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70(最終話).竜の波動

 話が纏まったのは良かったのだが、流れを元に戻してからエンヴィルークは何処か遠い目になった。

『ニールがこの世界から自分の世界に戻って姿を消した以上、俺も彼の情報は分からない。が、ヘルヴァナール側の情報を色々と仕入れていたのはアンフェレイアの方が多いから、こいつに聞いてくれ』

 エンヴィルークから説明を任せられたアンフェレイアは、仕方無いわね……と呟いてそのニールと関係が深く、そしてヘルヴァナールに向かったとされる男の事を話し始めた。

『ニールと同じ名前の武術、カラリパヤットを習っている人間は複数人居たわ。ええと確か……全部で7人居るんだけど、ニールと縁があるのはその内の1人で……兼山って名前の男の人ね』

「カラリパヤットの兼山……か」


 エンヴィルークも、それから地球人達もこの世界の人間達もその名前に聞き覚えは無いものの、彼と関わりが深い人間だと言う事で記憶には強く残った。

『その兼山と言う人間から、僅かだけどニールと同じ……そしてセバクターと同じ波動を感じるわね』

「そっちの世界には波動、と言うものがあるのか?」

『ええ。竜の波動と呼ばれる、竜族にしか分からない特殊なものがね。それがどう言う原理なのかは私達でさえも良く分からないんだけど……まぁ、一種の目印みたいなものかしらね?』


 だが、その波動云々に関してはエンヴィルークの方が詳しいらしい。

『さっきから波動、波動と貴方は言っているのは、竜の波動だ』

 エンヴィルークに間髪入れずに即答され、この場に居る人間達が全員唖然とした顔つきになる。

『竜族が発するエネルギーみたいなものでな。人間で言う「人の気配」に値するものだ。竜の気配で俺達は他の竜が何処に居るかと言うのを判断しているのだが、それが何故御前達から感じられるのかまでは分からん』

「アバウト過ぎるだろ……」

 何が何だかその説明じゃさっぱり分からねえよとアルジェントが言うのだが、やっぱり分からないものはドラゴンであるエンヴィルークにもアンフェレイアにも分からないのだから、こうして結局アバウトな説明になってしまうらしい。


「そういやさっきチラッと言ってたけど、同じ世界の波動を俺達の一部から僅かに感じるって……俺達の中で感じる奴と感じない奴が居るって事なのか?」

 さっきの説明の中の部分に疑問を持ったジェイヴァスが質問すると、エンヴィルークは『そうだ』とまた頷く。

「誰から感じるんだよ?」

『……その銀髪の奴と紫頭の奴。それから……ああ、そっちの帽子を被ってる奴もそうだな』

「え? 俺達だけなのか?」

『そうだ』

 エンヴィルークが指し示したのは日本に旅行に行っている2人、それからグレリスのバウンティハンタートリオだけであった。

「何で俺達だけ?」

『だから知らん。俺はただ単に御前達から感じただけだ。御前達の方こそ思い当たる節は無いか?』


 思い当たる節と言われても……と頭を悩ませる3人。

「俺とエイヴィリンは日本に旅行しに行ってただけだし、グレリスと一緒にアメリカでバウンティハンターとして活動してるだけって位か。その……こっちの世界に来たって言う2人がそれぞれ日本人なのとアメリカ人だって位しか分からない以上、俺達はそこに住んでるか旅行してたって位の薄ーい繋がりしか無いぞ?」

「薄い」を強調したウォルシャンだったが、それが逆に功を奏した様である。

『薄い……ふむ、それはそれで考えられるかも知れんな』

「へ?」


 何が考えられるのだろうか?

 キョトンとするウォルシャンに向かって、エンヴィルークは自分の予想をぶつける。

『御前達が住んでいる、もしくは旅行している国と同じ国に居る人間だからこそ、その波動が御前達にも少しだけくっついて来たんじゃないのかと思う』

「……良く分かんねーけど、だから俺等から波動が感じられるのかよ?」

『そうだろうな』

 そう説明されてもやっぱり良く分からない。


 それに、疑問の声を上げるのはこの3人だけでは無かった。

「待ってくれ。私も4年前に日本に旅行をしたんだが……私の場合はどうなる?」

 アイヴォスがエンヴィルークにそう聞くが、エンヴィルークは首を傾げるだけだった。

『いや、御前からは特に何も感じないが』

「だったらさっきの理屈は筋が通らないな」

 冷静にそう分析するアイヴォスだが、ここでアンフェレイアからエンヴィルークに確認が。


『……そう言えば、そのもう1人の人間が来たのは半年位前の話よね?』

『そうなのか? それを踏まえてもこの穴がこちらの世界に開いたのは2年前。向こうのヘルヴァナールにも今から2年前に魔力を持たない人間達が現れたらしくてな。だから向こうで何かがあったらしいが……波動でもそこまで詳しくは追い切れなかった』

「何だよ……微妙な所で分からなくなっちまうんだな」

『仮にその向こうの世界の話とこの穴が開いたのが繋がっていたとしたら……そしてヘルヴァナール側からこの穴を開けたのが、ニールと縁が深いその波動を感じたカラリパヤット使いの男とだとしたら、日本に旅行をしたと言う御前でも波動に触れる事は無くなるな。竜の波動はかなり強いものだから』

 もはや話が難しくなり過ぎているので、ここはひとまず話を切り上げる事にした。

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