97、壁越しの告白
アレンside
コロンさんがアサヒちゃんという子を難なく助けた後…
不穏な空気になった。
「よかった…。」
「コロンお姉さん…やっぱり大きい。」
ん?大きい…とは?
「アサヒちゃん?」
「そして美人………なんでわたし…」
ん??
「こんなにちっさいの?!ほら、ネロお姉さんとかあるし!少し小さいけど。でもね、カレンお姉さんもそこそこあるんだよ!」
な、なぬ?!
こ、これは新情報だぞ!!男性諸君!!
コウはポカンとしてるけど、ラッセルは顔は真っ赤。
うん分かったんだな。
レオンはポケーっとしている。
多分、きっと…理解している。
「アサヒちゃん。一旦落ち着きましょうか?」
そう言ったコロンさんの声はかなり低い声だった。
これは…やばい?
「とりあえず落ち着きましたから、入りませんか?」
な、何とか不穏な空気は去ったのか?
とりあえず、ゆっくり入るみたいだな。
数分も経たずに、
チャプン……と音がした。
つ、浸かったー!!!!!
ってなんで俺こんなに、ドキドキしてんだ?!
「さてと、アサヒちゃん。何故、あのような事を言ったのか説明してくれますか?」
「あ…あのね…────────…」
あのねの後が聞き取れねぇ!!なんて?!なんて言ったの!
「そうだったんですね、それで?」
ちょっと待って肯定して、即促し?
「それでね…聖夜がね……いつも…大きい人ばっかり見てるの…だからね、私聞いてみたの。ああいう人が好みなのって。」
ん??んん?聖夜って…ジーッと聖夜を見た。
君、大きい人が好みなのって?目線を。
顔を赤らめてブンブンと首を左右に降った。
これは図星だな!
照れるな照れるな!健康男子だぜ!なんちゃって!
うん、さっきから俺のテンションはおかしな方へといってる。
誰か止めて。いや止められたら…話が聞こえなくなる!
「そしたら、うんって。」
「それって……歳上の大きい人が好きってこと?」
この声はカレン!!わぁお…。
ラッセル…ラッセルの好きな人はド直球だったのか。
ふーん。
聖夜…すごい顔が赤いな。大丈夫かな…。
「多分…そういうこと…だと思うの。だから!どうしたら大きくなるのかなって…」
「乙女としては…深刻な悩みですよね。でもね───」
俺の思考中に会話が止まるはずもなく、
コロンさんが続けて────
「大きい人が好きという男性より違う人を選ぶべきです。貴女自身を尊重してくれる人…大切にしてくれる人…そういう人を選ぶべきです。」
こう言ったコロンさんの言葉を聞いた誰かが息を呑んだ。
「……!!聖夜は大きい人が好きって確かに言ったけど!!私の事すごい助けてくれるもん!!転げそうになった時も、助けてくれた!私が泣いてたら、なぐさめてくれた!私が親に反発したときにちゃんと私の意見を聞いて理解してくれた…!!頭ごなしに否定するんじゃなくて!!聖夜は私をずっとずっと大事にしてくれてる!!そんな人だから好きになったの!」
お、おっとー?!こ、これはっ!!!
待って告白じゃん!!え?!聞こえてますけど?!
思わず聖夜を見た。
驚いた顔をしているが顔だけでなく全身赤くなっている。
あ…これは最大に赤面しているな!
両思い!?めでたいじゃんかー!!!
俺はウキウキしているにも関わらず、向こうはヒートアップ。
「なんで笑ってるの!?私真剣に言ったんだよ!」
コロンさんは何故か笑ったらしい。なんで?
