王女アデリシア
おお、おぬしどうしたそんなに泣いて・・・なに、喧嘩してけがをしたじゃと?
そうかそうか。
その怪我はわしが治してやれるがの、喧嘩した心の傷までは治せんよ。
それには、お前さんと相手の思いやりが必要なんじゃ。
なに?喧嘩したから、もういいじゃと?
おまえさん。後悔は先にはできんのじゃよ・・・。
そうじゃ、お前さんにいい話をしてやろう。
きっと何かを考えることになるだろうて・・・・・。
「ええ、わかっています。お父様。私ももう14です。立派に務めを果たしています。」
そう言って気品ある少女は自分の行為に自信を持っていた。
「アデリシアよ。そなた立場というものをわきまえよ。そなたは第三王女であるのだぞ。そろそろ輿入れも近い。いつまでも、聖女ごっこは慎むのじゃ。」
威厳のある声で、男は告げていた。
それは現国王、ハイス=ナーレスツァイト=ウル=アウグストその人だった。
「聖女ごっことは心外ですお父様。アデリシアは国のため、国民のために役立っていると自負しております。そうですわね。デルバー。」
アデリシアは、王の横で微妙な表情をしている男にそう尋ねていた。
「アデリシア様。そんなところでわしを捕まえんでくれんかの・・・・。確かにアデリシア様の司祭としての腕前は司教級と考えれますがの。それとこれとは話が違います。王はアデリシア様のことが心配なのです。せめて、王都だけにとどめるなど、活動範囲を考えてくだされ。お供のものも、気が気でならないと聞いておりますぞ。」
デルバーはそう言ってアデリシアをなだめていた。
「デルバー。あなたもお父様の味方なんですね・・・・・・。もういいです。誰もアデリシアのことなどわかってくれないのです!」
アデリシアはそう言って、自分の部屋に戻って行った。
「デルバーよ、何とかならんか・・・」
王は困った顔で、デルバーに相談していた。
「王よ。わしにもどうにもなりませんの。」
デルバーはあまり真剣には考えていなかった。
「とりあえず、護衛を強化するしかありますまい。王女の今度の行先はモーント辺境伯領です。マルスに任せてみるのもいいかもしれません。」
デルバーはそう言って、マルスに王女のことを託そうとしていた。
魔剣クランフェアファルを得たのち、マルスは聖剣ジークシュヴェルトを使って魔の森を解放していった。10年の歳月をかけて、開墾と植民を繰り返し、マルスは新しく辺境伯としてかつての魔の森、今は開拓して豊かな土地になっているモーント辺境伯となっていた。
モーント辺境伯になって2年。マルスからは順調にしているという手紙が時折デルバーのもとに届いていた。そして、年1回王都にやってくるマルスにデルバーは魔剣のことを確認していた。
「魔剣のことなら心配はいらんよデルバー。要は最愛のものを作らねばよいのだ。俺は一生独身でいればそれでいいじゃないか。」
マルスはそう言って笑っていた。
モーント辺境伯となり、実家よりも上位の貴族となった以上、家名を存続させる必要があったが、マルスにはその意志はなかった。もともと辺境伯となったのも、成り行きだと豪語していた。
「あ奴らしい。」
デルバーはそして、そのことを意識から少しずつ離していった。
危険はない。10年以上もの安心がデルバーの思考を徐々に狂わせていた。
「そうだな、マルスに任せてみるか・・・・。ところでマルスはいくつになった?」
おもむろにハイス王はデルバーにマルスの年齢を尋ねていた。
「王の3つ下。29です。」
デルバーはそう答えていた。
「そうか、29か。あの魔剣がなければ、モーント辺境伯家も安泰だったのだが、養子でもとるか・・・。」
王は王国の領土拡大、王家の威信増大、そして魔の森の開拓と功績の大きいモーント辺境伯家を存続させたいと考えているようだった。
「もう少しすれば、近くにシュミット辺境伯、エーデルシュタイン辺境伯を移封するので、そうすればマルスの負担も減るだろう、真剣に考えてみるか。」
そう言って王はその話に乗り出そうとしていた。
「だれも私のことを理解してくれない・・・・・。」
アデリシアは自室のベッドの上でだらしなく寝そべっていた。
「アデリシア様。その恰好はいくらなんでも・・・・」
侍女のハンナはそんな姿は見飽きていたが、自分よりも一つ年上の姉として、一応注意をしていた。
「ハンナ。いいのです。ここだけが、私の唯一の安らげる場所ですから。」
アデリシアはそう言ってさらに枕に顔をうずめていた。
「嫌い嫌い嫌い。みんな大っ嫌い。もう私のことなんてほっといて。私は自分の役目を果たしているだけじゃない。なんで悪いの?何がいけないの?王女だから?だったらもう王女なんてやらない!だれかわたしをさらってよ!」
