63.強行突破で突っ込め!!
ドラゴンに対しての疑問と不信感も渦巻きながら、やっとの事でようやく15人は町の外へと出る。
そこには確かに、地球人達が乗って来たワイバーンが大人しく待っていた。
なのでさっさと再び15人はそれぞれのワイバーンとドラゴンに乗り込み、再び空に舞う。
しかし、そのスピードはさっきよりもゆっくりだ。
『あの獣人が何を企んでいるか分からない以上、何か罠を仕掛けている可能性もあるからな』
精一杯急ぎつつ、だけど罠の可能性も考える。
そしてドラゴンだけでは無く、集落に近づくに連れてこの世界の人間であるセバクター、フォン、アンリ、クリスピンもそれぞれ強大な魔力を感じ取った。
「……凄い数だな」
「やっぱり御前もそう思うか。一国の大軍って言うレベルじゃ無いが、獣人がここまで徒党を組んでいるのは珍しいと俺は思う」
「北の方ではなかなか獣人自体を見掛けないからな。どれ位の数がいるのか俺には予想もつかん」
「確かに我がルリスウェンよりも北のリーフォセリアの人間ならそう思うだろう。だが、私も同じ気持ちだ。獣人族め……何を企んでいる?」
違う国の人間ではあるものの、ここは協力して手を組んで獣人族の企みを探る事にはお互いに何も言わずとも同意していた。
それは地球人も同じである。
違う国の人間同士だが、地球代表の11人としてこの世界にやって来てしまった以上はここで手を結ぶしか無い。
そんな気持ちを胸にしつつようやく集落のすぐ近くまで辿り着いたのだが、そこには完全武装の獣人達1500人以上が待ち構えていた。
1500人以上と言うのはあくまでもドラゴンの予想にしか過ぎない人数ではあるものの、集落周辺の地上の獣人部隊の端からは集落内部が見えない位の人数である事に変わりは無かった。
「集落にはどうしても行かせたくないらしいな」
エイヴィリンがドラゴンの背中からそう呟く通り、集落周辺の森の闇の中から飛んで来た矢がドラゴンやワイバーンを狙う。
このまま上空からのアプローチでは、集落に近づく前に矢の餌食にされてしまいそうだ。
一体何処からこれだけの獣人達を集めたのか不思議だったが、それでも何としても集落に入ってガレディを見つけなければならない。
なのでドラゴンとワイバーンに乗った一行は集落のガード突破作戦を開始する。
『ぬうううぅぅぅ……ぐがぁっ!!』
大きな叫び声を上げたドラゴンは、口から炎のブレスを吐いた。
このブレスはどうやら魔術の類では無いらしく、地球人達にもその熱気がしっかりと伝わって来る。
地上に目をやれば、そのブレスから逃れようと獣人達の影が割れるのが炎のオレンジ色の照明で空の15人にも分かった。
ドラゴン相手に寄せ集めでも何とかなるのかも知れないが、でもやっぱり統率力が取れていない「数の多さだけ」の集団ではどうしようも無いらしい。
なのでその数の多さだけが取り柄な獣人達をまず圧倒的な力で威嚇しながら、ワイバーンの部隊が何とか着陸を試みる。
飛んで来る矢はドラゴンの炎のブレスで燃やすか、その巨体に見合わないスピーディーな動きで回避するかだ。
一方のワイバーンはドラゴンよりもボディがコンパクトなので、矢の回避も楽だし的を絞らせない様にするのも楽だ。
とは言えどもワイバーン自体にはその牙を使った噛み付き、それから翼をはためかせて風を起こす位しか攻撃方法が無いのでどうしても接近戦に持ち込まなければいけないのが欠点だった。
それにドラゴンのブレスもありがたいのだが、余りそのブレスを吐き出し過ぎると今度は森や集落が炎に包まれてしまい着陸が不可能になってしまうのは目に見えていた。
だから何処かで区切りを付けなければならないのだが、相手の獣人連中も大勢居るのでなかなか着陸を許してくれない。
『チッ、こうなりゃ……』
だったらもう強行突破をするしか無い。
炎を吐き出しながらドラゴンは上空を旋回し、その炎によって獣人達の人影が割れた所で一気にその割れ目に向かって突っ込んで行く。
「つ、突っ込んで来るぞ!!」
「逃げろぉ、危ねえっ!!」
巨体のドラゴンのが一直線に降下して来るのが獣人達の目にも入り、あんな大きなボディに潰されてたまるかと我先に獣人達は逃げ出す。
その突っ込んで来たドラゴンを避けて、獣人達の間に明らかなスペースが出来た所へドスン、と大きな音と衝撃を生み出しながらドラゴンが着地した。
同じ様にワイバーンもその周りに次々と着陸し、武器を持つ事が出来るこの世界の人間4人が先陣を切って獣人達に戦いを挑んで行く。
『俺がワイバーン達に戦う様に指示を出す。御前達はこの獣人達を指揮している奴が居る筈だからそいつを見つけろ!!』
「分かった!」
ドラゴンの指示にエイヴィリンが了解の返事をして、彼と同じ様に飛び降りた地球人達もそれぞれ獣人達を殲滅しに掛かる。
あのタワーでの破壊行為でリボルバーの銃弾が切れてしまったグレリスは仕方無いので素手で戦うが、日本刀を持っているアイヴォスは今現在の地球人の中で唯一の使える状態の武器持ちだ。
向かって来る獣人達の血しぶきを浴びながら、存分にその日本刀を振るって敵達と渡り合う。




