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21.消えたコラード

「そのコラードと言う人物を噴水広場まで探しに行く様に」

「はっ!」

 騎士団長が大公にそう命じられて部屋を出て行き、直々に大公がロシェルを再び謁見の間へと連れて行く事にする。

 今度は見張りの騎士団員が数人と言う状況下の中で、最初にこの謁見の間に来た時とは違ってもう少し近い距離で、そして何と椅子が2つ用意されて謁見の間の中央で向かい合う形でロシェルと大公が会話をする形になったのだ。


「……ふうむ。となれば、そのコラードと言う男がそなたに仕事を持って来たと言う訳か」

 改めてロシェルから事のあらましを一通り聞いた大公が考え込む様子を見せた。

 そして、非常に言い難そうな様子で意を決したかの様に大公は口を開く。

「気を悪くしたら済まないが……その男、怪しい感じがするぞ」

「……」

 大公のその予想にロシェルは何も言う事が出来なかった。

 考えてみればまだ出会って3日も経っていない訳だし、傭兵だと名乗っているのは実は偽りの肩書きで本当のコラードと言う男はまた別の顔を持っている可能性も十分に考えられる事だな……とロシェルは思う。

「確かに俺はあの人に出会ってまだ全然時間が経っていないですけど、俺の命を救ってくれた人です。でも……」


 そこでロシェルは一旦言葉を切って唇を噛み締める。

「そう言われると疑問が残るポイントは無いとも言えませんね……。勿論、命の恩人ですから本当の自分の気持ちとしては疑いたくは無いですよ」

「うむ、そなたの気持ちも分からない訳でも無いな。だが、そのコラードと言う男の行方はまだ分かっていない。噴水広場で待ち合わせをしていたのだろう?」

 それならばまだそこに居る可能性もあるだろうと大公が予想を立てる。

「そうですね。コラードさんにあの依頼の事を聞くのがやはり早いでしょうし」

 だったらこちらで少し待たせて貰いますと断りを入れて、ロシェルは城の中でこの事件の発端になったあの中年の傭兵を待たせて貰う事になった。


 しかし。

「居なかった?」

 騎士団長が城に戻って来て、客室で待っていたロシェルの元とやって来て開口1番にそう告げた。

 ロシェルからコラードの容姿の特徴を聞いた騎士団長が言うには、噴水広場に騎士団長とその部下の騎士団員達が向かったまでは良かったのだがコラードの姿は何処にも見当たらなかったと言う。

 勿論そのまま帰って来る訳では無く噴水広場の周辺を少し探し回ってみたり、それからギルドにも向かってみたりしてコラードの情報を集めてみたのだが、ここで非常に気になる話が飛び込んで来たと言う。

「……ギルドからの依頼で、荷物は本当は2つしか無かった?」

 と言う事はあの3件目の依頼と言うのはどう言う事なのだろうか?

 ロシェルの頭の中には物凄く疑問の念が浮かび上がって来た。

「あの荷物を持って来たのはコラードさんでしたし、それを考えると……」

「ますます怪しいな」

 若い騎士団長も大公と同じ予想を隠し切れない。


 とにかく、今はコラードの行方を探して事の真相を聞き出さない事には話が進まないとロシェルも騎士団長も、そして大公も同じ事を思っているのではあるが、かと言ってロシェルは重要参考人としてこの城に連れて来られてしまった以上はこの城から出して貰うと言う事にはならないらしい。

「うーん、俺も一緒に探した方が良いと思うんですけど」

 せめて騎士団の見張りをつけてでも良いから一緒にコラードを探した方が良いんじゃないか? その方が効率も良いと思うんですけどどうでしょう? とロシェルが騎士団長に問い掛けるが騎士団長は首を横に振った。

「却下だ。まだ貴様の容疑が完璧に晴れた訳では無い以上、この城から出る事は許さない」

 そう、あの爆発事件でのロシェルにかかっている容疑は完全に晴れた訳では無い。そう考えてみれば騎士団長の言う事も最もだと心の中でロシェルは同調したが、それでもコラードの容姿を覚えている以上はやはり一緒に探した方が見つけやすいと思うんだけどと思わざるを得ないので納得は出来そうに無かった。


 そこでこんな質問をロシェルが騎士団長に投げ掛けてみる。

「あれですか、ギルドに登録している情報って世界中の何処のギルドでも見られる様になっているんですか?」

「ああそうだが。もしかして、その情報を世界中のギルドに回してくれとでも?」

「そうですそうです。そうした方が目撃情報とかも集まりやすいと思いますよ」

 地球ではインターネットの発達によって、ハイテクノロジーを駆使した捜査方法が取られるようになっている。この世界でも世界中にギルドがあるのであればそうした捜査方法が取れるんじゃないかと考えてのロシェルの提案だったが、その提案はまたしても騎士団長から却下される事になってしまうのであった。

「それも駄目だ。我が国の首都で爆発事件が起こった事を大々的に知らせる事になれば、いたずらに民の不安を煽りかねない。だからこの件に関しては内密に調べるしか無いのだ」

 じゃあ俺はこのまま待つしか無いのか……と思うロシェルの前に、またしても意外な人物が現れたのはその会話が終了してすぐの事だった。

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