枕を顔に当て、自らの心の声を大にして叫ぶ姿は、淑女として問題があった。
しかし、ハンナにしか見せないそんな姿をハンナはいつしかかわいらしいと思っていた。
「年上だけどね。けど、少し重症かな・・・。」
ハンナはアデリシアが王女としても孤立していることは知っていた。なまじ信仰系魔法が得意だったため、小さなころから教会に出入りしていた。そこで腕を磨くにつれ、アデリシアはもっと人の役に立ちたいと思い始めていた。
最初は王都の中だけだった。
王都の中で孤児たちのために催し物を企画したり、募金を集めたりしていた。
アデリシアがくる日は行列ができるほどだった。
そして、年齢が上がるにつれ、子供らしさがなくなり、女性として魅力的になって行くにつれて、いろいろうわさになっていき、その人気は絶大なものになっていた。
「聖女アデリシア」
王都でその名を知らぬものはなく、王国内でも有名になっていた。
そして、その活動は王都にとどまらないようになっていた。
アデリシアは王国内を定期的に訪問して、そこの領民を癒していた。
どこそこの村で、疫病が発生しているという噂を聞けば、すぐに食料や物資を持って出かけていた。その行動力は、たいしたものであった。
しかし、それをよくは思わないものもいた。
教会内でも無償で行う行為に対して問題になったことがあった。
その時は国王がその権限を発動し、アデリシアの日という特別な日を設けることで解決したが、人の心にともった暗い炎はそう簡単に消えるものではなかった。
そして、その美貌が噂になるにつれ、王女の周りでよからぬことがたくらまれることが多くなった。
「護衛が必要じゃの」
人知れずデルバーが護衛をすることになっていたが、多忙な彼はそれほど一緒に出掛けることはできなかった。
聖騎士の中からその役割を輪番で賄うことになっていたが、聖騎士たちはアデリシアの活動自体にあまりいい気はしていなかった。
「王女としてふるまってほしい。」
それが聖騎士たちの想いだった。
そして、貴族たちはその存在を疎ましく思っていた。
王都内でのことであれば、特に問題にはしていなかったが、自領内で活動された後は、彼女の人気は領内でとどまることを知らなかった。そしてそれは領主に対して陳情という形でもたらされた。
「聖女アデリシアの再訪問」
領民たちは領主よりも聖女をもてはやしていった。
ハンナはそうしたことをすべて知っていた。そして、アデリシアにもそれとなく伝えてはいた。
しかし、アデリシアはそれを聴いてなお、自分のやりたいようにやっていた。
「そういうところは王女様ですね」
ハンナはデルバーにそう言って笑っていた。
しかし、ハンナは心配だった。
アデリシアの身に何が起こるかわからないが、アデリシアのことを本気で守ってくれる人がいないことがハンナにとって大きな心配だった。
「だれかもらってくれる人がいないのかしらね」
ハンナは女性として魅力的なアデリシアも、その言動から自らを落としていることを残念に思っていた。
王女という地位もそれに拍車をかけていた。
「結局なるようにしかならないけど、不安だわ。」
ハンナは言い知れない不安を抱えて、毎日を過ごしていた。
「ハンナよ。アデリシア王女のことで何かあったら教えてくれ。」
ハンナはデルバーのその言葉を思い出していた。
「今日も報告に行かないとね。」
そう思い、ハンナはアデリシアの部屋を後にしていた。
「マルス、今度王女アデリシア様がおぬしのところを視察されるそうじゃ。よろしくの。」
デルバーは高速魔導通信でマルスにそう告げていた。
水晶球に映るその姿は、勇壮だった。
「はっはっは。ついに俺のところにお転婆がやってくるか。いいぜ。ちょうど癒し手が不足していたところだ。目いっぱい活躍させてやる。さっそく送ってくれ。」
マルスはそう言ってデルバーに転移させるように告げていた。
「おぬし、王女をものかなんかと勘違いしとりゃせんかの?普通に移動するから、おぬしも途中まで迎えに来い。わしもさすがにベルンまではついていくが、それ以上は難しいのでな。それと、おぬしに言っておくが、くれぐれも頼んだぞ。王女の周囲は敵が多いでな。」
デルバーは真顔でマルスにそう告げていた。
「はっはっは。任せておけ。俺にとって、癒し手は貴重な人材だ。粗末にはせんよ。それに、アデリシアは美人だとうわさだしな。聖女の姿をみて、領民が喜べば、おれもうれしい。せいぜいこき使って、当分視察にはいきたいと思わないようにしてやるさ。お前もそれが望みなんだろう?」
マルスは相変わらず感がよかった。
「全くおぬしは・・・。まあ、全く反対なわけではない。ただ、子供のうちは見逃されていたことも、大人になると目障りに思う連中がここには多いということじゃ。お前のところで囲ってくれてもいいぐらいじゃ。」
