配信七十一回目:小さいパンダさん
でもそんなことをしていたら、パンダが立ち去ろうとしてた。のっしのっしと帰ろうとしてる。
「あ、れんちゃん。パンダさん帰っちゃうよ」
「んー……。いいの」
「ええ……」
「いいの」
れんちゃんがいいなら、私から何か言うつもりはないけど……。本当にいいのかな?
パンダを見る。パンダが振り返って、こちらを見てた。そんなパンダと目が合う。いつの間にかパンダが立ち止まってるけど、もしかして何かを待ってる?
「れんちゃん」
「なあに?」
パンダを指差すと、れんちゃんが首を傾げながら振り返った。れんちゃんとパンダの目が合う。パンダは満足そうに頷くと、少し歩いて、また振り返って。
「これって、もしかしなくても着いてこいってことかな?」
『多分そうだろうけど、なんだこのイベント』
『一緒に行けばいいことあるのだ!』
『お? イベント経験者のテイマーさんかな?』
『あ、ルルです』
「ねえ、ルル、ちょっとコメントでのキャラがぶれすぎじゃない? もう少し統一してくれないとちょっと分かりにくいよ」
『怒られた……』
『今回ばかりはミレイに全面的に同意』
『毎回違うからなw』
本当にね。ダメとは言わないけど、ご新規さんかなと思っちゃう。隠したいのかと思ったこともあるけど、今みたいに自分で名乗るし……。いや、いいけど。
とりあえずれんちゃんと一緒にパンダについて行きます。さてさて、何がいるのかな。
森の中を歩くこと十分。すごく入り組んでたけど、どうにか離されずにパンダについて行くことができた。何度も待ってくれたおかげだけど。
「このパンダはいいパンダだね」
『むしろ悪いパンダってなんだよwww』
『真っ黒なパンダかな?』
『それただの熊だろ』
パンダに案内されたのは、ちょっと開けた場所だった。パンダのお家かな? そんな広場にいるのは、予想外のような、むしろ想定内というか。
「ちっちゃいパンダさん!」
パンダの側にいるのは小さなパンダ。子供だと思う。子供らしいまるっこいふわふわなパンダだ。小さいパンダは大きいパンダの周りを回ってたけど、大きいパンダに促されてこっちに歩いてきた。
「わあ……!」
れんちゃんが両手を差し出すと、小さいパンダがれんちゃんに抱きついた。で、そのまま押し倒された。さすがに支えきれないよね。子供といっても、れんちゃんより少し小さいぐらいだし。
「ふぎゅう」
つぶされちゃったれんちゃんは、それでも幸せそうだ。全身でもふもふを堪能してる。両手がわきわき動いてる。すごくふわふわ。
そう言えば、もう一匹いたような……。
「あ」
気付けば、もう一匹の小さいパンダは私の足にしがみついてた。構ってほしそうに上目遣いに私を見てくる。うるうるな目だ。なんだこれかわいい、すごくかわいい!
「お、おお……」
小さいパンダを抱き上げてみる。ちょっとだけ重たいけど、問題なく持てるね。そして、すごくふわふわだ。すごく人懐っこいパンダで、幸せです。
『パンダってこんなに人慣れしてるの?』
『野生だと普通に縄張り意識があるぞ』
『動物園のパンダだとこんな感じっぽいけど』
『掃除をしてる人にまとわりつくパンダの動画は最高でした』
「なにそれ私も見たい。あとで教えて」
『別にいいけど、すでにお前は堪能してるだろw』
『むしろそのパンダの方が羨ましいんだけど』
『ミレイその場所かわれ。パンダもふもふしたい』
絶対に嫌だ。この子は私の子だ!
なんて言いたくなるけど、まだテイムもしてないからね。さてさて。れんちゃんは……。
「おともだちになった!」
「ですよねー」
『いつの間にwww』
『カメラの端っこでエサ上げてたぞ』
『さすがれんちゃん、ぶれないな!』
小さいパンダとじゃれ合いながら、れんちゃんはエサを上げてるみたい。私もあげてみたくなるけど、れんちゃんがテイムした方がいいと思うし……。
どうしようかと考えていたら、大きいパンダがのっそりと歩き出した。そう言えばまだこっちはテイムしてなかったけど、これどうなるのかな。小さいパンダのテイムって敵意判定受けちゃったりする? 子供をテイムされたわけだし。
「そこのところどうなのルル?」
『問題ない』
「そう……?」
ルルがそう言うなら、そうなんだろう。このイベントやったことあるみたいだし。
小さいパンダをもふもふしながら見守っていると、れんちゃんの方へとパンダは歩いて行った。そしてじっとれんちゃんを見つめる。れんちゃんも気付いて、首を傾げて。
「あ、おねえちゃん。この子ともだちになった!」
「おお、良かったねれんちゃん! ……そういうイベント?」
後半はもちろん視聴者さんたちへの質問だ。
『そう。パンダは条件を満たすと、巣に連れて行ってくれる。そこで子パンダと仲良くなると、親パンダもテイムできる。条件は、検証中』
『今までみたいにエサを上げたらテイムじゃないんだな』
『てことは、条件が判明すれば俺もテイムできる……!?』
『未だに分かってないってことはかなり厳しそうだけど』
緩い条件だったら、検証大好きな人たちがすぐに調べ尽くしてるだろうからね。特定のスキルが必要だったり、何か別のモンスのテイムが必要だったり、そんな条件があるのかも。モンスならともかく、スキルだとかなり調べるのが大変だろうし。
れんちゃんは寝転がった大きいパンダのお腹に跳び乗ってもふもふし始めた。れんちゃんの隣では小さいパンダも抱きついてる。アニメ映画を思い出すね。
「君もいく? どうせなられんちゃんと友達になった方がいいと思うけど」
私の方の小さいパンダはちょっと迷う素振りを見せたものの、れんちゃんの方に行ってしまった。ちょっと寂しいけど、私がテイムしてもあまり呼び出さないだろうし。むしろれんちゃんと一緒にいる方が私とも会えるかもしれない。
れんちゃんはもう一匹の接近に顔を輝かせて、こっちにもエサを上げてた。問題なくテイムできたみたいで、一人と二匹で大きいパンダに抱きついてる。ふわふわ気持ち良さそう。
今日は多分このままのんびりすることになるかな。明日はパンダと遊べそうだし、そっちも楽しみだ。
「というわけで、明日はパンダと遊びます」
『どういうわけだw』
『いつものことだけど脈絡がないなw』
『でも楽しみにしてる』
さてさて。あとはパンダと戯れるれんちゃんを眺めておくとしましょう。のんびり。そしてじっくり。
「ふへ……」
『誰かこいつを……どうしようもないな』
『できるわけがないだろう定期』
『嫌な定期が生まれてて草』
「うるさいよ」
壁|w・)小さいパンダです。動画の子供のパンダがかわいかったからつい……。
まるっこくてころころしてて、とてもかわいいのです。
Q.なんでパンダ放置しかけたの?
A.お姉ちゃんが寂しそうだったから。
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ではでは!