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20.生体反応

 そんな様子のロシェルを見て、騎士団長が戸惑いの色を含んだ声で口を開いた。

「貴様の身体からは、今の話の通り生体反応が感じられない。こちらとしても驚いている。これは一体どう言う魔術を使っているのだ?」

「い、いやそれは逆に俺が聞きたいですよ。俺は魔術ってものにはさっぱり縁が無い。それが分かるなら俺だってこんなにびっくりしません」

 そもそも、体内に魔力が無い自分だったら魔術を使う事は出来ないんじゃ無いですか? と疑問を投げ掛けてみれば、騎士団長はそれもそうか……と納得した様子を見せた。


「ともかく、生体反応が感じられないとなると身体の内部の事までは分からんな。ううむ……」

 見るからに困っている表情で、腕を組んで騎士団長は考え込む。

 魔術による身体検査が出来ないとなれば一体どうすれば良いのだろうか?

 だがこのまま考えていても話が進まないのはこの部屋に居る全員が分かっている事なので、何とかこの状況を変えなければいけないと一同は思考を巡らせる。

 しかしそんな一同の元に思わぬ来訪者がやって来たのは、それぞれが考え始めて6分位したすぐの事であった。

「検査は順調か?」

「た、大公!?」

 部屋のドアをガチャリと開けて入って来たのは、何とこのルリスウェン公国のトップの存在である大公だった。

 騎士団長の驚き様からすると、どうやら大公がここにやって来る事は約束されていた訳じゃなくて全くの予想外の出来事だったんだろうな……とその一連の流れを見ていたロシェルは思った。


「それが……実はその……」

 魔術師の1人がバツの悪そうな表情と声で大公にロシェルの検査のあらましを伝えると、大公も驚きの表情になった。

「何と……それはまことか?」

「はっ。なのでこのままでは身体の内部を調べる事が出来ません。いかが致しましょう?」

 こんな出来事はこの国、いやこの世界が始まって以来1度も無かった出来事ですから……と魔術師が言うが、その前に大公の方からその魔力云々に関しての重大発表があるとロシェルを含めたその部屋の全員に伝えられる。

 まさか話を先にされるとは思わなかった騎士団長が疑問の声をあげた。

「いかがなさいました?」

 そして、その大公の重大発表がこの後のロシェルの運命を大きく変える事になるのであった。


「先程、そちらの彼が関与していたとされる爆発事件に関しての話が私の元に届いた。結論から先に言えば、その異世界から参られたと言う人間はあの爆発事件に知らず知らずの内に加担していたと言う事になる。だから罪に問う事は出来るかどうか微妙な線引きになるのだ」

「えっ!?」

 その発言に1番びっくりしたのは、さっきの生体反応云々の時と同じく異世界からやって来た人間であるロシェルだった。

 この展開は一体どう言う事なのだろうかと頭の中が混乱状態になるロシェルに、大公の声が再び聞こえて来た。

「そなたが運んでいたと言うあの荷物なのだが、強力な爆破魔術の術式を組んでいた事が分かった。そして、その荷物を受け取ったあの館の人間の魔力に反応して爆発する仕組みだったのだ」

「え……えーと……」

 魔術や魔力が存在していない地球からやって来たロシェルにとってはちんぷんかんぷんな報告内容だったが、言葉のフィーリングで何となく大公の言いたい事は分かった様な気がするので自分の考えを述べてみる事にした。


「それは……要は俺……あ、私の届けた荷物が爆発物で、特定の人間の魔力に反応して爆発する仕組みだったって事で宜しいです?」

「そうだ。ああ、そなたは魔力の存在していない世界からやって来たのだったな。人間の魔力は1人1人微妙に違う物なのだ。魔力によって個人を認識する事も出来るから、こうした重要な施設に入る為の個人認証に使っていたりもする」

 要は指紋認証みたいなもんなのか……とロシェルは納得した。

「だがそなたは魔力については勿論知るよしもあるまいし、ギルドからの報告によればギルドに登録してもいないと言う事らしいな?」

「あ……はい、おっしゃる通りです」

「誰かの指示であの荷物を運んでいたと言う事になるが、それは一体誰なのか私にも説明して貰わねばなるまいな」


 その横から黒髪の騎士団長が大公のセリフに続けて自分のセリフを入れて来た。

「貴様のしていた行為はギルドの重大な契約違反に当たるものだ。ギルドに登録していない人間が依頼を勝手に遂行すれば、それだけで我が国のギルドの信頼を落としてしまう。場合によっては損害賠償が請求される事にもなりえるのだぞ。まして、今回の事件においては館が1つ焼失し、多数の死者まで出している事件だから、貴様には大公の御前でしっかりと誰が関係しているのかをもう1度話して貰おう」

 外見の年齢で言えばおよそ45歳位であろうかと見える大公、そしてセリフを続けた20代後半と見える黒髪の騎士団長の有無を言わせない両者の口調に、ロシェルは心の中で今何処に居るかさっぱり分からないコラードに迷惑をかけてしまうであろう事を謝りながら白状する決意を固めた。

(すまねぇコラードさん、あんたは俺の命の恩人だって言うのによ……)

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