デルバーはそう冗談を言っていた。
「お前の冗談はセンスがないな。まあ、癒し手として雇ってもいいがな。もっとも王が許せばだがな。意外に王女のこと、かわいがっているよな。お前をつけるぐらいだ。」
そう言ってマルスは豪快に笑っていた。
「まあ、冗談はこれくらいにして、くれぐれも頼んだぞ。少し嫌な予感がするんだ。勘違いであればいいのだがな・・・・。」
デルバーはそう言って表情を曇らせた。
「お前のそれって当たるんだよな。全く面倒事をこっちに押し付ける気かよ。まあいい。全部面倒見てやる。それでいつのことだ?」
マルスはベルン到着を確認していた。自分のスケジュールを合わせるつもりだった。
「王女は明後日王都を出発する予定じゃ。ベルンにはそうじゃな、順調にいけば12日後になるかの。」
デルバーはそう告げていた。
「わかった。ベルンで会おう。」
マルスはそう言って魔導通信を切っていた。
「頼んだぞ・・・・。」
デルバーは何も映していないその水晶球に向かって、そうつぶやいていた。
「アデリシアよ。気を付けて行って来い。それとわかっておろうが・・・」
ハイス王は出立の日、わざわざアデリシアの部屋まで来ていた。公式には見送らない。それが決まり事だった。
「お父様、もういいです。王女としての自覚を持ってでしょ?もう聞き飽きました。アデリシアは王女であって恥ずかしくないようにします。これでいいんでしょ!お父様の顔なんてもう見たくありません。」
ややヒステリックになってアデリシアは、顔を背けていた。
「アデリシア様。王は心配なのです。アデリシア様のことが。」
デルバーは気落ちした王に代わってそう告げていた。
「デルバー。わかっています。でも、アデリシアのことも分かってください。アデリシアも王国のことを考えています。」
アデリシアは涙目になっていた。気丈にふるまってはいても、まだ14歳の少女だった。
「ええ、わかっております。今度はその力を存分に揮っていただけるようマルス・・モーント辺境伯にも伝えてあります。彼もアデリシア様の護衛として離れないようにお願いしていますので、辺境伯領の民のことお願いします。」
デルバーはそう言って門出にふさわしい雰囲気を作ろうとしていた。
「わかりました。ではデルバー。ベルンまであなたが護衛してくださるのですね。」
アデリシアはそう言って王に挨拶していた。
「お父様。アデリシアは行ってまいります。」
優雅に挨拶をして、扉から出ていくその姿を王はさびしそうな顔で見送っていた。
「デルバー。モーント辺境伯のことを教えてください。あなたはたびたび辺境伯と冒険をしたと聞いています。」
アデリシア様はベルンまでの道のりで、デルバーにマルスの話をせがんでいた。
「興味がおありなのですね。」
デルバー様はそう言って笑顔になった。
「ええ、彼の話はよく聞きます。すごい剣士でありながら、犬さがしなど民の困ったことをそれこそ真剣になって取り組んでいたとか。そうかとおもったら、あの砂漠化の原因であった土竜を退治してその砂漠化を食い止めたとか。現在のモーント辺境伯領は、もともと森だったんでしょ?そこを開拓するのに先頭に立って開拓したとか。」
アデリシア様はやや興奮した面持ちで話していた。
「そう、私は興味があります。私がやろうとしていることをすでに実践されている方ですからね。」
アデリシア様の鼻息は荒かった。
「まあ、そうですな。時間もありますので、お聞かせしますが、あれは少々変わった男でしてな。感じ方があった人によってずいぶん変わるんです。アデリシア様も聞いた話と実際に見たことと両方で評価することをお勧めします。」
デルバー様はそう言って、マルスとの出会いから、今に至る話をしていた。
「まあ、ではその魔剣のせいでモーント辺境伯様は未だにお一人ですの?」
ベルンに近づいたころ、その話になっていた。
「まあ、そうでもないのかもしれませんが、それは大きな理由でしょうな。」
デルバー様はそう答えていた。
マルス様は英雄として生きることを選択していた。
それはマルス様の中でどのような姿なのかわからなかったが、デルバー様はむしろそれが大きいような気がすると話していた。
しかし、魔剣の問題がなければ、出会いの数は多かったに違いない。それほど英雄マルスという人物には人を引き付けるものがあった。
「まあ、そういうことです。お気を付けくだされ、アデリシア様。マルスはかなりの美形です。それに人を引き付ける力がありますのでな。」
デルバー様はそう言ってそれが冗談であることを示すように笑っていた。
「おほほ。気を付けましょう。」
