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配信十八回目

壁|w・)よろしくお願いします。

 視界全てが緑の絨毯のような草原の中、私は配信の準備をしていた。まあ準備といっても、変な装備になってないか確認する程度だけど。

 私の装備は赤を基調とした軽鎧。腰には短めの片手剣。アクセサリーの指輪はステータス上昇の指輪。どれもがいわゆるガチャで手に入れられるアイテムだ。しかも最高レア。金に物を言わせた装備だ。


 あまりこういう装備は使いたくないところだけど、あの子を守る名目として黙認、どころか推奨されてる。もっといい装備を、と言われ続けた結果、これに落ち着いた。ちなみにこれが出るまでにかかったお金は……考えたくない。まあ、私のお金じゃないんだけど。


 私の目の前には握り拳程度の光球が浮かんでいて、これがカメラの役割を担ってくれる。光球の上には大きめの黒い板のようなものが取り付けられていて、ここに書き込まれたコメントが表示される仕組みだ。設定すれば音声としても配信者、つまり私の耳に届くようになる。

 さて、もうすぐ配信。予約してるから、十秒後に自然と開始されるはず。そろそろあの子を呼び戻さないと……。


「あれ? れんちゃん? れんちゃーん!」


 配信の相棒がいない! 相棒というか、あの子主役なのに!


「れんちゃあああん! どこおおお!」


『はじまた』

『初手からの行方不明、何回目だwww』

『いつものことすぎて驚きもしねえwww』


「わー! どもども皆さん! れんちゃんはただいま行方不明です、ちょっと探すね!」


『おk』

『いてら』

『がんばれ』


 視聴者さんに許可を取ってかられんちゃんを探す。どこに行ったんだろうあの子。ついさっきまで隣にいたはずなのに。

 でも予想はしておくべきだったかな。初めてのフィールド、初めてのモンスター、れんちゃんが落ち着いていられるわけがない。


「ああ、もう! 草うざい! 誰だこんなフィールド選んだ馬鹿は!」


『お前なんだよなあ』

『うざい言うても膝丈程度の……、うざいなw』

『見回したらいるんじゃねえの?』


「いないんだよね! 私の予想としては、新しいモンスターを見つけてめっちゃ観察してる気がする!」


『ありえるwww』

『れんちゃんだしなw』


 れんちゃんは、リアルの事情もあって、モンスターが大好きだ。特に柔らかい毛で覆われたもふもふなモンスターが大好きで、そういったモンスターを見つけるとすぐにそっちに走ってしまう。配信なんて完全無視。視聴者さんにとってはそれがいいらしいけど。


『進行方向右三十度。草が変に揺れてるぞ。あれじゃね?』


「おおっと。正確な情報ありがとう! どれどれ……」


 言われた方へと歩いてみれば、果たしてれんちゃんがそこにいた。

 薄い青色をアクセントにした和服の女の子。うずくまって何をしているのかと思ったら、何かを撫でてるみたいだ。


「れんちゃん?」

「あ、おねえちゃん」


 れんちゃんが顔を上げると、撫でていた何かを私に見せてきた。


「お友達になったよ!」


 白いふわふわもこもこのウサギ。頭についている角がなければ、本当にただのウサギだ。鼻をぴすぴす動かしているのがとても愛らしい。名前の表示を見てみると、テイムした証の緑色の文字色で、『BOSS:巨角ウサギ』とあった。


「視聴者の皆さん。私のかわいい妹が新しいモンスターをテイムしました。かわいらしいもふもふウサギです」


『おお!』

『早速か! 見せて見せて! もふもふ!』

『いや、まて、おい。そこで出てくるウサギのモンスターって……』


「察しのいい視聴者さんは嫌いじゃないよ」


 ふっと笑みがこぼれる。本当に、この子は、相変わらずだ。


「またボスだよおおぉぉ!」


『草』

『草ww』

『草に草を生やすな』


 きょとん、と首を傾げるれんちゃんとウサギ。仕草がリンクしていてとてもかわいい。かわいいけど、なんか、うん。まじかよ。


「へい、詳しい視聴者さん、情報よろ!」


『あいよ。悠久の草原のフィールドボス。小さくて弱そうに見えるけど、そのフィールドのせいで姿が全然見えない。気付かぬうちに殺されることも多い鬼畜外道の強ボスだ。ちなみにHPや防御力が低い代わりに攻撃力に極振りしたかのようなふざけた攻撃力。防御極振りプレイヤーでも突進三回で死ねる。普通は即死』