たまたまレオンを見てたらフッ…とにこやかに笑ってた。
あ、これはコロンさんの思考を理解している顔だ。
そう瞬時に悟った。
「えぇ。ちゃんと分かっているじゃないですか。」
「へ?」
アサヒちゃんは、間抜けな声をあげた。
無理もない。俺もわからないから。
「アサヒちゃん。貴女は彼から答えを聞いた事がなくても…自分が大事にされている事を知っていて、そして彼が貴女自身を認めてくれていることを知っている。それでいいではありませんか。確かに彼の好みは歳上で大きな人かもしれませんが…貴女がその理想に近づいたところで両思いになると思いますか?確かに容姿や体格で一目惚れなんてあるかもしれません。でもね、どんなに容姿が綺麗で体格が綺麗でも…心が腐っていたら永遠の愛も冷めてしまうものですよ。男女関係なく…ね。」
「つまり…私は今のままでいいってこと…?」
「そういう事です。無理にこうなりたいと思わなくていいと思います。今の貴女と彼の関係性を聞いたから言える事ではありますが…。勝負するなら心で勝負しなさい。他者を羨むなとは言いませんが…人として美しくありなさい。そうすれば、人は心を開いてくれます。人は心で動かされるものですから。」
心か……。確かに…俺はここの世界の人の心に触れて
恐怖というか諦めというか…色々なものを捨てていたけど
少しは信じたいと思えるようになった。
これもそういうこと何だろうか。
レオンは楽しそうにクックッ…と笑いを堪えている。
「そっか…私…本当は…聖夜がその大きな人のこと好みって聞いてから…凄くその人達が妬ましく思えちゃって……今もまさに…コロンお姉さんに当たっちゃったし……。」
「まぁ好きな人のことを考えるのはいいことですけど、自分自身を好いてくれないと悲しい結末しかありませんよ?」
そうだよな…自分自身を好きになってくれる人は
俺にはいないけど。
確かに俺もそう思う。外見だけ見られても中身が
酷かったら俺だって嫌だ。
2次元に例えるなら美少女だけど、イジメの主犯格とかの設定はないけど。そういうキャラは人として愛せないよな。
俺の場合、胸糞悪くていっそのこと殺してしまいたいけど。
まぁソイツの、為に刑務所には入りたくないよな。
ってそれは前の世界だけだな。
「そうだよね…私自身のこと好きなってもらわなきゃ…。ありがとう!コロンお姉さん!私、大きい人になりたいと思うのは辞める!私…いつも助けて貰ってばっかりだから聖夜に似合う女性になるために頑張る!この気持ちが…もし実らなかったとしても……私が初めて抱いたこの感情も悪くなかったって思えるように精一杯、女性磨きとか頑張るね!」
俺は聖夜に言った。
”いい人見つけたな。彼女泣かせんなよ?”
クチパクだったけど、理解出来たらしい。優秀ですね。
”勿論に決まってる!僕の大切な人だから…!”
「ふふ…その意気ですよ。」
「コロンさん…凄いわ…。あっという間に解決したわね…。」
「そんな事ないですよ?」
「そうだよ!私の悩みスパッと解決してくれたんだもん!」
「私も…相談したいくらいです。」
ん?ネロの相談?これは是非とも聞きたい…!!
「別にいいですよ?聞きますよ?」
「あの私…──という感情が分からないんです…。私にとってある人は、かけがえのない人だと思っていました。でも、何か違うと思ったんです。」
「違うとは?」
「えっと…今までは、本当に大切でなくしたら心に穴が空くほど辛い思いをすると感じていたんです。でも、今は──。なくしたら穴が空くだけじゃなくて…多分…きっと…私も壊れる気がするんです。」
今はの次は何?聞こえなかった…。
「そうなんですね。ネロさん、貴女…彼に恋してますね。」
「へっ?」
「前はただ単に友人ってだけではないでしょうけど、それ以上でもそれ以下でもない感情を相手に抱いていたんでしょう。でも、今は違う。貴女が未来を想像して彼を失ったら?と考えた時……心が壊れると思うのなら。それは立派に彼に恋しています。ネロさんにとって彼は貴女の1部となっているから。だから、その1部が欠けてしまえば──今の貴女ではいられなくなる。それほど、ネロさんにとってその人はかけがえのない人…なんだと思いますよ。」
「……………………そうだったんだ…。コロンさん、ありがとうございます。この胸のモヤモヤ?が消えそうです。」
「それは良かったです。」
空気が和やかになったと感じた。
ネロのかけがえのない人って一体誰なんだろ…。
「ところで聞きたいんだけど…コロンさんはどうなの?」
今度はカレンがコロンさんに問いかけた。
「私…ですか?」
「ほら!レオンさんとか。」
「あぁ…レオンね。そうですね…レオンは私にとって…とっても大切な人ですよ。」
「ってことは…コロンお姉さんはレオンさん?って人が好きなの!?」
「好きという言葉では、表現出来ない…ですね…。」
「それほど大切な人ってこと?」
「はい。初めて私を理解してくれた人だから。」
「へぇ…」
今度はレオンの話題じゃないか〜ニヤニヤした顔で
レオンを見た。
上を向き空を眺め…遠い目をしていた。