アデリシア様はその冗談に乗って楽しそうに笑っていた。しかし、話を聞いてますます本人に会いたくなっていることがよくわかった。
「(アデリシア様。あなたもやっぱり14歳の乙女なのですね。)」
ハンナはアデリシアの態度を見て、そっと心の中でつぶやいた。
英雄マルス。そう人々の中で話される話に、ハンナも心ときめかせていた。
自分には縁がないと思うので、冷静になって聞くことができたが、デルバー様の話は英雄マルスの人柄を克明に写しだしていた。
それほど英雄マルスの話は彼女たちに印象的だった。
「(英雄マルス。)」
その響きの持つ意味にハンナも酔いしれていた。
「よう、デルバーまったぜ。しかし、お前、老けたな。」
マルスはそう言って馬車から降りたデルバーに挨拶していた。
久しぶりに会った友人にマルスは人懐っこい笑顔で握手を求めていた。
「・・・おぬしは変わらんの。エルフの血が混ざっておるのか?」
デルバーはあきれた表情でそう告げていた。
そう、マルスは全く変わっていなかった。12年の歳月はデルバーを確実に年とらせていた。しかし、マルスは29になっているにもかかわらず、17歳の時と同じ姿だった。
「アデリシア様、お気をつけて・・・」
デルバーはアデリシアにそう言いかけて、言葉を止めていた。
馬車から顔をのぞかせたアデリシアはその場で固まっていたからだ。
デルバーはマルスをにらんでいた。
その顔の持つ意味を理解したマルスはアデリシアに話しかけていた。
「よう、お転婆姫さん。初めまして。俺がマルスだ。そんなところで固まってないで、降りてきたらどうだい?もし一人で降りれないのなら、俺が抱っこでもしておろしてやろうか?」
「なっ」
アデリシアはその言葉で呪縛を破っていた。
「これは、これはモーント辺境伯様。わざわざのお出迎えご苦労様です。わたしはアデリシアです。お噂はかねがねお聞きしておりましたわ。うわさに聞いた英雄があまりにも子供っぽくてびっくりいたしました。」
アデリシアはそう言って馬車を下りて、優雅に挨拶をしていた。
続いて降りたハンナをみてデルバーは何とも言えない顔になっていた。
「(まいったの・・・・)」
デルバーは、これはまずかったのかもと思い始めていた。
「ふっふっふ。いいね。じゃじゃ馬姫さん。その意気だ。お前さん聖女として扱われているんだってな。その腕、うちの領民がまっている。じゃんじゃんこき使ってやるから覚悟しな。」
マルスはより一層アデリシアを挑発していた。
「英雄の名声を塗り替えて差し上げましょう。」
アデリシアはそう言って挑発に乗っていた。
マルスは意味ありげにデルバーを見て、自分の用意した馬車にアデリシアを案内していた。
そして、アデリシアとハンナを馬車に乗せて、自身は馬に乗って出発を宣言していた。
その姿をデルバーは見送りながら、かつてないアデリシアの顔を見て安心していた。
「まあ、なるようになるかの・・・・。」
デルバーは今のアデリシアは自分の気持ちを表に出すことをしないように心掛けていると考えていた。
ハンナから聞く姿と、自分が見る姿の違いがそれを証明していた。
そのアデリシアが初対面のマルスに子供のころの顔で会話していた。
「英雄マルス。おそろしいの・・。」
デルバーは笑顔で小さくつぶやいていた。
「なんなの?あれ。英雄?ただの無礼者じゃない!」
アデリシアはそう言ってハンナに同意を求めていた。
「いえ、アデリシア様。とっても紳士でしたよ?」
ハンナは自分の手を取って馬車に誘導してくれた英雄にのぼせていた。
「あんなの、誰でもするじゃない。何あの態度。それに私のことじゃじゃ馬だなんて。信じられない。今に見てなさい。聖女アデリシアの実力を思い知らせてやるんだから。」
アデリシアの鼻息は荒かった。
「(さすがは英雄様。すっかりアデリシア様の化けの皮を剥いでしまってます。)」
そう思うハンナは英雄マルスの馬上の雄姿を想像してうっとりしていた。
目の前でやかましく文句を言っているアデリシアのことは、今だけは放置しておくハンナだった。
「お前たち、顔は覚えたな。あれが王女アデリシアだ。」
男はそう言って対象を告げていた。
「わかっていると思うが、決行は辺境伯領に入ってから指示する。それまでは各自で潜入しておけ。」
そう言って男は解散を告げていた。
「目立ちすぎたんだよ、あんたらは・・・・」
男は小さくつぶやくと、路地の中に消えて行った。
「ああー。つかれたー。ハンナ。私もうねる。」
そう言ってアデリシアはモーント辺境伯の用意された部屋のベッドにそのままの姿で飛び込んでいた。
その様子を見ていたハンナが苦笑しながら、そばに寄っていた。
「アデリシア様。せめて着替えましょう。そのローブ明日も着ることになるのでしょう?しわが付くとマルス様にそのまま寝たことがばれますよ?」
