配信六十三回目:はりねずみー!
れんちゃんをはなしてあげると、露骨に距離を取られてしまった。そんな警戒した目で見ないでほしい。ちょっとへこんじゃう。
「はい、おねえちゃん」
「ん?」
突然に表示されるトレード画面。そうしてれんちゃんが出してきたものは、ハリネズミ着ぐるみ。製作者はアリス。
「いや早すぎるでしょ!?」
『がんばった!』
『めっちゃドヤ顔してそうwww』
『ほらほらミレイ。早く着ろよ。れんちゃんが待ってるぞ』
「え」
れんちゃんを見ると、すごく目を輝かせてるのが分かった。なんかもう、わくわくしてる。じっと私を見てくる。これは、断れないやつだ。
「わ、わかったよ……」
大人しく装備の変更。一瞬だけ光に包まれて、お着替え完了。お、なかなかいい着心地だ。えっと……。うん。自分じゃ見れないからよく分からない。
と思ってたら、いつの間にかれんちゃんもお着替えしてた。ハリネズミだ。背中には、たらんと垂れ下がった棘がある。私にもあるみたいで、手を伸ばしたら柔らかい出っ張りがあった。
『理想は力を入れると棘が硬くなることだったんだけど、さすがに無理だったよ……』
「いや、十分すぎるよ。危ないしね」
れんちゃんも満足してるみたいだし。くるくる回って楽しそう。
私と目が合うと、こちらに駆け寄ってきた。
「おねえちゃん!」
「ん?」
「ごろーん!」
「え、あ、はい」
やるのか。いいんだけど。
その場に寝転がると、さっそくれんちゃんがお腹をわしゃわしゃしてきた。ちょっとくすぐったい。
「わしゃー!」
「うひっ……」
『ミレイの笑い声がw』
『耐えたいのは分かるけど余計に気持ち悪いことにwww』
「うるさいよ……!」
あれ、今回はすぐに終わっちゃった。気合いを入れただけに拍子抜けだ。
れんちゃんを見てみる。ハリネズミを持ち上げて……私のお腹の上に置いた。
「はりねずみー!」
『はりねずみー!』
『そのまんまかい、というつっこみはしないでおこう……』
『ミレイのお腹の上で走り回るハリネズミ』
『必死に耐えるお姉ちゃん』
いや、見た目ほどくすぐったいわけじゃないけど、その代わり断続的にちょこちょこお腹の上で走り回られてるから、変な感じ。でもれんちゃんが楽しそうなら私はそれだけで満足です。
でも結構すぐにハリネズミたちは回収された。れんちゃんは上を向いて何かを考えた後、私のお腹にのっかってきた。というより、顔をのせてきた、かな?
「もふもふ……」
「ええ……これでいいの……?」
私のお腹に頭をすりすり。お姉ちゃんとしてはとっても嬉しいですが、これはもふもふ枠に入るのかな。まあ、いいか。
れんちゃんを抱き寄せて、頭を撫でる。フードのせいでちょっと撫でにくいけど、まあいいでしょう。れんちゃんは満足してくれたみたいで、ふんにゃりと笑ってる。やはり私の妹は世界一かわいい。ふふん。
『なんだこの表現の難しい状態』
『てえt……いや違うな……』
『マジでなんだこれwww』
私にも分からないよ!
三十分ほどその体勢でした。幸せ気分、でもちょっと疲れた。
「おねえちゃんおねえちゃん!」
「ん?」
「まじょっこ!」
れんちゃんがまた着替えた。今度は、魔女っぽい服装。魔女っぽいというか、ルルと同じ服だね。もらったのかな?
「ルルさんのでし!」
「そっかー。……ルルあとで顔かせ」
『ひっ』
『こわいこわいこわいこわい』
『妹が関わると沸点低すぎだろいや分かってるけど!』
ルルの弟子、つまり魔法を使う。戦うってことじゃないかな。それはちょっと認められない。この先敵意判定を受けるようになるかもしれない。それはちょっと、だめだ。
というのを言ったら、少し納得してもらえた。
『なるほど、そういう心配か』
『たしかにがっつり戦うようになったら、今後そういう意識が出てくるかもしれないもんな』
『心配しないで。本当に弟子に取ったわけじゃないし、魔法スキルも教えたわけじゃないから』
「んー……。まあ、ならよし。でも……」
れんちゃんが杖を振ると、火の玉とかが出てる。楽しそうだけど、あれは魔法スキルじゃないのかな。しかも火も水も風も覚えてる。スキルポイントどれだけ使ったのやら。
れんちゃんが上に杖を振ると、大きめの火の玉が放たれて、花火になった。
「え」
『安心しろミレイ。れんちゃんのあれはスキルじゃなくて杖の効果だ』
『ミレイもあの杖ぐらい知ってるんじゃないのか?』
「いや、知ってる、けど……。ええ……」
スキルポイントを使ってないなら、まあ安心だけど……。いやでもあの杖は、いいのかな……?
れんちゃんが使ってる杖、あれは装備品というより道具扱いだ。高難易度ダンジョンにいるドラゴンを倒すと稀にドロップする道具で、効果は見ての通り。ただし強い魔法は使えない上に空に振ると花火が打ち上がることから、ちょっとしたお遊び道具らしい。
ただし、レアドロップだ。落とす確率は一パーセント。つまり百匹倒して一本手に入るかどうか。そのせいか、ただのお遊びの道具なのにかなり高額で取引されてるアイテムでもある。値段までははっきり覚えてないけども。
壁|w・)ルルの努力の証、でした。
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ではでは!