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日記の中の思い出  作者: 甘夏
第一章 日記の中の思い出
1/6

ー1ー

初めて投稿します。

学生なので投稿のペースがなかなか定まらないとは思いますが、読んでくださると嬉しいです!

 

 ・・・・・・・・

  ぽたぽたと雫の落ちる音。

  私は読んでいた本から顔を上げた。


  あっという間に降り出した雨は、たちまち窓硝子を雨水で覆った。


 憂鬱ねーー 。


  将来絶対役に立つと勧められてお母様に借りた本は長ったらしい説明や訳のわからない内容の文章が多くて、頁をめくるたびに溜息が漏れる。


  そんな時降り出した雨にたちまち気を取られ、丁寧に栞を挟んだ本は揺り椅子の上に置かせてもらった。


  窓枠に身を乗り出して硝子に当たって弾ける雨粒を眺めていると、ふと窓際に置かれた一冊の本が目に留まった。


  お母様の書斎に置かれている本は全て本棚に収められているから、兄様かお父様のものかしら。


  手に取ってみると、やけに古く、表紙の色が日焼けで所々薄くなっている。

 そして、それはどうやら誰かの日記らしかった。


  人の日記を読むのは気が引けなくもないが、私は色褪せた頁をめくって、最初の文に眼を走らせていた。


  驚くことに、日記を書いているのは8歳の少女だった。


 でも、お母様とはどこか違う。

 ここに日記があるというのに、私以外に幼い少女などいただろうか。


 そんなことを思いながら、私は少女の日記を読み進めていった。



  気がつくと暗闇の中にいた。

 少し重く感じる体を持ち上げてみると、そこが月明かりにつくられた影だと気づく。


  先程まで側にいた大きな窓から照らされた範囲だけが四角く浮かび上がっている。


  私は、夢を見ていた。

 いつのまにか眠ってしまったのは明らかだ。

 日記の少女の夢。


 夢の中で私は、その少女に成っていた。


 *-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

  私の名前はカルファスラデイ。

 今年9歳になる女の子です。


  眼がさめると、近所に住んでる男の子が私の顔を覗き込んでいました。

  彼の名前はユリィファスト。


  私が寝てしまった場所は2人のお気に入りの大きな栗の木の下でした。

  彼のお姉さんが育てているその木は、背は私の背の倍くらいですが、枝が広がっていてす ごく大きく感じます。


  彼は眼を覚ました私に気がつくと、手を取ってそっと起こしてくれました。


『ありがとう』

『ああ。お早う、カル。』

『ユリィ、お早う。どれくらい眠っていたかしら。』

『さぁね、半刻くらいかな。』

『…そう、結構眠っていたのね。』


  そう言って考え込んでいた私の手を軽く引くと、ユリィは明るく微笑みました。


『行こうか。』


  私は、包み込むような優しい空気を吸い込むと、その言葉に返しました。


『そうね、行きましょうか。』


 … … …

  ユリィに手を引かれてたどり着いたのは、この村にたった一つの子供の学び舎です。


  通っている子は少ないけれど、好きな時に好きなことを学べるこの場所は、私も、ユリィも昔から好きでした。


  小屋を繋ぎ合わせた形の建物は、この小さな村では教会の次に大きな場所です。


  沢山の書物に囲まれて、都から来た学者さんに教えてもらうことは、考えたこともないことばかりで、暇を持て余している私たちからしたら、とても楽しいものでした。


『ユリィ?今日はルースさん達は居ないのかしら?』

『そんなはずはないよ。別の部屋にいるんじゃないか。』


  引き戸を開けた静けさに私がつぶやくとユリィがすかさず言葉を返します。


『…そうよね。』


  ルースさんは、この場所で勉強を教えてくれる大人の一人で、前から私たちと仲良くしてくれていた人です。


  私たちが行くといつも笑顔で迎えてくれる、優しい男の人でした。


『とりあえず、探してみようか。他の人たちも。』

『…ええ』


  ユリィの言葉で私たちは部屋の奥へと進んでいきました。


 … … …

  そろそろかき集めてきた希望も薄くなるというところ、不意に後ろで物音が聞こえます。


『…。カル、誰か居た?』

『!…ユリィ』

『ああ、居ないみたいだね。』


  驚いて固まっていた私に声をかけたのはユリィでした。


  村で二番目に広いということもあり、最初の三部屋ほどでも、回るのにかなり時間がかかった上、呼んでも返事はなく、妙な不安にかられた私たちは手分けして探すことにしたのです。


