表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
613/625

62.戻って来たドラゴン

「獣人達は恐らくその集落からやって来ているみたいだ。だけどここでいちいち相手にしていたら時間が足りない。集落に向かって原因を探り、獣人の流出を止める!」

 クリスピンがそう判断するが、自分達だけでは明らかに戦力不足だと言う事は地球人の誰もが分かっている。

「援軍は!?」

 その気持ちを乗せたアイベルクの質問に、セバクターは首を横に振った。

「アイクアルから1番近いルリスウェンでも、援軍が来るまではかなりの時間が掛かる。だから俺達で出来る限りの事をしなければならない!!」

 だけど、それこそ敵の中枢に飛び込む等と言うのは余りにも無茶苦茶な作戦だ。

「おいおいちょっと待てよ!! 俺達だけで敵の中心に飛び込むなんて全滅するのが良い所だ!! ここは外から少しずつ切り崩して行くべきだ!!」

 アルジェントが自分なりに頭を捻って考え出した戦略を提案するものの、「中心から一気に叩き潰す」グループと「外側から少しずつ切り崩して行く」グループに分かれる。


 外側から切り崩して行けば、数が多いかも知れない集落の獣人達と持久戦を強いられるのが目に見えている。

 だからと言って中心に突っ込んでも、敵が何か罠を仕掛けている可能性もあるしそもそも敵の中心が何処なのかが分からないのも問題だ。

 だからとにかく最初は相手の情報を知るべき……なのだが、この町にどんどん獣人達が向かって来ているのでそんな調べる時間も無い。

 まさにどう言う作戦を取ろうとも、敗色濃厚と云う言葉がピッタリだ。

 こっちの圧倒的な数の少なさと情報の少なさにプラスして、この戦場がセバクターやフォン、アンリ、クリスピンのホームグラウンドならまだしも完全にアイクアル領内なのでアウェイ状態だ。


 完全に行き詰ってしまったので如何しようも無い……と思っていた15人だったが、彼等は獣人達の襲撃とその対策で頭が一杯で大事な存在を忘れていた。

 バサッ、バサッと何処からか聞き覚えのある音が、エイヴィリンの耳にまず聞こえて来た。

「……ん?」

 その音のする方を見上げてみると、夜が明け切る前なので藍色になっている空の彼方から猛スピードでこっちに向かって来る赤茶色のドラゴンの姿が。

「あっ……おい、あれっ!!」

 大声で叫びながら空を指差すエイヴィリンに対し、一旦言い争いをストップして他の14人も空を見上げてみる。

「あれっ、あのドラゴン……!?」

 そう言えばあのドラゴンは、この町に入る前に色々な話を聞かせて貰ってから『違う場所で俺は寝る』と言い残して何処かに飛び去って行ったきり、今の今まで全く姿を見ていなかったと15人は思い出す。


 そしてそのドラゴンは宿屋の前の道にゆっくり着陸し、15人に声を掛ける。

『獣人の集落で何か怪しい動きがあったみたいだ。すぐに向かうぞ』

「やっぱりあそこか……でも、俺達だけじゃどうしようも無い気がするんだけどな」

 早く行くぞ、と急かすドラゴンに対してストップをかけるウォルシャンだが、ドラゴンは次の瞬間とんでもない事を言い出した。

『あれ位だったら俺とワイバーン達で一部は割と何とかなる。ただし、御前達にも掃討を手伝って貰うぞ』

「……正気か?」

 反射的にフォンがそう聞いたが、ドラゴンの答えは変わらない。

『正気だとも。1度俺は集落に偵察に向かったんだ。確かに数は多いが、獣人と言えども人間と獣のハーフだぞ。だから1人1人の戦闘力は俺とワイバーンに掛かれば大した事が無い。

 更にもっと言ってしまえばあいつ等は寄せ集めのガーディアン達らしい。動きも統率力も無駄があり過ぎる。だからその4人……この世界の人間はおろか、そっちの異世界人達でも切り抜けられる戦力だと俺は見ているがな』


 自信たっぷりにそう言われて、15人はお互いに顔を見合わせる。

「……信じて良いのかよ?」

『信じるか信じないかは御前達次第だ。だけどこの状況だから早くしないともっと被害が拡大する。行くのか行かないのかさっさと決めろよ』

 アルジェントの質問には若干イライラしている様な口調で答えたドラゴン。

 行くのか行かないのかは15人を代表してエイヴィリンが決める。

「分かった。集落まで連れて行ってくれ!!」

『準備は大丈夫か?』

「……大丈夫だな?」

 後ろの14人を振り向けば、それぞれがOKと言う声や表情をエイヴィリンに聞かせたり見せたりしたのでエイヴィリンもOKである。

「大丈夫だ。行こう!」


 ワイバーン達はすでに町の外で待っていると言うので、途中で襲い掛かって来た獣人達をそれぞれが倒しながら一同は町の外に向かって突っ走る。

 15人もいっぺんにドラゴンは載せられないので、こうして外まで向かうしか無かった。

(……確かに、思った程でも無いな)

 1人をキックで倒したアイベルクが、その獣人の弱さに納得して頷く。

 他の14人も同じ感想を抱くのにそうそう時間は掛からなかったが、レナード、リオス、アイヴォスのヴィサドールチームの3人はそれぞれ疑問も同時に抱えていた。

(ドラゴンは目立つが、一体何処で休んでいたんだ?)

(ワイバーンは確かこの町で預けた筈。なのにどうやってワイバーンを町の外まで連れ出したんだろう?)

(……ドラゴンは一体何処でどうやって偵察をしたんだ? あれだけの巨体は目立つだろうに……不思議だ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