ー4ー(カルの日記)
央都=おうと
央国=おうこく です。
中央の都、中央の国を省略した形でそうなっています。普通に都会と王国と考えてくださって結構です。
まだ少しキャラが不安定ですが、これから頑張ります…。
よろしければお読みください!
*十六*
ときめきって無いものかしら、
私の住んでいる村は小さくて、近所で近い歳の子供もユリィだけだったし。
新しい出会いって、この村にいたらありそうもないわよね。
あーあー、刺激のない毎日は少し飽きてしまったわ。
いつも楽しみなのはルースさんたちから教えてもらうことくらい。
誰か移住でもして来ないかしら、同い年の女の子がいいわ。
*十七*
今日もユリィと一緒にルースさんたちのところにいったわ。
今日はこの国の地理と央国王家についてのお話を沢山聞かせてもらったんだけど、
知らないことがありすぎてとても楽しかった!
なかでも、王国の訓練兵の資料を見せてもらった時に見つけた
ナイダエルシュインという男の子になぜか心を惹かれたわ。
ユリィも楽しそうで、また明日、一緒に行こうという約束をした。
*二十二*
私は昼寝なんてしてないわ!
ユリィは一緒にいればいるほど子供っぽく見えてくる
のは、気のせいじゃないわよね?
今日はなぜかルースさん、ムーナ、イルサ、それにユリィと私で
央都にくることになったの。
ここには中心に王宮もあるのよ、
ナイダエルシュイン…さん(?)に会えるかしら。
… … …
『何を書いているの?カル。』
『え?ああ、これは日記みたいなものよ。今日の分を書いていたの。』
イルサに誘導されて、今みんなで乗っている馬車の中、ユリィが私の手元を覗き込んでそう言ったので、中を見られないように中断して日記を閉じました。
『早くないのか?今日はまだ始まったばかりなんだぞ。』
『ええ、そうね。また後で書くわ。』
私は口を開きかけたユリィを押しのけてそう言ったイルサに微笑むと、熱心に窓の外を眺めているルースさんとムーナに視線を移します。
ムーナは珍しいのかどうかわかりませんが、ルースさんはこの近くで生まれ育ったと聞いています。
珍しいことなど無いのでは?
そんな私の疑問は、振り向いてこちらを見たルースさんによってあっけなく解決しました。
『ここの景色見るの何年ぶりかしらね、私が住んでいた頃と、そうかわっていなくてほっとしました。』
ああ、そうか。懐かしい景色だったんですね。
『そうなんだ!あ、あれも綺麗だな。』
気がつけば、イルサもムーナの隣で景色に見入っていました。
そしてその背中では、ポニーテールに整えられた、綺麗な白髪が揺れています。
結ったのはルースさん。
ユリィは、と後ろに目線を持っていくと、まだ旅の始まりだというのに、ぐっすり眠っていました。
…旅というのは大げさでしょうか。
そっとユリィの隣に移動すると、私もこの街の景色を楽しむことにしました。
… … …
全体的に青系の色で装飾された央都の中心部の建物は、それはそれは綺麗で、ルースさん以外の私たちは、瞬きするのも忘れて立ち尽くしていました。
立ち尽くし二回目です。
『はっ、皆、こっち!』
一足先に気を取り直したイルサが、ムーナの手を引いて歩き出したので、私たちもあわててそれに続きます。
まだ昼間だというのに、街の所々で街灯が淡い色で光っています。
その光がよく磨かれた建物の壁に反射して、キラキラと華やかな都を演出しています。
そういえば、いつか誰かに、央都が《青の都》と呼ばれていると聞いたことがありました。
今となってはそれ以上に似合う言葉がないくらいに納得できます。
そんな街中をユリィやルースさんと楽しく話しながら進んでいきます。
イルサたちは、先にどんどん歩いていてかなり間が空いていますが、イルサの白髪に少なからず注目する人がいるでしょう。
そういった意味では少し間があいていたほうが、注目を浴びずに済んで都合が良いのです。
ユリィやルースさんは、そんなことを気にしている様子はありませんが。
しばらく歩いて行くと、目の前に6階建ての建物くらいの高さで、青い薔薇のアーチがかかっているのが見えました。
『ねえ、カル。あの薔薇、生きてるのかな?』
『…そうね、生きているとしたらあんなに高いところまで成長するのかしら。』
少し黙っていたユリィが私の肩をつつき素朴な疑問を投げかけてきたので、返事をしようと口を開きましたが、曖昧な言葉しか出てきまてんでした。
そんな会話をきいて、ルースさんが私たちの間に割り込んできます。
『ユリィ君、いい質問よ、カルファスちゃんも、良いとこに気づきましたね。…あれは、全部造りものなんです、私も初めて知った時驚きましたけどね〜。』
『そうなんですか。やっぱりそんなに高くは成長しないですよね。』
『へー、すごいな。』
近づいてみるとわかりましたが、一つ一つの花がきらきらと光を反射しています。
これもこの街の演出なんですね、と本当に感心した出来事でした。
… … …
イルサが立ち止まります。
『ここは…教会かしら。』
少し賑わいが減ったと思われる街の一角に、例によって青調の色で造られた教会らしき建物がありました。
『そう!この教会は央国王の親族も通っている教会で…』
『ちょっと待って。なんでそんな場違いなとこに連れてくんのよ。』
意気揚々と説明を始めたイルサに、ムーナだけでなく、ルースさんでさえ、表情をこわばらせます。
『おもしろいものがあるっていったじゃないか〜。』
『面白くないよ!こわいよ!』
『えぇぇぇぇええ…』
ムーナに体を揺すられてイルサは棒読みの台詞を返します。
その時。
ぎぃー、などという音さえ立てずに、教会の扉が静かに開きます。
真っ先に気づいた私は、少なからず緊張を覚え、そばにいたユリィに半ば隠れるように寄りかかりました。
『カル?、、あっ。』
『ユリィ、嫌な予感がしますか…?』
『いや、面白いことが起きそうな予感しかしないよ。』
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
少し名前だけ出てきた人がいましたがその人も登場する予定です♫
ー5ーもよろしくおねがいします