『それにしても、これだけ探しても居ないって事は、正午過ぎても誰もこないから帰っちゃったんじゃ、』

『…その可能性も無いとは言え無いけれど、今までそんな事あったかしら。』


  私は、気を取り直してユリィと向き合います。

  ユリィの言いたい事は解りますが、今日は居ないんだと、諦めて帰ってしまうのは嫌ですから。


  ユリィはそっと息を吐くと、苦笑いをしながら私の手を取りました。


『行くぞ、あとは一番奥の部屋と、地下室だけだからな。』

『ええ、…不思議だと思わない?』

『何が』


  歩き出した長い廊下は、別の建物へ移動する通路のようにただただ細いみちが続きます。


『…この建物の造りが、よ。』


  一番奥の部屋は、まるで邸の離れのように、地下室は長く暗い階段を降りた先に。この建物から隔離されたような場所にあります。


『ああ…』


 隔離された空間に続く道を、私とユリィは無言で歩きます。


 … … …

  私とユリィは、"一番奥の部屋"の扉を前にして、立ち止まっていました。


 扉の取手の部分には鍵穴が一つ。


『あれ、鍵がかかってたりするのかしら。』

『…そう、考えるのが普通だろうな。』


  ユリィは、こんなところにある部屋なら…。と小声で続けます。


『とりあえずさ、』

『ユリィ?』


  ユリィは扉に近づくと、そっと握った手の甲で、コンコン、とノックの音を響かせます。


  しかし、静けさにこだまするばかりで、返事が帰る様子はありません。


  扉ぎりぎりに耳を近づけていたユリィは、扉から離れて私の元へ戻ってくると言いました。


『…ーーなんか怖くないか?俺ちょっと寒気がしてきたんだけど。』


  言われてみればその通りです。

 誰もいなくて暗い建物の中を子供二人で歩き回っているのですから。


  言われなくても解っています。

 私なんてさっきからずっと怯えてばっかりです。


『、、確かに少し恐ろしくなってきたわ。何もなければいいのだけど。』


 その時です。

 奥の部屋のドアの向こうから、何かが倒れるような音が二回ほど続けて聞こえます。


『!?』

『カル…!』


  互の目を見合って、反射的に扉に手をかけます。

  扉は、ガチャ、という音が響いて、あっさり開きました。


『…開いたわ。』

『…開いてたね。』


  しばらく開いた事実にとりつかれていた私たちですが、部屋の中で倒れこむ女の人が目に入った瞬間にそんな空気も消し飛びました。


『カル!あれ!』

『女の人…!』


 部屋の奥に一人、倒れた本棚に囲まれて女の人が横たわっていました。

 幸い、下敷きにはなっていないので怪我はしていないようですが、、、


  『あの、大丈夫ですか?お姉さん。』


  ユリィが駆け寄って肩を揺すります。

 ユリィは昔から、優しくて心配性なんですから。


 私も近づいて様子を見ると、その人は急に、ユリィにぶつかるほどの勢いで起き上がりました。


『わっ、、あ…大丈夫ですか?』

『ユリィ。』


 避けるようにのけぞって倒れそうになったユリィを支えます。


 女の人は、しばらく無言で宙を見つめた後、不意にこちらを向いて言葉を発しました。


『ああ…寝てたわ。』

『『!…?』』


お読みいただき有難うございます。

現状が理解できない人はとりあえず

「私の名前は〜」のところからお楽しみください。

セリフが『』なのに深い理由はありません。

気にしないでください。

あとがきもスルーしてくれて結構です。


ー2ーへ続きます♬

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