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日記の中の思い出  作者: 甘夏
第一章 日記の中の思い出
5/6

ー5ー

続きます。ぜひお読みください。

 

 静かに開いた青い扉から顔を覗かせたのは、ユリィや私と同じくらいの歳と思われる、顔立ちの整った少年でした。


 その場を、一瞬の静寂が包みます。

 イルサやムーナさえも、動きを止めて空いた扉を見つめていました。


 しかし次の瞬間、イルサが口を開きました。


『久しぶり。カイト、元気だったか?

『っ、…ああ!』


 カイトと呼ばれた少年は、虚をつかれたように一瞬押し黙ってから、元気に返事を返します。


 そして、イルサの様子と立ち尽くしている私たちをぐるりと見回して一言呟きました。


『…何してるの?』

『『『『『『……………』』』』』』


 そしてあたりは再び静寂に包まれます。



 そりゃあもうネタになるくらいに。


 … … …


 教会の中、空っぽの席にカイトさん(仮)、ムーナ、ルースさんと腰掛けています。

 イルサは、カイトさん(仮)に私たちを簡単に紹介して、「面白いものがあるから、探して持ってくる!」と言って奥の扉の方へ行きました。


 ユリィはあんな事→「いや、面白い事が起きそうな予感しかしないよ。」を言っておいて離れた場所で眠りこけています。

 昨日きちんと寝たんでしょうか…?


 そして、一番前の一番端で座って本を読んでいるのは、これまた同じ歳くらいの少年のようです。


『僕がー、カイトイセルス。それで向こうに居るのがナイダエルシュインっていうんだ、よろしく。イルサの友達さん。』


 ナイダエルシュインっっっ!


『ムーナ、ディウスです…よろしく。』

『ルースイディアンヌです、よろしくお願いします♪』


 カイトさん(仮)の紹介に、緊張した様子のムーナと、なぜかすごく嬉しそうなルースさんが返事を返します。


 二人が次は(カル)の番だと言わんばかりにこちらを見ますが、私はナイダ様ー央都であったらそう呼ぼうと決めていました。ーに夢中で、目を合わせないどころか、話も頭に入って来ませんでした。


 ナイダ様…。まさかこんなところでお会いできるなんて、神様とイルサに感謝です!


 そして、、


『カル?』

『カルファスさん?』


 そんな私の様子に気づいたムーナ、ルースさんが私に声をかけました。

 そしてカイトさん(仮)も不思議そうに私を見つめています。


『す、すみません…。私は、カルファスラデイといいます。』

『そっか、カルちゃんは何歳?』

『かっ、…!』


 、、、

 私は焦りと驚きと困惑を噛み砕いてできる限りにっこり笑います。


『…私は八歳です。あの、』

『やっぱカルちゃんじゃダメかな。』


『あの!…カイトさんとお呼びしてもいいですか?』


 私の発した一言に二人が笑います。


 別にいいじゃありませんか。


 すると考えていたカイトさん(仮)は顔を上げて言いました。


『じゃあ、カイト君で、よろしくね、カルちゃん。ちなみに僕は10歳だよ、カルちゃん背、高いね。』

『は…、、カイト君、どうぞよろしく。』


 10歳の男の子と同じくらいの身長。

 私もユリィも背が高かったんですね。


『カル。』

『おはよう、ユリィ。』

『おっ。おはよう、ユリィ君、だっけ?』


ユリィが起き上がって私に声をかけると、カイト君が反応してユリィに近づきました。


『ああ、ユリィファストです。カルと同じ歳です。よろしく。』

『僕は…』

『あ、大丈夫、聞こえてました。』

『そうか、よろしく。』


どうやらユリィは途中から起きていたようです。


『起きてたのね。』

『ちょっと前から、ごめん。』

『良いのよ。』


『あははっ、なんか夫婦みたいだな。』

『『!?』』


カイト君が笑えない冗談を言ってきます。

なぜ笑えないかは、ユリィもわかっているでしょう。


『俺ら、夫婦予定ですから。』


案の定、ユリィが口を開いた。


『え、えっと。そうなの?』

『はい。私たちの村、子供がそんなにいないし、私たち仲良かったから、成り行きで。』

『ねー、』

『ねぇ。』


カイト君に聞き返されてユリィとうなずき合います。


『これで8歳、8歳だよ、ナイダ!なんの冗談かと思うよな!』


カイト君が急に振り返って遠くにいるナイダ様の名前を呼びます。


私はその名前に反応して、ビクッと肩を震わせました。


ずっと本に没頭しているのかと思ったら、しっかりこちらの会話も聞いていたようです。

すぐに返事が返ってきました。


『なんの冗談だ、カイト。』

『ねえ、ナイダは11にもなって女性に興味を持たれたこともないのに。』

『…るせえっ!お前だって同じだろ。』


カイト君とナイダ様が言い合いを始めます。


ナイダ様はこんなに素敵な方なのに。

カイト君と話していると仲の良さがよく分かるし、なんだ、実物はこんなにカッコいいじゃないですか。

それに、11歳だったんですね。


『…様は。…イダ様は、』

『え?カルちゃん?』


『ナイダ様は素敵な方よ、とっても魅力的だわ!』


『お、お前は…』


私は言ってしまった言葉に恥じる暇もなく、ナイダ様が本を置いて近づいてきます。


するとユリィがとてもすっきりした顔で手を打ちました。


『そうか!思い出した!ナイダってあれか、ナイダエルシュインだっけ、カルの憧れの人だよな。』

『ユリィ!?』


私が大声をあげますが、遅かったようです。


ナイダ様とカイトはぽかーんとした顔で私を見つめています。


やめて、見ないで。今回ばかりは恥ずかしくてたまらないっ。


『あの、』

『はい…』

『憧れの人とか、自覚ないけど、俺のことはナイダでいいよ。カル、だっけ?』


そう言うとナイダ様は、様とか恥ずかしいし。と頬をかいていました。


『か、か、か、カルファスラデイと言います。し、し、失礼ながら、ナイダ様と呼ばせていただきたいと思っております!』


ナイダ様は今度こそ面食らった様子でしたが、代わりにカイト君が口を開きました。


『カルちゃんさ、誰だと思って話してるの?ナイダそんなに凄い人じゃないけど。』


その質問に私は胸を張って答えます。


『私の初めての憧れの男性です』

 

言いながら微笑むと、

ナイダ様の頬が赤く染まって見えたのは、天井から照らされる灯のせいでしょうか。

お読みいただきありがとうございます。

次回、ー6ー面白いものってなんでしょう?

ー6ーもよろしくおねがいします。

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