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日記の中の思い出  作者: 甘夏
第一章 日記の中の思い出
2/6

ー2ー

お待たせしました、続きです!

まだまだ不安定なお話ですが、どうぞお読みください。

『…寝てたわ』


 そう呟くと、まるで私たちなど見えていないかのようにユリィの言葉を無視して、ぐっと両手で伸びをしました。


『あの、大丈夫…』

『あなたは何方ですか!』


 ユリィが遠慮がちに発した言葉を遮って私はそう問います。


 ユリィは驚いて私を抑えようとしますが無視して続けます。


『貴女は何者なのですか!何故ここに居るのですか、他の者たちは如何して居ないのですか!』


 叩きつけるように叫んだ後は急速に考えが冷えていき、何も言葉を発することができないままただ相手の顔を見つめました。


『あんた…たち。居たの?』


 私の声が届いてか、やっと振り向いてこちらを見ると、驚きを隠せない表情に短く切りそろえられた髪が揺れます。


『……カル』


 ユリィは何か喋ろうと口を開いた末に、私の名前を呟いて私の方に視線を移します。


『…ユリィ、この人を知っている?』

『い、いや』


 すると、気まずい雰囲気を感じ取ってか否か、明るい声が響きます。


『…。いやぁ、ごめんごめん、びっくりしたよね。私はムーナディウス。一応、ここの管理してる人だよ。あ、ムーナって呼んで。』


 これまでの空気を吹っ切るように、ムーナは、軽く手を振ると、片目をつぶってにっこり笑いました。


『…さっきの音はどうして、、』

『いやね、ストレス発散で壁どーんて蹴ったら本棚が倒れちゃったのよー。』

『大丈夫だったんですか?』

『大丈夫大丈夫〜。私運動するとすぐ疲れて眠っちゃうんだよね、だから気にしないで。』

『眠っちゃう…?』

『体力がないってこと…ですか?』


 ユリィが遠慮がちに口を開くと次から次へと疑問符のつく言葉が口から飛び出します。


『ユリィ。』

『カル?』


 自己紹介をしていなかったことに気がついた私はユリィを止めると耳元に囁き声で伝えました。


『ああ、そうだったな。ムーナさん、俺はユリィといいます。それでこっちが…んんっ!』

『ユリィファストとカルファスラデイです。』


 いきなり略称で紹介しようとするユリィの口をおさえてかわりに私が名を告げます。




『…君たち、、そういうのはいいからさ。それより答えて欲しいんだけど、なんでここにいるのか…とか。』


 すると、ムーナはほんのすこしだけ間を空けてそう言います。

 無邪気に笑っていると幼い印象を持ちますが、この時はとっても大人びた顔をしていました。


『えっと、俺たちここ結構来てるんですけど』

『この部屋に?』

『い、いやあの、この建物と言うか…それでその、今日は、、』


 さらに鋭くなったムーナの視線にユリィは何度も噛みながら今までの経緯を説明します。


『今日は昼寝してたカル


 バシッと景気のいい音が空気を震わせます。


 っっっっっtてええええぇーーーーーー』


 私の手は、ユリィの頬の上、しっかりと害虫をとらえていました。

 別に、叩きたくて呼び寄せたわけではありません。


『カル、何すんのさ!』

『害虫を駆除してあげただけだわ。それともう一つ。だ れ が お昼寝していたのかしら?』

『っ、、俺かな…。』

『そうよね。』


 私は、叩かれて悲鳴を上げるユリィに冷たく微笑みます。

 それだけは禁句よ、と伝える様に。


『この部屋のことは知らなかった?』

『奥に部屋があるってことは聞いたことがありました。でもなんの部屋かは…』

『そう。ならいい。それと、地下室には絶対に言っちゃダメだからね!』

『…地下室には何があるのですか?』

『カル、』


 ムーナの言葉をきいて、何か秘密があると悟った私は静かに聞き返します。


 そんな私をユリィが不安げに見つめますが、自分も同じことを思ったのか、すぐに視線をムーナに向けました。


 ムーナは困ったように小さく微笑むと、静かに語り始めました。


『元々ここは小さな建物だった、でも、そこが地下室とつながっていたの…』


 … … …

『げほっげほ、なんでこここんなにほこりっぽい、げほっ。』

『大丈夫ですか?』

『そうね。ほこりっぽいにもほどがあるわ。』


 埃にむせかえるムーナの背中をユリィが優しく撫でています。

 本当に昔から気遣い上手なんですから。


 ふっと微笑むと急に眩しい光が目に入ります。


『あれは…』

『見えたね。』

『あれが…?』


 光の差し込む元は長い螺旋階段の下、微かに開いた扉のなかでした。


 あれから、ムーナに地下室の魔女の話を聞きました。


 地下室には、ここの管理者たちの間で密かに《魔女》と呼ばれる人が居たそうです。魔法を使うわけでは無いでしょうが、いつからか恐れられ、誰も地下室に寄り付かなくなったと聞きました。


 私たちからしたら、そんな話では好奇心しか湧かないものです。


 そんな訳で、嫌がるムーナに付き合わせて、地下につながる螺旋階段を降りていったのです。


 螺旋階段の一番下、微かに光の漏れるその場所は、予想と反し、どちらかというと神秘的、幻想的な雰囲気を感じさせます。


 ムーナは、少し驚きと恐れを混ぜ合わせたような複雑な表情をしていましたが、ユリィはいつも通り楽しそうに目を輝かせていました。


『あけるよ?カル。』

『ええ、…いいかしら?』


 やがて扉の目の前まで降りてくると、押し殺した声でユリィが私に囁きます。


 私も同じく押し殺した声でそう返し、確認の為ムーナの方を振り返ります。


『いいよ、言っとくけど、私は知らないからね!』

『ちょっと、ムーナさんっ、』


 声が大きい、など、色々と言いたくなる気持ちもわかりますが、今のはユリィも同じようなものでしたよ。


『いい?開けるわよ。』

『ああ。』

『せーの!』


 ぎぃーー、と音を立てて錆び付いた扉が開きます。


 開け放たれた部屋に並ぶのはどれも見たこともない、硝子のように色の透き通った機械ばかりです。

 そしてーーー


『あんたら、誰だ』


 部屋の奥、数々の機械に囲まれて回転椅子に座った少女が、ゆっくりとこちらに体を向けながら、やけに透き通る声でそう言いました。

お読みいただきありがとうございました。

いよいよ少し、物語が動く予定です。

次回ー3ーもよろしくお願いします♩♬


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