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24.首都での生活

 そんな生活が始まって早2週間。

 少しずつこの異世界での生活にも慣れて来ていたロシェルは、元々の面倒見の良い人柄と明るく元気で熱血漢な性格で段々とルリスウェン公国の住民達からの信頼を得て来ていた。

 城での生活も、自国のガラダイン王国軍の寮での生活とさほど変わらない為に意外と早く順応する事が出来ていた。

「ふぅー……」

 そんな公国の首都ペルドロッグの住民達からの色々な依頼を一息つけるタイミングまでこなし終えたロシェルは、最後に花壇の整備をした商店から礼として貰ったジュースのビンをグイッと煽りながら噴水広場の噴水に腰掛けて思考を巡らせる。

(あー、後で報告書を作って貰う為に定期報告に行かなきゃな)


 この世界の文字が何故か読めるのはあの爆発事件が最後に待ち構えていた、この世界での最初の依頼の依頼書に目を通した時に気がついたのであるが、文字は読めても字そのものは書けない事にも気がついたので、どうしようかと騎士団長とコラードとロシェルの3人で話し合った結果が、住民達からのサインを貰う事だった。

 頼まれた依頼を1つ終えるごとに、城で毎朝渡される依頼書の束のサイン欄に依頼者からのサインを貰う。そしてある程度区切りの良い所まで依頼を終えたら定期報告と言う形で近くの騎士団の詰め所にその依頼書を「報告書」として届けに行くと言う流れになっていた。

 こうする事で依頼の完了報告が出来ると同時に、ロシェルの動向を監視出来ると言う意味もあったからだ。


 そんなロシェルの事は騎士団からお触れが出されたせいもあってか、最初こそ住民達は訝しげな視線を彼に向けていたものの、これでも軍人としての教育をしっかり受けて来ているロシェルが真面目に依頼をこなして行く事によって今では住民達からの信頼を少しずつではあるが得る事が出来ていた。

 だが、肝心の爆発事件に関しての情報は日々の依頼をこなすのにいっぱいいっぱいで、なかなか掴む事が出来ない。

(このままじゃ時間だけが過ぎちまうぜ)

 何時まで経ってもこれではエスヴァリーク帝国へ向かう事が出来ないと考えたロシェルは、何かしらの手掛かりを掴む事が出来るかも知れないかと思って次の日の依頼の後にもう1度あの爆発事件のあった屋敷へと向かう事にした。

 騎士団に見張られていると言っても、別に24時間365日続く訳では無いだろうと読んでの事である。


 そんな計画を立てた次の日の夕方、爆発事件の館の近くを通り掛かる依頼を最後に選んで事件現場までやって来たロシェルは、そのまま周囲の様子を窺いつつ館の燃え跡から何かの手掛かりを掴む為に踏み込む。

(と言っても、余り現場を荒らすとまずいよなあ……)

 初めてここに来た時に見上げた、かつては栄華の象徴だったであろうあの不気味な雰囲気が漂っていた大きな館は、今では土台の骨組みまで焼かれてしまった黒焦げの残骸になってしまっていた。

 あの爆発事件がいかに凄まじいものであったのかを一目見ただけでも分かる位に物語っているその館の残骸の近くまで行き、あの時に何があったかを思い返してみる。

(確かあの時……俺はあの女の人に荷物を届けてサインを貰って、そしてその後にすぐあの小包が爆発したんだったな)

 本当にそれだけだ。それ以外に怪しい所は何も無い、とロシェルは思い返して腕を組んで考える。

(ギルドに調べに行くか? いや……それは俺が怪しまれるかな。うーん……)


 一体如何すれば良いのだろうか? と考え込むロシェルだが、ここで1つの案が浮かんだ。

(あ、そうか……この都の住人に聞けば良いのか。こんなにでっかい館の住人なら、何かしらの情報をみんな知っている筈だからな)

 この生活が始まってすぐの頃、ロシェルは情報収集の名目で騎士団の人間にこの館の事を聞いてみたのだがそれはもう少し情報が集まってから教えるから、それまでは機密事項だと言う事で教えて貰えなかったのだ。

 だったら自分で出来る限りの情報収集をすれば良いじゃないかと考えて行動する事に決める。

(それに、余り事件現場でウロウロしてたらそれこそ騎士団の連中に目を付けられかねねーからなー)

 ただでさえ、あの爆発事件の発端になった小包を届けたのが自分である事が自分以外にも騎士団の連中や住民達にまで分かっている以上はこの辺りをウロウロして目立つ訳にもいかないであろう。


(とりあえず今日は引き上げるとしよう。結果オーライって訳じゃねーけど、俺がこの館の爆発事件に関係している人間だって言う事は騎士団のお触れで知れ渡っている事でもあるからな。だからこそ、情報を聞き出すのであれば案外逆にやりやすいかも知れねーぞ……?)

 そうと決まれば、さっさと今日の分の依頼内容を達成した事を記した報告書を騎士団へと届けて城の自分にあてがわれた部屋へと戻る為にロシェルは歩き出す。自分の戦いはまだ始まったばかりなんだし、早くエスヴァリーク帝国に行きたいと言うそんな気持ちを抑えて、まずはしっかりとこの事件を解決してからにしようと考えながら足を城の方へと向けるのであった。

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