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22.尋問

 コンコンと部屋のドアがノックされて、そのドアの向こうから声が聞こえる。

「団長、いらっしゃいますか?」

「何だ?」

「お客様がお見えです。ここにいらっしゃる異世界からの方にお会いしたいと」

「え?」

 異世界からロシェルが来たと知っているのはこの城の中の人間位しか居ない筈なので、騎士団長はロシェルと顔を見合わせる。

「どうする?」

「会うだけ会ってみましょうか?」

「貴様が良いなら……分かった、通せ」


 だが、団長の承諾の声にドアの向こうから姿を現したのは何と……。

「何時まで経っても君が現れないから、どうしたのかと思ってたら……」

「こ、コラードさん!?」

 騎士団長やその部下達が探し回っていた、自称ベテランの傭兵だと言っていたコラード・モラッティその人だったのだ。

「えっ、ど、どうして……?」

「どうしてって……君が何時までも噴水広場に来ないからどうしたのかと思って配達先に向かったら、大火事で館が燃えてたんだ。そして周りの人達から君が騎士団に連行されたって聞いて、それで何度も面会を頼み込んでようやく会う事が出来た」


 一体何をやらかしたらそうなるんだ? とベテランの傭兵が異世界の海軍軍人に説明を求めたが、代わりに騎士団長がそれを説明すると言い出した。

 貴様には聞きたい事もあるからな、と言ってから騎士団長はコラードを連れて来た部下の騎士団員に他の騎士団員や記録官等を呼びに行かせ、ロシェルとコラードには部屋を移動する様に命じる。

「尋問室に場所を移す。こんな客室でしかも少人数で話すだけでは、言った言わないの記憶違いが出る可能性があるからな。だから記録官を呼んでしっかりと尋問をした方が良いだろう」


 貴様等2人が口裏を合わせないとも限らんからな、と最後に付け足されたその騎士団長のセリフにロシェルはムッとして1歩踏み出そうとする。

「おいっ……」

 だが前に進もうとしたそのロシェルの身体の前に、バッとコラードが左腕を突き出して静止する。

「気にするな」

「でもっ!」

「言わせておけば良い。どうせこっちの思惑等知った事では無いし、人の心の中まで読める訳では無いのだからな」

 そうコラードがロシェルをなだめつつコラードはこの城の尋問室へと初めて、そしてロシェルは2度目の移動となったのであった。


「そんな筈は無い。ギルドからの依頼に関してはきちんと国から認定を受けた正規の依頼である筈だし、荷物は最初から3つだった」

 疑うならギルドの人間にも聞き込みをもう1度してみれば良いだろう、とコラードはそう言って騎士団長相手にも1歩も引かない態度で尋問に臨んでいた。

 尋問室へと移動したロシェルとコラードの2人は隣同士で座らせられ、記録官や騎士団員達が見守っている中での尋問がスタートした。

 コラードに質問する時には、ここでロシェルがされた質問と全く同じ質問をする事にしておいたのであるが当然騎士団長はその質問内容をコラードには見せずに実行。その一方で記録官の手元にはロシェルに質問した時の調書を持って来て貰い、コラードとロシェルが事前に口裏を合わせていないかどうかをチェックしながら記録していたのだ。


 ロシェルがここに連れて来られてきた時には1人だったし、コラードがこの城にやって来た時の口調からしてみれば彼が嘘をついている様には見えなかったので騎士団長はたんたんと質問をしていったのだが、それ以前にロシェルとコラードの間で「もし騎士団員に捕まったら如何する?」等と言う打ち合わせがされている可能性も考えられない訳では無いと思っていた。

 そこで騎士団長はロシェルにしていない質問をする事でその真偽を確かめようと思って実際に質問してみた所、これはどうやら成功したらしい。

「ギルドに登録している貴様なら疑問に思う筈だぞ、コラード。ギルドからの依頼の時は配達する予定の荷物が2つだったのに、この異世界からの来訪者には何故3つの配達を頼んだ?」

 その質問に対してのコラードの回答が、ギルドに聞いてみれば良いだろうと言うものに繋がるのであるが当然騎士団長は納得出来そうに無かった。


 それでもここまで自信たっぷりにそう言えるのであれば、やはり部下をもう1度ギルドに派遣して聞き込みをするしか無いか……と騎士団長が考えていたその時、尋問室に1人の男が入って来た。

「……尋問の対象が増えた様だな」

「あ、大公!」

 何と、またもや大公が尋問室にわざわざ足を運んで来た。その様子を見て、余計なお世話かと思いつつもロシェルは心の中で呟く。

(この人、何回も何回も尋問の場所に来るけどそんなに時間が余ってるのか? それともよっぽどこの事件が気になるのか? 大公と言う立場であれば、いちいちこんな事件に関わっている程に暇じゃないだろうし大公ならではの国を取り纏める為の仕事だってたっぷりあるだろうに……)

 熱血な性格であるが故に、今回の事件の事に関しても相当怒り心頭だった様子はロシェルの体験でも分かっていたのであるが、そんな大公の口からまたもや意外な言葉がこの後に出て来るのであった。

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