クラスメイトのお手製ぬいぐるみ
「大島さん!」
授業も終わったし早速れんちゃんに会いに行こう、と思ったら呼び止められてしまった。えっと、クラスメイトの秋本さんだ。会話はしても友達とはいえない、そんな関係の子。こうして呼び止められたのも初めてだ。
「どうしたの、秋本さん」
首を傾げて聞いてみる。あまり長引かない用事ならいいんだけど。
「あのね、配信いつも見てるよ」
「え? あ、そう? ありがとう」
「れんちゃん、かわいいね」
「でしょ! れんちゃんは世界一かわいいからね仕方ないね!」
「あ、うん……」
うん。なんで一歩下がったの? 菫も、その目はなにかな? またかこいつ、ていう心の声が聞こえてくるよ。
「それでね、大島さん。私、ぬいぐるみを作るのが好きでね」
「へえ。すごい。んー……。時間があればでいいから、作ってもらうこととか、できたりする?」
「うん。作ってきたの」
「え? 作ったの?」
「うん」
おお……。ちょっとびっくりした。まさか、お願いするまでもなく作ってくれてたなんて。でも、どうしてだろう? 確かにれんちゃんはかわいいけど。れんちゃんはかわいいけど。大事なことなので二回言ってもう一回言う。れんちゃんはかわいいけど!
「未来。顔が気持ち悪い」
「ひどい」
もう少しオブラートに包んでほしい。あ、いや、でもそれはそれで嫌かな。うん。
「というわけで、はい」
秋本さんに渡されたのは、抱える程度の大きさの紙袋。許可を取って中を見てみると、お座りしてる白いキツネのぬいぐるみだった。
いや、でも、これはすごい。売り物でも通用すると思う。
「とりあえずあの白いキツネを作ってみたんだけど……。ど、どうかな?」
「いくら払えばいいですか?」
「いきなりどうしたの!?」
だって、これ、すごい。れんちゃん大喜び間違いなしだ。これをタダでもらうのは気が引ける。
「お金なんていらないから! まあ、でも、感想は欲しい、かな?」
「分かった。ちゃんと聞いてくるね」
というわけで、れんちゃんへのお土産ができました。
病室を開けて中を覗く。いつも通り真っ暗だ。でも慣れたもので、れんちゃんがどこにいるかは何となく分かる。今日はベッドで寝転がってる。というより、寝てる、かな?
そろりそろり近づいて、隣に立ってみても反応はなし。やっぱり寝てるみたいだ。よくよく見ると、キツネを抱いてお昼寝してる。気に入ってくれてるみたいで、私としても嬉しい。
起こさないように、頭を撫でる。甘えるようにすり寄ってきた。かわいい。
うん。うん……。よし。堪能した。そろそろ起こそうかな。
起こさずに帰る、という選択肢は最初からない。一度それをやったことがある。とても気持ちよさそうに寝てるから、と。結果としては、ものすごく拗ねられてしまった。あれ以来、お昼寝しててもちゃんと起こすようにしてる。
でも、ただ起こすだけじゃ面白くないよね。
紙袋から白いキツネを取り出す。秋本さんが作ってくれたぬいぐるみだ。それをれんちゃんの目の前に置いて、頬をつつく。ぷにぷに、と。
うーん……。ぷにぷにの柔肌。羨ましい。ずっとぷにぷにしたくなる。
つんつんぷにぷにしていたら、れんちゃんが身じろぎした。目を開けて、そして白いキツネを見て、目が見開かれた。
れんちゃんの視線が、抱いてるキツネに向けられる。次に白いキツネに。何度か視線を往復させて、そして白いキツネを撫でた。
「かわいい……」
「おまかわ」
「おねえちゃんはちょっと気持ち悪い」
「なんで!?」
まだ何もやってないよ! まだ!
れんちゃんが体を起こして、小さく欠伸をして伸びをする。そんな動きの一つ一つがかわいい。さすが私の妹だ。私の妹は世界一ィ!
「おねえちゃん、思考がうるさい」
「どういうこと!?」
思考がうるさいなんて初めて言われたよ!?
「おねえちゃん、この子は?」
白いキツネを抱いてれんちゃんが言う。早速気に入ったらしい。気持ちは分かる。ふわふわでかわいいからね。
「クラスメイトの秋本さんが作ってくれたんだよ。配信見てくれてるんだって」
「そうなんだ……!」
おお、れんちゃんの目がきらきら輝いてる。よほど嬉しかったみたいだ。白いキツネを撫でたりつんつんしたりもふもふしたり。
「えへー」
幸せそうで私も幸せです。秋本さんには、喜んでたよって言えそうだね。分かってたことだけども。
れんちゃんはしばらく白いキツネをもふもふしてたけど、不意にいつものキツネも手に取った。二つ同時に抱きしめて、ふんわり笑う。ぬいぐるみに頬ずりしてるのが愛らしい。
少しだけ。少しだけ、嫉妬なんてしちゃったり。私もぬいぐるみ、作れるようになろうかな。いや、でも、その練習を始めるとゲームの時間が、つまりれんちゃんと遊ぶ時間が減っちゃうわけで。悩ましい。
少しだけ悩んでいると、れんちゃんが私を見てることに気が付いた。
「れんちゃん?」
「ん……」
れんちゃんがベッドに座って、ぽすぽすと隣を叩く。ここに座れ、てことかな。反対する必要もないから座ってみたら、れんちゃんが私の膝に座ってきた。
れんちゃんが私にもたれかかってくる。気を遣ってくれたのかな。頭を撫でてあげると、れんちゃんは嬉しそうだった。
それにしても、やっぱりちょっと軽い。間違い無く七歳の平均よりもずっと下だと思う。この部屋にずっといるから当然だとは思うけど。
「おねえちゃん」
「ん?」
「あきもとさんに、お手紙書いてもいい?」
「ああ、うん。すごく喜ぶと思うよ」
れんちゃんは嬉しそうに、がんばる、と笑った。
壁|w・)オブラートに包まれたくない理由は、よそよそしく感じちゃうから、ですよ。
白いキツネのぬいぐるみをもらいました。ぬいぐるみもふもふ。
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ではでは!






