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第15話 ~スキル購入と生産依頼

感想ありがとうございます。


投稿し忘れていました!



ーティルー


何だかんだで在庫の物を売り切った俺は、ギルドへ戻って報告をしていた。相手は勿論エイミーさん、専属だしね。他の娘達は目を逸らすし、あからさまに逃げるしで会話が出来んのだ。そう考えると、エイミーさんはマジで天使! 最初はアレだったけど、今では気持ちよく会話が出来る。


「最初は完全に浮いてしまってさ、…全く売れなかった。暫くしてから色々あってな、…全て売り切ったよ。」


「昼前に売り切るなんて、流石はあの方々のお弟子さんですねぇ~。…たとえ色々あっても、全て売り切れば勝ちですからね! 喜ばしいことですが一つだけ、…〔投擲薬〕はどんな感じでした?」


…やっぱりそこが気になるか、まぁギルドから大々的に広める予定の新アイテムだからな。気になるのは当たり前ってヤツだ、エイミーさんも前のめりになるってもんよ。


「…ああ〔投擲薬〕ね、最初から最後まで見向きもしなかった。…が実演してみれば一転、奪い合いという名の争奪戦が起きたよ。…あれは売れるぞ、エイミーさん!」


それを聞いて安心するエイミーさんだが、何かに思い至ったようで不安そうに…、


「それもまた喜ばしいことなんですが、…大々的に広める前に真似とかされないですかね?」


その疑問は当然のことだな、うん。


…もし俺の〔投擲薬〕が真似されてしまったら、俺はまぁいいとしてギルドの方が馬鹿を見る。大々的に広める予定の新アイテム、その価値が下がってしまうからな。ギルドに関係する各所に話を通していると思うし、…色々と不利益なことがあるだろう。だが、…俺は言い切れる。


「その点については心配ない、真似ることなど出来ないだろう。俺の作った物であれだけ騒いだんだ、真似て作ろうにも技術がない。俺以外の者は、スキルを複数持つことの利点を知らなかったんだから。」


…そう、俺以外のPC生産者には作れる程の技術がない、必要なスキルを持っていないのだ。俺が必要スキルと生産レシピを教えなければ、PC生産者達は作ることが出来ないと断言出来る。教えたところでスキルLVが至らないと思うから、LV上げで更に時間が掛かると予想が出来るし。…どう考えても大丈夫、…失礼かもしれないけどさ。


自信を滲ませそう言えば、エイミーさんはホッとした様子で、


「…なら安心ですかね? …少し複雑ですけど。他の客人の方々は、ティルさんよりもまだまだ未熟なんですね。…シアル支部が盛り上がるのはいつになるのでしょう?」


そう言って溜め息を吐く。真似ることが出来ないことに安心したけど、このシアル支部が盛り上がらないことにはちょいと不満…ってとこか。人…NPCは多くいるけど、客人というPCは俺だけ。PCにも盛り上げて欲しいわけね、…分からんでもない。しかし、そこら辺のことは大丈夫だと思うよ? 何故なら…、


「一応…発破というか、俺の持つ生産情報を教えておいた。近々…俺以外のPC、客人が来るようになるさ。」


あの程度の情報でも、他のPC生産者は何かしらをするだろう。日本人は変態が多いからな、驚くような物を作る奴が出てくると思うよ? 俺も勉強になると思うし。正直楽しみなんだよね、何が出てくるかってことがさ。


「へぇ~、生産情報を教えてあげたんですか? 太っ腹ですね! …ティルさんの言うように、それがきっかけでそうなればありがたいです。…でティルさん、この後のご予定はどんな感じになりますか?」


支部が盛り上がる光景を思い浮かべてか、エイミーさんの顔が喜色に満ちている。そして俺の専属故か、この後の予定を聞かれた。


…この後の予定ね、…何にも考えてなかったな。


「んー、…そうだな。…とりあえずブラブラと街を歩こうかね? そうすれば何をするか思い付くだろ。」


街の中を歩いていれば、何かしら思い付くだろう。もしかしたらイベントが起きるかもしれないし、他のPCの露店を見て回るのも勉強になるかもしれん。とりあえずブラブラフラフラ、それが一番いい。