ハンナは意地悪く、そうささやいていた。
それはマルスが用意したアデリシア用のローブだった。ここで活動するにはこのローブを着用することが条件だと言っていた。
「着替えるわ!」
そう言って乱暴に脱いだアデリシアは夜着に着替えてベッドにもぐりこんでいた。
「ほんと、生き生きしてますね。」
ハンナはそう感想を漏らしながら、脱ぎ散らかした服を回収していた。
「あいつ人使いが荒いのよ。もう、私今日は回復できないといってるのに、あと一人あの子のけがをと言ってくるしね。見ればちょっとしたキズなのよ。あんなのほっといても大丈夫なのに。」
アデリシアはそう言って自分の言った言葉に驚いていた。
「ちょっとまって、今の私が言ったのよね・・・・。」
アデリシアは驚いていた。アデリシアはいままで、傷の見た目で判断することなく、その癒しの技を使っていた。怪我に優劣はない。そう思って治療していた。
王都でも、その他の地域でも自分の魔力が枯渇することはなかった。
それは、枯渇するまでの人がいなかったからだった。
では、枯渇するような事態になった時にどうするのか。
今回はあの小さなけがだから、気力を振り絞って治療はできた。しかし、あの後大けがをした人が運ばれていたら・・・・・。
アデリシアはそう考えてぞっとしていた。
魔力枯渇で何もすることができず見殺しにする自分の姿を想像していた。
「こわい・・・・」
アデリシアは初めてそう思っていた。そしてその時のマルスの言葉を思い出していた。
「おい、今回はできてよかったな。でも、いつもできるとは限らないぜ。それが取り返しのつかないときでなければいいんだがな。」
マルスは最後にそう言っていた。
言われたその時は反発したが、このことを言いたかったのだろうか。アデリシアはここに来てから、今までのマルスの言葉を思い出すようにしていた。
「分け隔てなくというのもいいけど、ものには限度ってもんがあるんだよ。つばつけときゃ治るもんまで治してたんじゃきりがないぜ。」
「おまえは治しているつもりだろうがな、人間は治る力もあるんだよ。本来時間をかけて治していくものを一瞬で治ったらどう思う?傷を負うことには意味がある。それは体が覚えるんだ。この痛みは二度とごめんだってな。だから、人間は注意するんだ。毒植物を誤って食べて死んだ人間がいるから、それを毒植物だと人類が共通意志を持っていくのと同じことさ。」
アデリシアの中で、治療に対しての考え方を見直す意識が生まれていた。
そしてそのままアデリシアは疲労の中で深い闇に沈んでいった。
「おやすみなさい。アデリシア様。最近とても充実したお顔でハンナはうれしく思います。」
そっとつぶやくハンナの耳に小さくドアがノックされる音が聞こえていた。
開けようとドアに近づくハンナに、ドアの向こうから開けなくてよいことを告げられていた。
「まあ、マルス様、どうかされましたか?」
ドア越しにハンナは静かに話しかけていた。なぜ開けさせないのだろう。ハンナは疑問に思っていた。
「ここに果物を用意しておく。精神疲労の取れるものだ、明日アデリシアが起きたら食べさせてやるといい。見たことないものだろうが、お前も食べていいぞ。」
ドアの向こうで何かを置く音と共に、立ち去る足音がして、ハンナはそっとドアを開いていた。その後ろ姿を確認し、マルスが置いたものだと理解したハンナは果物を室内に入れていた。
「ほんと見たことない果物ね。でも、おいしそう・・・・。」
ハンナはそう言って保存用魔道具にその果物をしまっておいた。
「よし、じゃあ今日も行くわね!」
アデリシアは昨日のつかれも吹き飛んで、そう宣言していた。
「あら、ほんとにあの果物は効果があるんですね。」
そう言ってハンナは自分も一口もらい、残りをまた保存用魔道具にしまっておいた。
「ねえ、ハンナ。まだ時間があるから、ここで少し休むわ。」
そう言ってアデリシアはソファーで横になっていた。
ハンナはアデリシアの体に毛布を掛けると自分に強烈な睡魔が襲っていることに気が付いていた。
「なに・・・まさか・・・・」
ハンナの脳裏にあの果物が浮かんでいた。
抗いようのない睡魔にハンナは逆らいきれず、自身もソファーの上で眠ってしまった。
「なんだ、魔力切れがまだ続いているのか、しかも昨日からそのままそこで寝るなんて、よっぽどだったんだな。すまんすまん。今日は予定を変えよう。俺は北の森まで視察に行くから、今日はゆっくり休んでおけ。」
マルスはなかなか降りてこないアデリシアを迎えに部屋まで行ったが、誰も出てこないので、中に入っていた。
そしてソファーで毛布を掛けられて寝ているアデリシアと、その近くで寝ているハンナをみて、そう判断していた。
