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61.鳴り響く警鐘

 実際はその事よりもこの世界に突然やって来て、魔力を持っていない人間だと言う事で散々追いかけ回された事の方が強く印象に残っているのだが……。

 エスヴァリーク帝国に入ってあの城に向かう時も、もしかしたらまたカシュラーゼの時みたいになるんじゃないかと思って何時でも逃げ出せる様にしていた。

 結果としてはこうして同じ様な境遇で、この異世界にやって来た人間達に出会えたので不安材料はその時に取り除かれた。


 ヨーロッパの人間からすると、自国ドイツも含めてナチスドイツに対して良い感情を持っている人間の方が少ないのが事実だとエヴェデスも分かっている。

 だからこそエスヴァリーク帝国ではなるべく連邦軍の制服で居る事にしていたのだが、何日も取り替えないと臭くなるので城で用意してくれた簡素な服装やこのナチス親衛隊の制服に着替えて過ごしていたのである。

 エスヴァリークは大国故にカシュラーゼも迂闊に手出しは出来ないとセバクターから聞いていたのだが、散々追い掛け回されたエヴェデスは1ヶ月の間で数度、夢の中でまで追い掛け回されて飛び起きた事もあった程だった。


 そんなエヴェデスの斜め向かいに座っているアルジェントは、自分達のヴィサドール帝国軍が1番人数が多い事に不信感を持っていた。

「俺達地球人は全部で11人だが、ヴィサドールが1番多くねえか?」

「……確かに」

 リオスの副官であるアイヴォスも同じ感情を抱いている。

 11人中、実に4人がヴィサドール帝国軍。3分の1以上を占めている割合になる。

 次に多いのがバウンティハンターの3人で、それからガラダインの2人、最後にドイツ軍1人とロシア軍1人で合計11人の計算だ。

「演習に参加しているのが、私達ヴィサドールが1番多いからって言う理由なんですかね?」

 レナードの言う通り、今回の演習に参加している4ヶ国の中ではヴィサドール帝国軍が1番参加人数が多い。

 だからこの世界に来てしまったメンバーが多いのも、単純に考えてそんな理由だからとしか思い浮かばなかった。


 そして話し合いを終えて、援軍の到着までじっくりと身体を休める事にしたメンバー15人。

 しかし、物事はそうそう都合良くは行ってくれないらしい。

 酒場から宿屋に移動して援軍を待ちつつ、来るかも知れない戦いに備えてじっくりと休息を取ろうとしていた時だった。

 町には異常事態が起こった時にそれを知らせる警鐘が何ヶ所も存在しているのだが、真夜中に突然其れ等がカンカンカンカンとほぼ同時に鳴り始めたのである。

 15人の中で最も眠りが浅いグレリスがそれに気が付いたのを切っ掛けに、他の地球人達やこの世界の人間達も目を覚まして行く。


「……んだょ……んな朝っぱらからよぉ~……」

 変な起こされ方をしてイライラしつつ、ようやく夜が明けて来た時間帯なのを窓から見て確認したグレリスは、その時間帯よりももっと重大な事にすぐに気が付いてしまった。

「……あ?」

 あちらこちらで空がオレンジ色に薄く輝いている。

 いや、それだけならまだしも明らかに炎が渦を巻いている所が何ヶ所も見受けられる。

 そしてそれと一緒に聞こえて来るのは人々の悲鳴と怒声とバタバタと走り回る足音。

 何かのイベントなんかじゃ無い。これは明らかな異常事態だ。


「……何だ、これは……?」

 異常事態だと言う事は分かったものの、まだ寝起きで頭が覚醒していないグレリス。

 しかしそのグレリスの横で同じく窓の外を見つめ始めたセバクターとアイヴォスが、持ち前の冷静さで何が起こっているのかを本能と感覚で察知した。

「敵襲か!?」

「何か様子がおかしい。とにかく様子を探るのが先決だ!」

 まだ寝ぼけている他のメンバーも次々に起こして、外の様子を宿屋の中から伺う一同。

 しかし中から見聞き出来る情報には限界があるので、ここはクリスピンとアンリとセバクターが外に様子を見に行く事にした。

 危険かもしれないが、このまま宿屋の中でもたもたしていて訳も分からずに殺されてしまうよりは遥かにマシだからである。


 その考えで偵察へと出た3人だったが、ものの5分もしない内に戻って来てしまった。

 しかもかなり焦りの表情が3人に出ている。

「あれっ? 戻って来るの早くないか?」

 ジェイヴァスがそう聞いてみると、焦りが前面に押し出されている表情のまま最初に口を開いたのはアンリだった。

「それ所じゃない。さっさとこの町から立ち去らないとまずい!!」

「えっ? どう言う事ですか?」

「獣人だ! 獣人の大群がこの町に攻撃を仕掛けて来ているんだ!!」

「はぁっ!?」


 ロシェルの質問にアンリが答えると、まさか……と言う顔つきでエヴェデスが声を上げる。

 しかし声を上げないにしても、他の地球人達もそして地球人達の見張りとして残ったフォンも気持ちは同じだった。

『獣人達が何故ここに?』

 この町は15人が援軍と合流してから向かおうとしていたあの獣人の集落からそんなに距離は離れていない。

 そして獣人の大群。

 だから考えられるのは、やっぱりその獣人の集落が何か関係しているんじゃないか……と言う事だけだった。

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