「クソゲーか!」


 あまりにも無理ゲーすぎる。HPと防御が低いということは、まさに殺られる前に殺れ、という仕様なんだと思うけど……。なんとも尖ったボスだ。


「れんちゃん。私も抱いていいかな……?」

「うん!」


 れんちゃんがウサギを差し出してくれる。そっと抱き上げると、ああ、すごい、ふわふわもこもこだ。ウサギも安心したようになんだか丸くなってる。


「これが、殺人毛玉……。もふもふだあ……」


『文字通りの意味だと誰が思うだろうか』


 もふもふを堪能してたら、れんちゃんがじっとこちらを見つめてきた。ああ、うん。分かってる分かってる。ウサギをれんちゃんに返すと、れんちゃんはまた嬉しそうに撫で始めた。


「私の妹は世界一かわいい」


『シスコンめ。だが同意である』

『残念だったな! 俺の妹の方がかわいいぜ!』

『この配信にはシスコンしかいないのか?』

『だが(俺の妹は)男だ』

『どういうことなの』


 その先は地獄だろうから聞いちゃいけないやつです。

 ウサギを堪能しているれんちゃんをのんびりと撮影する。うんうん。絵になる。もうかわいすぎてかわいすぎて。


「鼻血出そう」


『お前はいきなり何を言ってるんだ』

『へ、へんたいだー!』

『何を今更』


 待ってほしい。だって、こう、八歳の妹がウサギを抱いてもふもふしてにこにこしてるんだよ? 最強でしょこれ。とりあえず我慢できないのでれんちゃんの後ろに座って、膝に載せました。役得役得。


「おねえちゃん?」

「なんでもないよー」

「そう?」


 きょとん、と首を傾げるれんちゃんかわいい。そうしながらもウサギを撫でることをやめないれんちゃん本当にかわいい。


『だめだこいつ、はやくなんとかしないと』

『手遅れなんだよなあ』


 失礼な人たちだね本当に。

 のんびりとした時間を過ごしていると、ひょこひょこ他のモンスターも姿を見せてきた。小さい熊とか、狼とか、変な鳥とか。


「わあ!」


 瞳を輝かせるれんちゃんの周りにモンスターたちが集まってくる。れんちゃんはウサギを抱きながら、その子たちも撫で始める。幸せそうな妹を見ているだけで、私もほんわか嬉しくなる。


『ところで病状はどんなん?』


 不意に、そんなコメントが流れてきた。


「ん……。進展なし。悪化もないのはいいことだけど、どうにもならない手詰まり感がね」


『そっか。じゃ、これ足しにしてくれ』


 そのコメントの後に、お金のマークと数字が表示される。これは配信者の私に振り込まれるお金だ。いわゆる投げ銭とか、そんなやつ。それを皮切りに、たくさん振り込まれてくる。本当に、有り難い。大事に使わせてもらおう。


「いつもありがとうございます。何か進展あれば伝えますね」


『ええんやで』

『大変だろうけど頑張れ』

『一日でも早く、少しでも良くなりますように』


「ははは……。ありがとうございます。本当に」


 本当に、みんな優しいなあ……。

 そうして、ある意味でお金が振り込まれている張本人のれんちゃんを見やれば、いつの間にかたくさんのモンスターに囲まれて遊んでいた。うん。これはもう、反応は期待できないかな。


「ではでは皆様。れんちゃんはもふもふモードに入りました。のんびりれんちゃんともふもふを映していくので、勝手に癒やされやがってください」


『お口わるわる』

『癒やし助かる』

『かわええんじゃあ』


 その後はのんびりと、視聴者さんたちとれんちゃんを見守ることになった。


壁|w・)こんなお話、なサンプルみたいなもの、でした。

次回は配信前からのお話です。

一応ある程度書き終わっているので、またーり更新していきます。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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― 新着の感想 ―
[一言] このような癒されるジャンルは初めて挑戦してみました。読んで大当たりでした。めっちゃ楽しいです。もふもふは正義。そしてもふもふしている姉妹もかわいいです。天使だらけでここが天国ですか? 一通り…
[一言] ヴォーパルバニーが ただの角付きアンゴララビットになっとる~⁉
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