配信四十九回目:取材中だよ!
「ちなみにれんちゃん。お母さんの理由は聞いてもいい?」
「んー……。だってお父さんはお母さんを悲しくさせちゃうから」
「え」
『え?』
『まって。ちょっとまって』
『え、なに? 虐待か何か?』
「よーし、ちょっと待とうか!」
多分これあれだ。れんちゃんの中での好感度はお母さんの方が高いというよりも、お父さんの始まりが低かった、みたいな感じだ。お父さんは嫌なもの、というのが最初にあったからこその結果だと思う。
でも当たり前だけど、この辺りの事情はさすがに説明できない。どろどろというか、重いし暗い。空気が悪くなる。
「違うんだよ。今の両親は仲がいいの。その、再婚しててね。前のお父さんで色々あったってことですよ。察しろバカ!」
『ありがとうございます!』
『おk。把握した』
『わりと真面目に謝る。ごめん』
『踏み込んでいい話じゃなかった』
「なんかいつもより優しくないかな!? ちょっと困る……!」
助かるけども……! とりあえず、よし、流そう。うん。
『ちなミレイの二番目は?』
「もちろん両親です」
『うわあ』
『優等生の答え。面白くない』
『所詮ミレイはミレイか』
『まあミレイだし』
「ひどい」
れんちゃんがお母さんだし、私はお父さんにするのもいいかなと思ったけど、私はこの後、両親と家で顔を合わせるからね? 気まずくなるので本当に勘弁してください。
「次は……ミレイさんへの質問です」
「あ、私? 何?」
「れんちゃんが好きな男の子ができたと言ったらどうしますか?」
「え? ……え?」
れんちゃんに好きな男の子? いやそんなまさかあり得ないあはは……。
いやいや。うん。うん。そうだよね。れんちゃんも病気が治って大きくなったら、好きな人とかできて、そのうち結婚とか……。
「まあ、うん……。応援、したい、なあ……」
『あくまで願望』
『でもこればっかりは、その時にならないと分からないだろうな』
『まあまだまだ先のことだ気にするな』
「分かってるよ」
よし忘れよう。とりあえずれんちゃんをぎゅー。れんちゃんはよく分かってないみたいで、不思議そうに首を傾げてる。かわいいなあ。
「んー……。わたしはおねえちゃんが好きだよ?」
「私もれんちゃんが大好きだよ!」
今だけでも、そう言ってもらえるとやっぱり嬉しい。なでくりしちゃう。
『てえてえ』
『に似た何か』
『さくさくいこうぜ、せめて俺の質問まで!』
『いやいや俺のを先にだな……』
「はい、さくさくいきましょう。れんちゃん、何か食べたいものはありますか?」
「え? んー……。おねえちゃんがよく持ってきてくれるから……」
れんちゃんは食べ物に制限はなくて、アレルギーも特にない。だかられんちゃんが食べたいって聞いたら、次の面会の時に持って行ってる。
だから別にないと思う、けど……。
「あ、でも」
れんちゃんが何かを思いついたように顔を上げて。
「おなべ、やりたい。おこたにはいって、おなべぐつぐつして、みんなで食べたい」
「あ……」
それは、食べたいもの、とはまた違うだろうけど。でも、それは、ここではできないことで。れんちゃんにとっては、憧れなのかもしれない。
もちろん、みんなでご飯を食べることはある。でもさすがにお鍋は、ない。さすがに危ないから。だから、お鍋ができるのは、れんちゃんの病気がちゃんと治ってから、だ。
『突然の重たい話はやめてくれ』
『そっかお鍋か……。あの暗い病室じゃ難しいよなあ』
『病気が治った時のお楽しみだね、れんちゃん。がんばれ』
「うん!」
にぱっと笑うれんちゃん。よしよしと撫でてあげる。今できることは、少しでもやってあげないと、ね。
「次をお願いします」
「ああ、はい。そうですね……。では、れんちゃん。動物たちとお話しできるようになったとすれば、何を話してみたいですか?」
「んー? んー……」
おお、れんちゃんが迷ってる。体をゆらゆら揺らして、ラッキーをもふもふしてる。れんちゃんはそのまま少し悩んでいたみたいだけど、少しして口を開いた。
「あのね。おともだちになってくださいって言いたい!」
「え?」
少しだけ、予想外だった。動物たちとは友達になったからこそ、こうして一緒にいるわけなんだけど。
「だって、直接聞いてないから。みんなとちゃんとお話しして、おともだちになりたい」
「ああ、なるほど、ね……」
テイムの友達になれました、はあくまでただのシステムメッセージだ。れんちゃんからすれば、動物たちに直接言ってもらいたいらしい。とりあえず撫でておこう。よしよし。
『さすがれんちゃん、良い子や』
『その気持ちは俺らも見習わないといけないよな』
『見習うだけだけどな』
『言うなw』
これはどっちかと言えば、れんちゃんが言ってもらいたい方だと思うけどね。
「それでは次に……。将来、どんなお仕事がしたいですか?」
ぴたりと、れんちゃんの動きが止まった。
「…………。おしごと、できるかな?」
「あ……え、と……」
まあ、そうなるかな……。まだどんな仕事があるのか分からないのもあるだろうけど、外に出ての仕事のイメージがそもそもないだろうから……。
『実際のところ、れんちゃんって何の仕事ができるんだろうな?』
『芸術関係なら病室の中でもできるだろうけど』
『お前ら何言ってんだ。れんちゃんの病気は治るんだ。そんなこと考えても仕方ないだろう』
『楽観的すぎね?』
『家族が諦めてないなら、俺らが口を出すことじゃないってことだよ』
ああ、うん。気を遣ってくれてるらしい。ありがたいことだ。反応するのはちょっと恥ずかしいので、気付かないふりをしてれんちゃんに言う。
「れんちゃん。何でもできるとしたら、何をしてみたいかな?」
壁|w・)質問の内容的にシリアスにならざるを得なかった……。
そしてもふもふ成分が足りないです。もふもふ欠乏症が出そうです。
でも取材回はもうちょっと続きます。できるだけ全部使いたい……。
ちなみに、似通った質問、答えが同じになる質問は省略します。ご了承ください。
わたし、しゅざいかいがおわったら、けさらんぱさらんかいを、かくんだ……。
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ではでは!