配信126回目:シカれんちゃん
夜。ゲームの時間。
「というわけで、ファトスです」
『何が、というわけ、なんですかね?』
『いつも言ってるけどお前の中で完結しててもこっちには分かんねえんだよ!』
『なんでもいいかられんちゃんを映せ!』
「まるで私がいらないやつみたいなこと言ってくれるね! そうだよ!」
『全力で認めるんじゃないよ』
『冗談だよ、そこまで思ってないよ』
『ここまでテンプレ。ここかられんちゃん』
どこまでれんちゃんを見たいんだこいつらは。いや気持ちは分かるけど。私よりもれんちゃんだよね!
れんちゃんはと言えば、ウルフたちと戯れてる。テイムしてるウルフたちじゃなくて、ここにいたウルフたちだ。
「なでなで……もふもふ……」
ホームに行けばいつでもウルフたちとは会えるけど、新しい子たちとの触れ合いもいいもの、なのかな?
こてんとウルフが転がって、れんちゃんがそのお腹に顔をうずめてる。なにあれ。猫吸いならぬ狼吸いかな?
『テイムしてないんだよなあれ?』
『れんちゃんに吸われたいだけの人生でした』
『れんちゃんを吸いたいだけの人生でした』
『変態だー!』
「そうだよ、れんちゃんを吸っていいのは私だけだ!」
『変態だー!』
『姉が一番の変態だってそれ前から言われてるから』
否定はしない。れんちゃんのためなら私は何だってするからね!
「今日もゲストはアリスです。…………。この紹介いる?」
「もういらないんじゃない?」
『すでにレギュラーメンバーだからな』
『いない方が珍しいのではw』
さすがにそこまででは……ないと、思う。多分。
シカと会う、と決まってすぐにアリスには連絡しておいた。そうしたら、是非とも渡したいものがあるということで来てくれた。その渡したいものは、シカがいるエリアに行ってから受け取ることになってる。
まあアリスが渡すものといえば、もうある程度は決まってるようなものだけどね。
「れんちゃん、シカさんに会いに行くよー」
「はーい」
ばいばい、とウルフたちに手を振って、れんちゃんがこっちに走ってきた。結構満足してるのか、にこにこ笑顔だ。かわいい。好き。
「ミレイちゃん。うへる前にシカのエリアに行こうか」
「はい」
そうだね。まずはシカのエリアだ。
アリスに案内されて、少し歩く。シカがいるエリアがあまり離れていないらしくて、すぐにたどり着くことができた。
「おお……」
こんなエリアがあったんだね。シカがいっぱいだ。たくさんのシカがのんびりと草を食んでる。当然のようにノンアクティブだから、襲われる心配もない。
「シカさん!」
そしてれんちゃんは早速とばかりにシカたちに突撃しようとしてる。うずうずしてこっちを見てる。よし、とか言ったら駆け出しちゃいそう。犬かな?
「その前に、はいどうぞ」
アリスから渡されたもの。当然のように着ぐるみでした。シカの着ぐるみだ。
「ほら、れんちゃん。着ようか」
「んぅ? はーい」
不思議そうに首を傾げながらも、れんちゃんはすぐに服を着てくれた。
シカの着ぐるみ。なんだか、奈良の動物の方のマスコットを連想するゆるさだ。頭にはちっちゃな角が装着されてる。ちっちゃいシカなれんちゃんだ。
『あああああかわいいよおおおくんかくんかしたいよおおお!』
『いかん! 錯乱兵だ! 衛生兵! 衛生兵!』
『まかせろ! すぐに手当だ!』
『ああああれんちゃああああん!』
『かんわああああいいいいい!』
『みゃああああ!』
『多すぎるわバカヤロウ!』
コメントさんたちは今日も絶好調だね。バカじゃないのかな。いや本当に。
「うえへへへ……」
「知ってた」
みんなバカになればいいと思います。
れんちゃんは早速シカたちに突撃しにいった。シカたちは逃げることもなく、れんちゃんをじっと見つめてる。見つめ合うれんちゃんとシカたち。なんだこれ。
「じゃーん!」
れんちゃんが取り出したのは、お煎餅。いつものエサを丸い煎餅の形にしたもの。モチーフはもちろん鹿せんべいだ。
れんちゃんがお煎餅を差し出すと、シカがぱくりとくわえて食べ始めた。もっしゃもっしゃ。
「わあ……」
シカがたくさん集まってきたから、れんちゃんもお煎餅をいろんな子に渡し始めてる。みんなお煎餅をくわえてもしゃもしゃしてる。なんだろうこの癒やし空間。
「わ……」
れんちゃんの前で、シカが首を振り始めた。上下にぶんぶんと。なんだあれ。
「へい。シカ博士。解説よろしく」
『シカ博士なんてさすがにいないだろうw』
『解説しよう! 一説では威嚇行動とされているぞ! つまり、早く煎餅よこせ、だ!』
『いるのかよw』
挨拶してるように見えるのに、威嚇なんだね、あれ。なんかそう思うとちょっと怖く……。
「はい」
あ、鹿せんべいを受け取って満足してる。かわいい。
まあ、うん。リアルでは威嚇行動でも、ここではそうでもないのかもしれない。ノンアクティブのモンス扱いらしいし、本当に挨拶なのかも。もしくは、威嚇ほどではない催促、とか。
「わわわ……」
れんちゃんの周りにシカが集まり始めてる。たくさんのシカがれんちゃんを取り囲んで、れんちゃんの体をふんふんとかいで……。
「むぎゅう」
そうして、れんちゃんはシカの山に呑み込まれました。
うん……。楽しそうだから良し、ということで。
壁|w・)しかの着ぐるみれんちゃんが書きたかった。






