配信五十四回目:お馬さんと撮影会
「それで、何でしょう」
「ああ、うん。写真とか、いいかな。れんちゃんを。こう、ポーズとか」
馬好きさんのリアルは写真家か何かかな? さすがにそれはれんちゃんに聞かないと分からないけど、お馬さんのお礼だから大丈夫だと思う。
とりあえずれんちゃんを呼ぶとしよう。
「れんちゃん、ちょっといい?」
「はーい」
れんちゃんがお馬さんとこっちに来る。すっかり仲良しだ。見てるとこう、によによしちゃう。馬好きさんもによによしてるし、いいよね。によによ。
『だめだこいつら、早くなんとかしないと』
『つまりお前はにやけてないと……?』
『にやにやしてますが何か』
『同類じゃねえかw』
この配信にいる時点でお察しだよね。
「れんちゃん。馬好きさんがれんちゃんの写真を撮りたいんだって。ポーズとかもやってほしいみたい。その子のお礼にどうかな?」
れんちゃんはお目々をぱちくりさせて、にっこり笑って頷いてくれた。
というわけで。馬好きさん主催、撮影会です。ちなみに馬好きさんへのお礼となってるけど、画面越しに視聴者さんが保存するのも許可してる。いや、まあ、禁止したところで、撮影されても私には分からないしね。
「お馬さんの隣に立って、腕をこう……」
「こう?」
「そうそう。良い感じだよ」
三十分ほど、ずっとポーズを変えては撮り続けてる。そろそろれんちゃん飽きないかな、とか思っちゃうけど、れんちゃんも楽しそうだ。お馬さんと一緒というのがいいんだと思う。ポーズとりつつもふもふしてるしね。
私は、当然一緒になって撮ってます。当たり前じゃないか。
「お馬さんと戯れるれんちゃん……かわいい……。うえへへへ……」
『もはやいつものことすぎて言う必要はないだろうけど、この姉は本当にどうしようもねえな』
『むしろミレイのこの顔を見ると安心するようになった』
『お前大丈夫か……?』
『大丈夫だと思うのか?』
『お、おう』
失礼すぎないかな、こいつら。
「おねえちゃーん」
「んー? なにかなれんちゃん」
「お顔がきもちわるい!」
「ぐへぇ……」
『クリティカルw』
『さすがに見かねたらしいw』
『まあ、うん。いつものことだけど、気持ち悪い笑顔だったからね……w』
そ、そこまでなの……? 馬好きさんを見ると目を逸らされた。でも、そうか。そこまでか……。
しょんぼりしつつ、でも写真は撮る。こんな機会、そうそうないから。
そうしてさらに五分ほど撮り続けて、終了しました。
小さなお馬さんと一緒にこっちに来るれんちゃん。いつの間にか、お馬さんの頭の上にラッキーがいる。お引っ越しかな。どっちも気にしてないみたいだし、あの子たちも仲良くなったのかもしれない。
とりあえず、一枚。あとで投稿しておこう。
「ありがとう、れんちゃん。いい記念になったよ」
「いえ! たのしかったです!」
「あはは。そっか」
そう言って、優しげに笑ってれんちゃんを撫でようとして、見えない壁に阻まれてた。うん、まあ、よくよく考えなくてもフレンドでもない他人だからね。触れないのだ。
「おっと、失礼」
「んーん」
れんちゃんも気にしてないみたいで首を振ってる。いや、むしろれんちゃんは何が起こったか理解してない方だろうけど。
「あと、ミレイさん。お礼ついでに、もう一ついいかな」
「なに?」
「お金だけど。僕にはいらないから、是非そのまま乗馬用の馬も買ってほしいんだ」
おや。いや、私にとっては何の問題もないけれど……。でも、馬を買えと言われるとはさすがに思わなかったかな。
「どうして?」
「乗馬の布教ですが何か」
「あ、はい」
『すごく分かりやすい理由だったw』
『ぶれねえな馬好きw』
『でもそうだぞミレイ。使わなかったからって俺たちに返す必要ないからな?』
『馬に乗って颯爽と駆けるかっこいいれんちゃん、見たくない?』
「なにそれ見たい」
使わなかったし、みんなに返そうかなと思ってたんだけど……。貸してくれた人たちや、譲ってくれた馬好きさんがそう言うなら、いっか。買わせてもらおう。
というわけで、買ったのはれんちゃん用のポニーと、私用の一般的な馬。ちなみに馬好きさん曰く、ポニーの方は正確にはシェトランドポニー、私の馬が北海道和種、らしい。
「ちなみに北海道和種の方は道産子とも呼ばれているんだ。北海道出身の人のことを道産子って言うことがあるけど、ここかららしいよ。シェトランドポニーは……」
「そんなことよりもふもふがいいです」
「あ、うん……」
ああ、れんちゃんの素直な意見が馬好きさんを襲う! 仕方ないね、正直興味ないからね! 暇な時なられんちゃんも聞いてくれたかもだけど、ポニーのもふもふを邪魔されてるからね。
『これはひどいw』
『でも仕方ないぞ馬好き。正直ちょっと、なんだ……』
『好きなものを語る典型的な早口のオタクだった』
『やめろよ濁してやれよ、今回のMVPだぞ』
こいつらも大概ひどいと思う。
膝を突いた馬好きさんを放置して、れんちゃんはポニーを撫でてる。ポニーは小さいお馬さんと鼻を付き合わせていた。かわいい。
ポニーと小さいお馬さん、ついでに私の馬もたっぷりもふもふなでなでして、れんちゃんはご満悦だ。さてさて、もう少し時間があるけど、どうしようかな?
れんちゃんも満足したのか、馬たちを引き連れて戻ってきた。馬好きさんもその時には立ち直っていて、にこにこ笑顔でれんちゃんを見てる。
「馬はどうかな、れんちゃん」
「かわいい!」
「そうだろうそうだろう。しかも乗れるからね、最高のペットだと思うよ」
それを言い始めると羊さんは毛をもらえたりと、他にもいろいろあるんだけど……。まあ、れんちゃんも楽しそうだし、いいかな。別に。
最後にれんちゃんは馬好きさんの馬たちも撫でさせてもらうらしい。私たちが買った馬とは違う、筋肉質のかっこいい馬たちだ。れんちゃんも馬を撫でて感激してる。
「今日はこんなところ、かな。明日はれんちゃん次第だけど、馬に乗ってみたいところだね」
『乗馬はいいぞ』
『あの風を体で切る感覚はくせになる』
『馬持ってる人何人いるんだよw』
「まあともかく、また明日、ね」
乗馬、れんちゃんは楽しんでくれるかな。指導役というか、馬好きさんにも声をかけてみよう。
そんなことを考えながら、れんちゃんの小さいお馬さんを撫でた。おお、結構もふもふだねこの子。
壁|w・)れんちゃんのお馬さん写真集は一冊5000円です。冗談です。
なお、写真集の8割はれんちゃんの趣味によりお馬さんです。冗談です。
次回は、乗馬、するかも……?
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