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3.異世界人の存在?

 どうやらロシェルが、魔力と言う単語については知らない様だと確信した男は腰に手を当ててフーッと息を吐いた。

「魔力の事を知らない、そして魔力を持たない人間か。これはあの噂はどうやら本当らしいな」

「噂?」

 何それ? とロシェルが問い掛ければ、更にロシェルをびっくりさせてしまう噂が男の口から出て来た。

「実はだな、以前にもこの世界に異世界人が現われたって話があったんだ」

「な、え!? 俺以外にも!?」

 明らかにびっくりした様子を見せるロシェル。そのロシェルのリアクションにも動じずに男は続ける。

「3ヶ月位前だったかな……地図を見ながら話した方が早いか。足を貸して貰うよ」

 男はそう言いながら、先程ロシェルに見せたこのエンヴィルーク・アンフェレイアの地図をベッドの上のロシェルの足の上に広げる。

「ここが今、私達が居るルリスウェン公国。そして、この海を挟んだ北東に存在しているのがソルイール帝国だ。それと……このアイクアル王国の中に存在していた国が内乱で滅んだシルヴェン王国。ここにも異世界人が現れたと言う記述がある」


 ベッドのそばのサイドボードの上にあるペン立てに立ててあった羽根ペンで、男はトントンと2箇所の地図を差しつつ黒のインクで地図を囲む。

「この2つの国で、異世界からやって来たと言う人間が現れたとの噂がまことしやかに流れていた」

「……でも、場所が少し離れてますよね、この2つの国は?」

「確かにそうだな。しかし、それ以外に異世界人が現れたと言う情報は今の所は無い」

 ロシェルの素朴な疑問にそう答えた男は更に続ける。

「まずはここのシルヴェン王国で、内乱を止めたのがその異世界からやって来たと言う人間2人らしい」

「2人……ですか?」

「ああ。男女2人がやって来たと聞いている」


 その2人は今何処に居るんですか? とロシェルが聞いてみたが、男からは不思議な答えが返って来た。

「んー、それがもう既にこの世界には居ないとか、アイクアル王国騎士団に入っているとか様々な話が飛び交っていて真相は良く分からないんだ」

 一体どうなったんだろうな……と男が呟くが、それ以上にロシェルには気になる事があった。

「その異世界人かも知れない、って事がどうやって分かったんですか?」

 ロシェルのクエスチョンに、男は非常にシンプルな答えを返す。

「君と同じさ。魔力の無い人間だったんだ」

「成る程な……」

 凄く納得したロシェルは、更にその男について聞いてみる。

「後はその男の容姿とか服装とかが分かれば、この世界で彼を探すヒントになるかもしれませんね」

 自分と同じ様に、こうして異世界にやって来てしまった人間が居るのであれば心細さも解消されると言うものだ、とロシェルは考える。


 しかし、男は渋い顔をして回答した。

「シルヴェン王国から広がった噂では確かに、その男に関しての情報が他国にも寄せられている。このルリスウェン公国だって例外では無い」

 ただし、と男はそこで一旦言葉を切る。

「これはこの世界においての常識を根底から覆してしまう事になる。だからこそ、1つだけ連絡がされていなかった国があるんだ」

「えっ、それは意図的にと言う事ですか?」


 コクリと男がうなずき、羽根ペンで1つの国の場所をツンツンとつつく。

「この東の横に長い国。エスヴァリークの上に存在している、魔術王国カシュラーゼだ」

 その国名を聞いたロシェルは、考える間も無く納得出来る考えに行き着いた。

「……もしかして、魔力の関係で?」

「そうだ。なかなか鋭いな。国の名前から大体予想がつくだろうが、その名前通り魔術の研究が世界で最も盛んな国とされている王国だ。勿論そこでは魔術を扱う事が出来なければそれだけ地位も低くなるし、簡単な仕事やきつくて危険で汚い仕事しか出来ない。そんな所に君の様な魔力を持っていない人間が入り込んだら……分かるだろう?」


 何だか地球でも聞いた事のあるカースト制度みたいだなー、とロシェルは思う。

「地球にもありますよ。人種とか身分とかでの差別って言うの。人種が違うってだけで差別の対象になったり、俺の国から少し離れた場所にあるインドって言う国では法律でそう言う差別が禁止されたとは言え、今でも階級による差別が残っている部分もありますから」

 例え世界が違っても、人間が多く集まるのであればやっぱりそういう差別って言うのはあるもんなんですかね、とロシェルはかぶりを振った。

「そちらの世界もそちらの世界で大変なんだな。とにかく……君がこの先どう言う行動を取る様になるかは分からないが、その魔術王国カシュラーゼだけには近づかない様にする事だ。これだけは私が今忠告したからな」

「しっかり覚えておきますよ」

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