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今日から学校と仕事、始まります。②莞

帰宅時間帯のファン

作者: 孤独
掲載日:2018/12/01

「おーい。出番だぞ」


試合は140試合以上。

その1つ1つに主役はいるものだ。


「しゃあっっ!」


全てに出続ける事もない。ましてやそいつは投手。

抑える時もありゃあ、打たれる時もある。


ブルペンから飛び出し、”試合を左右させる”場面に登板するのは、この男。


「ピッチャー、井藤。ピッチャー、井藤」


先発投手の投手戦、激しい乱打戦。

試合を決定させるのは、その時にマウンドに立つ男の出来。


「さぁっ。7回!マウンドには井藤誠いとうまことが上がります!やはり、この男が来ました!」

「3連投目とはいえ、彼は安定してますからね。ここを抑えて、勝ち越しに繋げたいでしょう」


井藤の役目はセットアッパー及び、火消し、回跨ぎ。もっと雑に言えば、便利屋である。

オーバースローから投じる球速は140中盤であるが、球種はキレのあるカットボールとその変化と逆に動く短い高速シュート、さらに100キロ以下のスローカーブ。

制球はボチボチであるが、回跨ぎも難なくこなす頑丈さと連投も乗り切れる回復力、体力を持つ。

技巧派タイプとしては、打たせて捕るタイプの投手である。


投手としての能力は、極めて中継ぎ向き。

走者を背負う場面よりイニングの頭から登板する投手。


といったところ。

井藤誠という投手は極めて凡庸で、投手としての派手さはそうでもない。それでも、一定というか。固定層のファンはいるものである。



◇        ◇



「おおぉっ!井藤が登板か」


最近、彼を知った仕事帰りの会社員の男性。

高校まで野球をしており、野球中継が今の楽しみになっている。自分より若い選手で、期待の若手という意味で応援しているわけだが、理由は他にもある。

歳は自分の方が上であるが、”プロ”って呼ばれたのは同じくらいの事だ。


『仕事を持つって事は、プロじゃなきゃな』


必死さである必要ではないし、それは色々な価値観があるから。

誰かがなんとかしてくれる事もある。


通勤と同じ電車でも、帰りは少しウキウキする。娯楽のある夜だ。

スマホの小さい画面の試合中継、この緊迫した場面を観れる。背伸びすらできないだろうが、誰かが誰かを応援するファンでいるつもりだ。

3連投目の井藤。若さ故か、自慢のカットボールはキレキレ。打者を上手に打たせて、簡単に2アウトをとる。奪三振が少ないし、決して守備の良いチームでもないから。適度に打たれているところもあるが、なんだかんだで抑えている。


地味な投球でも結果を残す事の大切さ。



「あと1つ、あと1つ」


彼は守護神ではないのに、そんな小さな声で応援してしまう。


新卒の頃、仕事のミスで凹んでいた。

できる奴はできて、できない奴はできない。

そんな幻が事実だって、思いこむ。

その時。元気をもらうとかなく、いつも見てるプロ野球で忘れる気持ちでいた。重なるように、1軍に昇格した井藤。前回、2軍落ちした時と同じように打たれてしまった彼。


変わりようがなかった事もある。

それが続けばそこまで。力の限界を振り切っても、ダメな事はある。気持ちがプツリと途絶えるほどに効く。そこに悔しいって感情がないと、次を跳ね返す力はまったく出てこない。


打者が井藤のカットボールを打ち損ねての内野ゴロ。



「おっし」


短くガッツポーズ。これで3試合連続無失点の好投。

あの時の事はよーく覚えている。


まだミスで凹んでいた俺。ミスに対して気を張りつめ過ぎて、ギクシャクしていた。違うところでミスがある。負の連鎖だ。

けど、翌日の井藤は違っていた。気負い過ぎず、振り返らないわけでもなく。自分のやれることを詰め込んで今日の試合に望んでいた。

敗戦処理という場面ではあるが、自分を見せる場面。左打者に強気の内角攻め。カットボールを活かした投球で打たせる投球。2イニングを投げて無失点の好投。

3日後のビハインド時の投球でも、1イニング無失点。若手選手の良い気迫とは違って、落ち着いた投球がまだ凹んでいた自分を覚ましてくれた。


中継ぎは先発と違って決められた日というものがなく、いつでも準備をしなければならない。打たれた次の日に登板だって、普通にある。

そんな時でも結果を残すこと。

そりゃあ、結果を残さなきゃ。自信の回復には繋がらない。当たり前の事だが、切り替えるのに苦労してちゃいけない。辛いけど。どんなもんでも、そーならなくちゃって。世の中であり、人の中だ。

突然と現れるスター選手から学べる。……あくまで俺の中でのスター選手。

こうして、ファンができるなら。自分も積み重ねて、力と期待をされていかなきゃ。


「!やった!井藤に勝ち投手の権利!」


中継ぎ投手に勝利投手の結果は、凄い意味はない。

けど、報われる結果で少し自分にも報われたって気持ちになれる、一体感。貢献できた気がする。



ガーーーーーッ



電車から降りたら、歩きスマホは危険だ。

したいけど。

祝う褒美で誤魔化す。


「帰ったら発泡酒飲んで、寝るか」


自分がファンをやってるから、井藤には頑張って欲しい。

そー思う人が沢山いて、気が済むまで頑張って欲しい。

できれば、その時。少し夢を見せて欲しいな。惜しんで終わるくらいの選手でさ。






ホントに今更ですが。

広島カープの福井選手が楽天にトレードなんですね。

自分が広島カープを応援してる理由に、彼がいるからだったんですが。

完投勝利した日、たまたま中継を観てたのがきっかけで応援し始めました。

序盤で点取られた時は終わったーって思ってたら、なんだかんだで抑えて勝ったんですよね。


抑える時は抑えるタイプで、イニングも喰えるんですよね。やられる時は派手にやられるんですが。そーいう極端なところも良いですよね。


2015年の福井選手は良かったんで、また来るかなって思いましたが、そう現実は上手くいきませんね。厳しい世界です。とはいえ、自由契約もあり得る年齢ですし、今シーズンは特に厳しかったですね。


トレードで結果が出れば良いですが。

あと見れて2年くらいなのかな。もう1度、って言葉はもうキツイ頃かもしれませんが。





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