そして、ハンナに毛布を掛けると、部屋を後にしていた。
「よし、今日はアデリシアの訪問は中止することを伝えておけ、おれは北の森まで出かけてくる。アデリシアには今日一日部屋でゆっくり過ごしてもらうので邪魔するな。」
マルスは屋敷の使用人たちにそう告げていた。
そして、何人かを連れて、馬を走らせ屋敷を出て行った。
「よし。計画通りいくぞ。」
屋敷のそばの林の中で男たちはその時を待っていた。
アデリシアは揺れる体に違和感をおぼえて、目を覚ましていた。
目の前にはハンナが縛られ、口をふさがれて横たえられていた。
そしてアデリシア自身も両手両足が縛られて、口もふさがれていることを認識していた。
「(何がどうなっている?)」
アデリシアはあたりを見回し、状況をつかもうとしていた。
「(馬車の中、どこかに連れて行かれている。しかし、この待遇。マルスじゃない。)」
必死に両手の自由を得ようと試みたが、すべて無駄に終わっていた。
いろいろしているうちに、ハンナも意識を取り戻していた。
最初目が合ったハンナはアデリシアの様子をみて、驚愕に目を見開いていた。そして自分も同じ境遇であることを確認すると、その顔は悲しみに満ちていた。
「(ハンナ、あなたは悪くないわ)」
アデリシアは必死にそのことを伝えようとした。
自分たちがこういう目に合っているのはきっとあの果物のせいだった。
それを勧めたハンナはきっと今深い後悔に自分を落としているだろう。
アデリシアにはそれが分かっているだけに、自分が考えていることを伝えたかった。
「あだだは、ばわらかなあ」
アデリシアは必死にあなたは悪くないと叫んでいた。
「騒々しいな。もう着いたぜ。ちょっとここでおとなしくしてな。じきにお迎えが来るからよ。」
男はそう言って馬車のドアを開けていた。そして馬車の中を覗き込んでいた。
「しかし、もったいねぇな。」
男はアデリシアを見て卑猥な笑みを浮かべながらそう言っていた。
「おい、いいかげんにしろ。我々は使命があるんだぞ。」
後ろから別の男の声が聞こえていた。
「固いこと言うなよ。どうせばれっこないよ。こっちがダメなら、もうひとりでも・・・」
男はそう言うとハンナをみていた。
「さがりなさい!」
アデリシアは口をふさいでいた布をずらし、そう叫んでいた。
「おーおー強い強い。いいね。おれ、そういうのいたぶるのすきでさ。そういうのってたいてい内面はもろいんだよね。いきがっているっていうか、必死なのが分かっちゃうんだよね!」
男はますます醜怪さを増していった。持っていた短剣で、アデリシアの胸元を少し切り裂いていた。
アデリシアは必死に恐怖と戦っていた。
「おれ、あんたのこと知ってるぜ、聖女様。あんたは善意でやっていることだってな、迷惑に思う人間もいるってことだ。あんたのせいで、怪我で兵役をま逃れてたやつが徴兵されて死んだのしっているか?あんたのせいで病気が治って施しを受けられなくなった人がいるの知っているか?あんたのせいでそこのお嬢ちゃんはこわいめにあっているのしっているか?」
男はアデリシアを精神的に追い詰めていった。少しずつ短剣はローブを切り裂いていった。
アデリシアは知らなかった。自分が治した人が死地に追いやられたことを。
アデリシアは知らなかった。自分の治療で生活が立ち行かなくなった人のことを。
アデリシアは知っていた。自分のわがままで数多くの人に迷惑をかけていたことを。しかし、それには甘えていた。
その甘えがハンナを危機に陥れていた。
「あーーーーー!!」
絶叫があたりにこだましていた。
そのとき、何かが倒れる音がしていたが、アデリシアには聞こえていなかった。
しかし、その声はアデリシアの心に響いていた。
「おい、おまえ。好き勝手なこと言ってんじゃねえよ!!」
「お前は知ってるのか、アデリシアのおかげで笑顔が戻った家族のことを!」
「お前は知ってるのか、アデリシアの姿を見て自分も頑張ろうと思った人がいることを!」
「お前は知っているのか、アデリシアを支えた人はみんなアデリシアが大好きなことを!」
その声は怒りに満ち溢れていた。
しかし、その声はアデリシアとハンナにとっては優しさにあふれていた。
姿は見えない。しかし、その声はしっかりとアデリシアの心を包んでいた。
「おまえ、俺のアデリシアによくもまあ、好き勝手なこと言ってくれたわな。」
その姿を見た男は馬車から逃げて行った。
しかし何かがそれを許さなかった。
男は短い悲鳴を上げて、その人生に幕を下ろしていた。
「わるい。おそくなったな。」
マルスはそう言って馬車の中をのぞいていた。
「・・・・・・まあ、そのローブは大事にしてろ。それがあると便利だから」
少しの間マルスは固まって、それだけ言うとアデリシアとハンナの拘束をといていた。
