フーちゃんと一郎
一郎とは十代で知り合って
彼は免許を取ったら
凄い走行距離の中古車を買って
私を乗せていろんなところ
ドライブしたの
考えられないんだけど
車の床に隙間があって
走ってると地面が見えた
凄い車で スピード出すと
そのまま分解しちゃうんじゃないかと
心配になるくらい
それから彼は 自分で仕事を始めて
どんどんいい車に買い変えていったの
ある時 車に乗ってて
私以外にも女の子を
乗せてるのがわかった
こんな時は怒っていいのかな
悲しかったけど…
やめてっていった方が良かったのかな
言ってもしょうがない気がしたの
悲しかったけど…
それで
それで…わたしも 違う男の子と
会ったりもしたけど
ちっとも楽しくない
一郎と会ってるのが一番楽しかったんだ
一郎はわたし以外の娘と会って
楽しかったのかな
寂しい……
結局 わたしが一郎の事
好きなうちはだめなんだな
と思った
あなたが好き あなたが好き
と思ってるより
他にないんだなと
思ったの
一郎の気持ちがどうだとか
一郎がわたしの気持ちを
どう思ってるとか
そんなこと考えずに
だって 自分以外の人の気持ちは
わからないからね
わたしが一郎を好きだと言う事だけ
自分で分かっていれば
それでいいと思ったの
今夜一郎と会うんだ
泣いちゃいけないと思うんだけど
なぜか一郎を見ると涙が出るの
涙で気をひいちゃいけないと
思うけど泣きたくなるの
(どうしたの? 笑って…)
ごめんね 心配させるつもりは
ないんだけど
涙なんて見せちゃいけないと
思うんだけど
わたし…
(他の女の子の涙は見たことがない)
わたし…
(フーちゃんだけだ)
わたし…ごめん…泣き真似じゃないの
一郎のコートは
すっぽりと私を包んだ
(フーちゃん)
私はコートで顔が隠れたので
しっかり泣いた
君の涙で俺の胸は濡れた
たっぷり泣いたら
多分、プリンパフェを食べながら
君は初めて会った時みたいに
可愛い笑顔を見せるだろう
君はすぐ泣きやむ
僕は知ってるんだ