「街を散策…というわけですね? 分かりました。私は〔投擲薬〕のことを支部長へ報告させて貰います、では…また後で会いましょう!」


エイミーさんはそう言って、奥の方へと消えた。


露店のことを報告した俺は、もう用がないというわけでギルドの外へと出た。


「さて…、これからどうするべきか。」


今日は一日中販売する予定だったからな、昼前にやることがなくなってしまった。うーむ…、本当にこれから何をするべきか。…露店で色々売り捌いたお陰で、俺の所持金は50万にまで増えた。このまま貯めていても意味がない、…そうとなれば使うだけ。……よし、噂に名高いスキル屋にでも行ってみよう。何かしらの良いスキルが売っているかもしれない、見るだけでもスキルのことが分かると思うしな。うむ…そうと決まれば即行動、俺は足早にメインストリートにあるらしいスキル屋へと向かう。地図を見ながら探せば見付けられるよな? …そのスキル屋、…たぶん。


────────────────────


何とか迷わずにスキル屋へと辿り着いたわけだが、…実に悩ましい。スキル屋店内でスキルを物色し、現在最後の一つを何にするかで悩んでいるのだ。今回スキル屋で使用する金は40万、残りの10万は一応使わずに残しておく。この先、何があるか分からんからな。


んで、最初に選んだスキルは〈光〉と〈闇〉だ。この二つのスキルは魔法スキルに分類され、その名の示す属性魔法が使える。光魔法は攻守に優れた万能型で、闇魔法は攻撃…状態異常に特化しているらしい。まぁ遣い手にもよるらしいんだけど、…俺はどうなるんだろうね? 楽しみではある。


それに魔法スキルと言われているが、それ以外でも何かしら使えるであろうと予想する。生産スキルと同じように、組み合わせによって魔法以外の使い方があると思うんだよね。因みに〈光〉と〈闇〉のスキルはそれぞれ15万、合計で30万もした。流石に高いね、スキルというヤツは。もっと安いと思っていたんだが、現実というのは手厳しい。現段階で買い漁ることは出来ませんな、…買い漁ったところで使いこなせるかは未知数なわけだし。


…で今は〈料理〉〈探索〉〈採掘〉の三つの中から、何を買うかで悩んでいるわけだ。〈料理〉はまんま料理を作る為の生産スキル。リアルでは一応料理人な俺、気になるのは仕方のないこと。〈探索〉はフィールドやダンジョンでのマッピングに宝箱探知、隠し部屋や隠し通路などを見付けるのに効果を発揮する冒険スキル。基本ソロで行動したいと思う俺には、このスキルは魅力的に思える。〈採掘〉は発掘ポイントという場所にて、鉱石などの素材を掘り出す時に補正が入るらしい収集スキル。俺は生産もするからな、鉱石などの素材は大量に必要となる。


スキルの値段は各10万、正直どれも欲しい。険しい顔して悩む俺の周囲に人はいない、…理由は分かっている。俺の顔が恐くてビビっているんだろう? 店員でさえビビりまくっているのだから。…俺の顔はいつだって平常運転だよバカヤロー。


自身の顔のことは置いといてだ、一頻り悩んだ末…、


「〈光〉〈闇〉〈採掘〉の三つを売ってくれ。」


最終的に〈採掘〉を選んだ。理由はこれからのことを考えた結果であり、俺は生産関係が熱くなるであろうと予想している。そうなると、街で入手出来る鉄鉱石などの素材が不足する。NPCは独自のルートがあると思うから大丈夫だと思う、だがPCは違う。…俺が発破をかけたせいで、鉱石類の素材を死物狂いでかき集める。それもかなりの期間、…PCとはそういうものだと妹が言っていたような。


そんなわけで安定した生産をするならば、収集スキルは必要不可欠だ。既に所持している〈採取〉で、素材には困っていないがこれからもそうとは限らない。鉱石類は確実に品薄となるだろうし、他の素材も言わずもがな。〈採掘〉は勿論、〈採取〉にも頑張って貰わないと。故に〈採掘〉を購入、…素材採取と素材確保で忙しくなるのは確実なのである。