「!?」
そんなマルスの様子を見て訝しく思ったアデリシアは、改めて自分の姿を確認して、羞恥心でその身を赤く染めていた。
「まあ、なんだ。とにかく、無事でよかった。」
マルスはそう言って馬車をおりてその扉を閉めていた。
そして、馬車はしずかに動き出していった。
マルスの屋敷についた時、馬車の扉を開けたのはマルスではなかった。
アイオロスと名乗るその執事は、主人は用事ができたので、先に部屋でお休みになるように言付かっていることを説明していた。
「今夜はおそらく主人は戻りますまい。お部屋の方は私が警護いたしますので、ご安心ください。」
そう告げたアイオロスは十分なやる気を見せていた。
「お願いします。」
アデリシアはそう告げて、部屋に入っていた。
アデリシアは正直今マルスに会うのが怖かった。
それほど自分の心は千々に乱れていた。
ハンナはそんなアデリシアを見て、優しく微笑んでいた。
「ヴォルフ、ヴィルトシュヴァインお前たちを連れて行ったのは間違いだった。だから今度はしくじらない。行け!そしてすべてをあぶりだせ。」
マルスは後悔していた。
「アイオロスでもよかったが、お前たちを残しておけばこんなことにはならなかった。デルバーから忠告は受けていたが、まさか本当になるとは・・・・。よっぽど俺が目障りなんだな。」
マルスは今回の騒動が貴族間の醜い争いだと看破していた。
それにアデリシアが巻き込まれていた。
アデリシアの方も目障りだったのかもしれないが、大部分はマルスにある。そう見立てていた。
「すまんな、アデリシア。やつらにその償いはしてもらうからな。」
そう言ってマルスは領内に潜むものを徹底的につぶしていった。
ヴィルトシュヴァインとヴォルフはその情報力と特技を生かして闇討ちにし、マルスはその集中力で危険分子を切り捨てていた。
マルスは極度の集中力で敵味方を瞬時に判別していた。
マルスを見るなり特殊な緊張をするものには死をあたえていた。
粛清は夜明けまで続いていた。
全身に返り血を浴びたマルスの帰りを、アデリシアはその部屋から眺めていた。そして何が行われていたのかを悟っていた。
「マルス・・・」
アデリシアはその言葉に締め付けられる思いを感じていた。
その後アデリシアは朝食を部屋まで運んでもらい、ハンナと二人で時間をつぶしていた。
そのとき、ノックと共に、アイオロスの声が聞こえてきた。
「アデリシア様、マルス様がお見えです。よろしいでしょうか。」
アイオロスはそう言ってマルスの入室をもとめていた。
ハンナはアデリシアを見てそのドアを開けていた。
「アデリシア、昨日は君たちを危険な目に合わせて申し訳ない。」
開口一番マルスはそう謝罪していた。
アイオロスは静かに扉を閉めていった。
「いいえ、マルス様。危ないところを助けていただきありがとうございました。」
アデリシアを見たハンナは、代わりにそうこたえていた。
「ハンナ。君も怖い思いをしたね。申し訳ない。」
アイオロスはそう言って再びハンナに頭を下げていた。
「いいえ。マルス様。もとはと言えば、あの果物をアデリシア様に食べさせたのは私です。思えばおかしなことだったんです。そこで気が付くべきでした。私のせいで、アデリシア様は・・・・・」
そう言ってハンナはそれまでの想いから泣き崩れていた。
「そう、ハンナ。それがわるい。あなたの・・・・」
アデリシアは本気でそう言っているわけではなさそうだったが、あえて言葉に出したようだった。
しかし、それはマルスによってさえぎられていた。
「アデリシア。よすんだ。」
その気迫にのまれて、アデリシアも、ハンナもその場で動けなくなっていた。
「アデリシア、君が本気で言ってないことはわかる。しかし、いったん君の口から出たその言葉はいつまでもハンナの心に突き刺さる。それは決して消えることのない傷跡を残すことになる。」
そうしてマルスは自分の剣を抜き、自らの腕に傷をつけていた。
「なにを!」
あわててアデリシアはマルスの傷を治していた。
「アデリシア。君はこの傷のように治すことに慣れてしまっているんだ。だから、治るということをわかっていない。」
そう言ってマルスは剣を二人に見せていた。
「言葉は剣なんだ。その言葉で相手を守ることにもなるし、相手を傷つけることもできる。」
マルスはゆっくりと剣先をアデリシアに突きつけた。
アデリシアは何事もなく、その剣を見ていた。
「君は僕が君を傷つけないことを知っているから、そうしていられた。」
そこで言葉を区切っていた。
「それと同じなんだよ。ほんの些細な言葉のつもりでも、それが必要な場合であっても、それは聞く人によって変わってくるんだ。言う人によるものじゃない。」
