのある職人か何かかな? 職人れんちゃん。いいかもしれない。
それはともかく。
「れんちゃん。さすがに後にしよっか」
「あ、うん」
我に返ってベッドに戻ってきた。よしよし。えらいぞー。かわいいぞー。
「えへへー」
撫でられてご満悦のれんちゃんです。癒やしです。
「本当に中がいいよね……」
「秋本さんは兄弟とかいないの?」
「兄がいるけど、ちょっとね」
あー……。お兄ちゃんか。私は男の兄弟がいないから、ちょっと分からない感覚だ。やっぱりちょっと、仲が悪かったりするのかな。創作ならともかく、リアルで仲がいい兄妹ってあまり聞かないから。
「まあ、また来てよ。れんちゃんも、来てくれると嬉しいよね」
「うん!」
「あはは……。うん。また来るね」
そう言って、秋本さんはれんちゃんを撫でて微笑んだ。
壁|w・)せめて月1回はと思ってるのにぎりぎりになりました……。