空ではないどこかを見ている…というか
思い出してるのかな…そんな気がする。
「おーいレオン。戻ってこーい!」
「ん…?なんだ?」
「何か考え事っていうか…思い出してた?」
「まぁ…ね。懐かしいなぁって…。」
「出会い?」
「そうそう。俺も一人旅しててさ。」
「へぇ…」
「なんなんそれ!一人旅ってめちゃくちゃええやん!カッコええな!!聞かせてーや!」
「僕も聞きたい!」
「ボクも…聞きたいんだけど…。」
「えぇ〜……そんなに聞きたい?」
「「「「聞きたい…!!」」」」
みんなの声は揃った。
「仕方ないなぁ…。俺はね、行く宛てもなく目標も何も無く…旅に出たんだ。それである街で出会ったのがコロン。コロンは街で他の可愛い女の子達と楽ぬしそうに歌ってた。その中でコロンは誰よりもずば抜けて輝いて見えた。だけど、歌ってる最中に彼女から闇を感じたんだ。」
「闇?」
ラッセルが疑問をぶつけた。
「うーんと…闇っていうか…顔が陰ってた。あんなに楽しそうに輝いて歌っている女性がなんであんな表情をするんだ?ってすっごい気になったわけさ。俺が珍しく!俺ね昔から人に興味なんてなかったんだ。でも、コロンだけは違った。気になった。」
「えっと、ごめん…興味がないって…」
俺は待ったをかけた。
「そのままの意味。必要以上に関わる気がない…人にね。無関心ってことだな。例えば、目の前に誰かいたとしてその人が泣いていたら何で泣いてるか気にならない?」
「なる。」
「なる!」
「なるで?どうしたんや?って聞いてまう。」
「俺も気になるけど…声かけれない…」
コウに聖夜、ラッセル…最後のチキン発言は勿論…俺である。
「そう。皆、気になるよな?でも俺は違った。その子が泣いていようが俺は気にもとめない。悪い意味で無関心だった。何事にもね。だけどコロンに会って、俺は初めて人に興味を持てたんだ。それから俺は行動に移したよ。コロンに声を掛けて直球に聞いた。『なぜ君はあんなに楽しそうに歌うのに時々、苦しそうな表情をして歌うんだ?何が君をそんな顔にさせるのって。』そう聞いたらさ。驚かれた。彼女は数分固まってたよ。」
「確信をつかれたからじゃない?」
俺は言った。
「ご名答。そう彼女の武器は仮面だったから。『なんで貴方は私を見破れたの?』ってポツリと呟いたよ。でも俺にもわかんなかったから、うーん何でだろうね?って言ったら…笑われた。何でだー!って思ったのはここだけの話ね。でもその時に笑ったコロンはさらに興味を引く表情をしたもんだから。俺もなんか嬉しくなってね。というか、何だかんだでそこからすげぇ話すようになったの。俺も冒険者だったから収入を得つつ…その街に留まってコロンと仲を深めた。仲良くなるのに、そう時間はかからなかった。コロンがある事を俺に話してくれたんだよね。その時に知った。コロンは傷を負ってた。それを抱えて怯えてずっと生きてたんだ。」
「ちょっと待ってくれへん?傷って外傷かいな?」
「違うよ。目に見えない傷。「それは心だよラッセル。」」
俺は、レオンの言葉の続きを足した。
「そうそう。アレンは話が早いなぁ。」
「目に見えない傷って、治らないから。」
さらに付け足した。
「そういう事。」
レオンは俺に同意した。
「そうだね…治りはしない。」
コウも同意した。
重苦しい空気を破ったのはレオンだ。
「いやぁ、まぁそうなんだけどさ?そうやって怯えて生き続けるなんて苦しいだけから、俺はコロンを街から連れ去ったんだよね〜。」
「「「「ぇぇえええええええ!?」」」」
「ってのは冗談で、この世界の人全員が全員悪い人だけじゃないってのを俺はコロンに出会う前に身をもって知ったから…彼女にどうしても前を向いて笑顔でいて欲しくて何とか説得して、冒険者&吟遊詩人をしながら2人で知っていこうってなったわけさ。で、今に至る。俺がこう思ってるなんて本人に言ったことないから言わないでよ?でさ、コロン歌も出来るけど、戦闘もできるから。というか覚えが早いんだよね。羨ましいくらいに。それから、あっという間に吟遊詩人で俺達有名になるし。冒険者で稼ぐより吟遊詩人の方が稼ぎが良かったってのもココだけの話〜。はい!俺の身の上話は終わり〜。」
「なんか二人共苦労してんねんな。」
「それなりにね。それはラッセルもなんじゃないの?」
「お、オレは…アレンが助けてくれたから…大丈夫やで!確かに…失った人はおるけどな……。まぁこんな暗いと良くないし!せっかくこんなに綺麗な桜?やったっけ?見れる風呂に入れてるんやから楽しまんとな!」
「そ、そうだよ!!せっかく入れてるんだから!景色楽しもう!」
聖夜が一生懸命フォローする。
「そうだね。こんな枝垂れ桜、俺…今まで見たことないし!」
あっ…
「へ?しだれ?」
「な!なんでもない!!それよりさ、そろそろ体洗わない?洗ってからもう一度浸かりなおそーよ。」
それもいいなとレオンが同意してくれ体を洗うことになった。その後、もう一度枝垂れ桜がある風呂に浸かってから温泉を出た。
出た頃には、疲れは吹き飛んでいた。