そしてマルスは剣を納めていた。
「そして、剣と違って言葉は一度抜いたが最後、二度と元には戻ってこない。元のさやに収めることはできないんだ。」
アデリシアはマルスの言いたいことが分かってきたようだった。
「ごめんなさい。ハンナ。あなたがあまりにそのことについて悩んでいそうだったから・・・」
アデリシアは申し訳なさそうにうなだれていた。
ハンナはアデリシアに駆け寄り、抱きしめて、その思いを吐露していた。
「いいえ、アデリシア様。私が悪いのです。私が軽率だったんです。アデリシア様が最近楽しそうにしてましたので、私もついつい楽しんでおりました。デルバーさまからくれぐれも頼むと言われておりましたのに・・・」
そうやってハンナは泣き崩れていった。
アデリシアもハンナを支えつつ、自らも泣き始めていた。
マルスは何も言うことなく、窓の方に歩いていき、窓の外を眺めていた。
後ろでなく彼女たちの声を聞き、マルスは自分の中で何かが芽生えていることに戸惑っていた。
「お見苦しいところをお見せしました。」
しばらくして、アデリシアは目を腫らしながら、そうマルスの背中に話しかけていた。
マルスは窓の外を眺めながら、その声にこたえていた。
「今日はいいとして、これからどうする?」
マルスは一切振り返らなかった。
「あなたさえよければ、もう少しここで見ていきたいと思います。あなたともゆっくりとお話ししたいと思いました。」
アデリシアの声は、その決意を表していた。
「そうか・・・ではそうするか。」
そう言ってマルスは足早にアデリシアの部屋を出て行った。
アデリシアとハンナは様子のおかしくなったマルスをただ茫然とみていた。
「どうしたのかしらね。」
アデリシアはハンナに同意を求めていた。しかし、ハンナにもそれはわからないことだった。
「アデリシア様。お迎えに参りました。」
そう言ってデルバーはアデリシアの部屋を訪ねていた。
あれからマルスは何かにつけて用事を作ってアデリシアに会うことを避けていた。
そしてついにデルバーを迎えに来させていた。
「私はまだ戻りません。」
アデリシアは強硬にそう宣言していた。
「アデリシア様。そうわがままを申しますな。これは国王命令でもあります。」
そう言ってデルバーは国王の指令書をアデリシアに見せていた。
「こんなものまで・・・・マルス!なぜ出てこないのです。あなたがいるのはわかっています。なぜ私と会おうとしないのです!」
アデリシアは淑女にあるまじき大声でそう怒鳴っていた。
「アデリシア様。」
デルバーは静かにアデリシアに近づくと、アデリシアにのみ聞こえる声でささやいていた。
「魔剣のことは話しましたよね。そういうことです。今はお引きなさい。マルスはあなたといて楽しかったのでしょう。」
そう言ってデルバーはアデリシアから離れて、微妙な笑みを浮かべていた。
「な!?」
顔を真っ赤にしたアデリシアは、その言葉ですべてを理解していた。
そして無言で手紙をかき、そばにいたアイオロスに託していた。
「アイオロス。必ずマルスに渡しなさい。いいですね。」
その手紙は封もせず、アイオロスに見せるようにして渡されていた。
「ハンナ。帰ります。」
そう告げてデルバーに了解したことをつたえた。
「はい。」
ハンナは笑顔でそう答えていた。
「では、アイオロス。おせわになりましたね。またここに来ますので、この部屋は誰にも使わせないようにマルスに話しておいてください。そして、その手紙は、あなたも読んだその手紙は、必ずマルスの心に届けてくださいね。」
優しく、そして気高く宣言したアデリシアはアイオロスにそう告げていた。
「お待ちしております。行ってらっしゃいませ。」
アイオロスのその言葉にアデリシアは満足そうに頷いていた。
「いってきます。」
そう言い残して、アデリシアはデルバーの転移と共に消えていた。
「マルス様。ということです。」
アイオロスは扉の向こうにいるマルスにそう告げていた。
「アイオロス。お前も余計な気を回さなくてもいいのに・・・・」
姿を現したマルスは、困った顔で、手紙を受け取りにアイオロスに近づいていた。
そして手紙を見て、大いに笑っていた。
「アデリシアらしい。まあいい。お手並み拝見と行こうか。売られた喧嘩はかわないとな。」
楽しそうにマルスはわらっていた。
どうじゃった。
何か感じることは合ったかの?
なに?
手紙の内容が知りたいじゃと・・・・・?
そっちの方が気になるとは・・・まあしかたがないの。
特別に教えてやろう。
その手紙にはの
「あなたのその魔剣には負けません。女を磨いて出直してきます。」
そう書いてあったそうじゃ。
どれ、わしも負けずにたまには一人で帰ろうかの・・・・。