これからのことを考えている俺に、


「こ…こちらが〈光〉〈闇〉〈採掘〉のスキル書となります、…お確かめください。」


店員が注文したスキル書を見せてきた。…表紙を見て確認したが間違いない、注文したスキル書だな。


「ふむ…間違いはないな、ありがとう。代金は三つで40万G、それでいいんだよな?」


そういえば店員がブンブンと首を縦に振ったので、40万を店員にきちんと支払った。


「…はい、た…確かに40万Gをお預かり致しました。どうぞ商品をお受け取りください、…ご購入ありがとうございました。…ま、またのご来店をお待ちしております。」


三つのスキル書を俺に手渡し、大袈裟すぎる程に深々と頭を下げてくる。そこまで頭を下げなくても…と思ったが、口に出せば更にビビると思って何も言わずに店を出た。


店を出た俺は、買ったスキル書を早速使用してみた。するとどうだろう、スキル書が無数の光となって俺の身体に入ってくる。その光が全て入るのを確認した俺は、自身のステータスを見てみた。……うむ、ちゃんと控えスキルに三つが追加されているな。…となれば、草原に出て魔法を試してみるのが一番。


そう思い、北の草原へと足を向けた時、


「…やっと見付けたぜ。ティルさん、ちょっと待ってくれ!」


背後から俺を呼ぶ声が。振り向いて声の主に視線を向ければ、俺の露店で商品を買っていった男と初見の女がいた。…え~と、男の方の名前は何だっけ? …バル…サンだったか?


────────────────────


男の名はバルバロッサ、女の名がJunというらしい。…バルサンではなかったみたいだ、俺って奴はダメな男だなぁ~…。それはともかく、俺に何の用があるのだろうか?


「バルバロッサよ、この俺に何用かね? 露店の時にも言ったと思うが、…売る物は一つも無いぞ。」


あの時にも言ったと思うんだが聞いていなかったのか? とりあえずもう一度言ってみたのだが、


「それは知っている、露店で聞いていたから。…で用があるのは俺じゃないんだ、隣にいるJunがだな…。」


バルバロッサではなく隣の女が俺に用と? …俺は隣の女、Junさんとやらに視線を向ける。俺の視線に気付いたJunさんは、真っ直ぐに俺を見て…、


「お忙しい中、申し訳ありません。突然のことで驚かれるとは思いますが、ティルさんにご協力して頂きたいことがあるのです。」


怯むこともなく言葉を発する。


…やるじゃないか、ビビらずに話し掛けてくるなんて。精神がタフだな、…気に入った。


「…協力? …その内容と理由は何だ?」


協力して貰いたいことがあるようだが、内容を聞いて可能であれば受けよう。


「はい、ご説明させて頂きます…。」


Junさん曰く、王都へ向かう道中にあるノーシュ山を攻略する為だとか。山の中腹? 辺りに出現するアルマジロンとかいう魔物が、山の上から凄い勢いで転がり落ちてくるらしい。何度か挑戦したみたいなのだが、体当たりを食らっては死に戻って下山…ということが続いているとのこと。


その対抗手段として盾を用意したかったみたいなのだが、盾を売るPCがあまりいなくて売っていても質が悪い。どうしたものかと考えていた時に、颯爽と現れたのが俺みたいだ。高性能の武器防具を作ることが出来、その作れる防具の中に盾もある。その事実も踏まえ、俺に盾の生産を依頼したいらしい。


因みに俺を探す為にSSで撮った写真を使い、露店を開いていたメインストリートを中心に捜索していたようだ。顔が顔だけに、犯罪者と思われてしまったようだがな…。これから先、そのせいでNPCに絡まれたら恨んでやるから覚悟しておけ。…それはいいとして、協力の理由を聞いた俺は、


「協力してやるのはいいのだが…、現在盾を作れる程の素材を持ち合わせていない。」


素材の殆んどを使ってしまったからな、…求められている盾を作ることが出来ない。まずは素材集めだということを含ませて言ったのだが、


「ご協力して頂けるのですか? …ありがとうございます!」


花が咲くように笑顔が溢れるJunさん。彼女はややカッコいい系の黒髪ポニーテール剣士、見た目クールではあるけれど素敵な笑顔じゃないか。


まぁとにかく、


「…今言ったけど、…素材が無いぞ?」


もう一度言っておく。盾を作る為の素材なんか無い、種類にもよるけどな。改めて言った俺の言葉を耳にしたJunさんは、軽く咳払いをしてから…、


「…素材に関しては、前線メンバーを動員してかき集めます。…で、素材は何が必要となるのでしょうか?」


と言えば、隣に控えるバルバロッサはメモ帳を取り出す。俺の言葉をメモる為か、…良い心掛けだな。


「強力な体当たりを防ぐ為の盾だろ? …そうなれば大盾がいいか、鉄の大盾…だな。必要素材は…クズ鉄か鉄鉱石、獣系の皮と毛皮、…スライムの核も必要となる。主な素材はそんな感じだろうか? 他にも必要となるかもしれないが、…生産過程に入らなければ分からない。」


