新作ぬいぐるみ
お昼。学校にて。
「ふへへ……シカと遊ぶれんちゃん……かわいかったなあ……」
昨日の思い出にふけっていました。いやあ、シカさんと遊ぶれんちゃんは最高だったね!
「また気持ち悪い笑顔になってる……」
「気持ち悪いとはなんだ! れんちゃんが気持ち悪いって言いたいのか! 怒るよ!」
「あんたが気持ち悪いのよ」
「ならよし!」
「いいんだ……」
お昼休みに私の席に来たのは、菫ともう一人、以前ぬいぐるみを作ってくれたクラスメイト、秋本さんだ。私と菫のやり取りに、その子が苦笑してる。
私はれんちゃんを愛でたいだけなのです。私のことはどうでもいいんだよ。
「それでね、大島さん」
「うん。なに?」
「その、今回もぬいぐるみ作ってきて……。どうかなって……」
「え、ほんとに?」
「うん」
そうして秋本さんから渡されたのは、なんだか、すごいぬいぐるみだった。いや、ものすごく大きいとかじゃないよ? むしろ大きさはどちらかと言うと小さいぐらい。紙袋に入る程度の大きさだから。
でも。ものすごく。ものすごーく、ふわふわだった。
「え、すごい、なにこれ……!」
ふわふわの綿で包まれたような感じの、ふわふわぬいぐるみだ。手触りがもうすごい。気持ちいい。ものすごくふわふわしてる。なにこれ。
「アンゴラウサギ、だっけ。それを見て、こんなウサギがいいなって思って……。がんばってみた」
「がんばってみた、なんてレベルじゃないんですが。お金取れるレベルなんですが。これが、女子力……!」
「未来とは無縁のものね」
「そこ! うるさいよ!」
これでも料理にはある程度自信があるんだ! だから私にだって女子力ぐらいはあるはずだ!
いやあ、それにしても……。ふわふわだ。これはれんちゃん、喜ぶぞ……!
「秋本さん」
「うん」
「いくら払えばいいですか」
「え」
さすがにタダでもらうことはできないよ。それぐらいの一品だよ。
でも秋本さんはいやいやと手を振ってしまった。
「お金なんていらないよ。れんちゃんが喜んでくれるだけで嬉しいというか……」
「なるほど、分かった」
「うん」
「れんちゃんに会いたいんだね!」
「うん。……うん?」
いやあ、そうだよね! 作ってくれたんだし、れんちゃんも会いたいはずだ。あの子なら直接お礼を言いたいはずだから。この人が作りましたー、みたいな感じで紹介しよう。
「いや、あの、さすがに会いに行くのはだめなんじゃないかなって……」
「あん? れんちゃんに会いたくない、とでも?」
「うわめんどくさ……。え、これ、どうしたらいいの?」
「諦めればいいと思うわ」
「ちょっと!?」
菫もこう言ってることだし、諦めるべきなのです。
それじゃあ、放課後に、だけど。秋本さんごあんなーい。
「い、いいの!? 本当に私が入ってもいいの!?」
「いいからいいから」
「諦めなさい。巻き込まれたら終わりだから」
「言い方ひどくない?」
放課後、やってきましたれんちゃんの病室。まずは最初の部屋で荷物を置きます。今回大事なものは、ぬいぐるみの入った紙袋。ただこれは、秋本さんに持ってもらっておこう。
「秋本さんから渡してあげてね」
「あ、うん……。いいの?」
「いいからいいから」
是非とも直接渡してれんちゃんのかわいさを堪能してください。
あ、いやでも、初めての人だと目が慣れるまで時間がかかるかも……? まあ、がんばってもらおう。
電気を消して、少し待つ。
「うわ……。本当に、暗い。ほとんど見えない……」
「これ以上は明るくできないからさ。悪いけど、慣れてね」
「うん……」
それじゃあ、いざれんちゃんの病室へ。
病室に入ると、れんちゃんはベッドの上でごろごろしていた。何の偶然か、れんちゃんの腕の中には白いキツネのぬいぐるみがある。秋本さんが作ったぬいぐるみだ。
「れんちゃん。来たよ」
そう声をかけると、れんちゃんがばっと顔を上げた。
「おねえちゃん!」
そうして、すぐに私以外の人にも気が付いた。
「菫さんと……。だれ?」
きょとんと、首を傾げるれんちゃん。きゅっとぬいぐるみを抱きしめてる。初対面だからね。ちょっと緊張するよね。
「秋本さん。そろそろ見えるようになってきた?」
「う、うん……。なんとか……」
「それじゃあ、どうぞ」
こくり、と秋本さんが頷いて、れんちゃんの前に向かった。
「あの……。あ……」
おや。言葉が止まった。えっと……。ああ、れんちゃんが持ってるキツネのぬいぐるみに気付いたみたい。ちょっと嬉しそうだ。
「んぅ?」
れんちゃんが首を傾げると、秋本さんは慌てて言った。
「あの、これ、私が作ったぬいぐるみで……! よかったらどうぞ!」
秋本さんが紙袋を渡すと、れんちゃんはぱっと顔を輝かせて受け取った。
「ありがとうございます!」
ぺこり、と頭を下げて。お礼を言えてとっても偉い。なでなでしたいね!
壁|w・)ぬいぬい!