鉄の大盾を作ると仮定して素材を挙げる、…後は作ってみなければ何とも言えない。挙げた以上の素材が必要になるかも知れんし、…作るなら最高を目指したい。


Junさんに大盾を作ると言えば、


「…凄いですね、私としても大盾を作って貰いたいと思っていたのですよ。」


俺の提案は的中か、やったな俺! …まぁとにかく、


「アルマジロンなんか見たこともないが、聞く限りは大盾がベストと思っただけだ。だが…作るからには、大抵の攻撃を防げるように作りたいと考えている。」


俺は師匠の教え通り、自身の作れる最高を目指す。技術を上げる為に妥協はせん!


「…本当にティルさんは凄い方ですね、プロの職人といった感じでしょうか? …私達の中で大盾を扱える者は三人、…盾であればそれなりでしょうか。…出回っている盾が少ないので仕方がないのですが、今回を機に増やしていきたいですね。」


盾が出回っていないとのことだからな、そのような状況で大盾を扱える奴が三人はいる。…流石は前線組といったところか? それかあれだな、初期スキルで〈大盾〉持ち。そうだとしたら可哀相ではある、…大盾は勿論のこと盾ですら入手困難の現状であったみたいだからな。…初期装備で大盾があったりしたのかな?


〈盾〉〈大盾〉スキル持ちのことを考えつつも、


「それじゃあ、大盾を三つ作るとしよう。……そうだ、明日の昼頃に総合ギルドへ来てはくれまいか?」


大盾を三つ作ることを伝え、たった今思い付いたことも一緒に伝える。


「えっと…、総合ギルドへですか?」


俺の言葉に疑問を浮かべるJunさん。唐突の提案だからな、そんな顔にもなるだろう。だが、君達にとってかなり良い提案になるぞ。何故かというと…、


「君達に俺の作った盾でも提供しようかと思ってね。今日までのスキル持ちの苦労に同情をしたわけで、提供することにより少しでもスキルが鍛えられたら…と。大盾だけに頼るよりもいいんじゃないか? 複数の盾持ちがいれば攻略も捗るだろ。」


盾を作って提供しようと考えているのだから。


盾を提供すると聞いたJunさんは驚き、


「それはとてもありがたいことなのですが、…ティルさんに不利益が生じるのでは?」


まぁ俺が損をすると考えるわな。…しかし、損はしないのだよ。


「盾を提供する代わりにお願いがある、ノーシュ山で発見されたという発掘ポイントを教えてはくれまいか? 生産者の端くれとして、鉱石類は魅力的でな。」


盾を無償提供する代わりに、ノーシュ山にあるとされる発掘ポイントを教えてもらう。シアルの街に引き籠っている俺には是非にでも欲しい情報、前線組にとっちゃあ秘匿にするような情報でもないと思うしな。いずれ知れ渡る発掘ポイントより、良い盾が複数入手出来る。考えるまでもないことだとは思うが…、どうだ?


「正直釣り合うとは思えませんが…、ティルさんがそれで良いと言うのなら…。」


Junさん的にまだまだ俺の方が損をしている、そう思っているみたいだが気にしないで欲しい。俺がいいならそれでいいのだ、世の中そんなもんじゃない?


お互い言うべきことを言ったわけで、


「では、素材の方は私達にお任せください。約束の時間までにはある程度、いえ…余裕ある量を確保しておきます。」


余裕ある量とは頼もしいな、期待させて貰おう。


「そういうことで頼むよ、俺の方でも集めておく。」


そうまとめて二人と別れた、…バルバロッサが空気になっていたけれど終わったことだ。とりあえず約束の盾を作る為に、素材を求めて草原へ行くとしよう。ついでに新装備と魔法も試す、…レアモンスターも気になる。狼の時と同じ状況を作れば出るかな?

次話は、あの二人のNPCが登場予定です。


前回と話が微妙に変わります。

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