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56.合流する異世界人達

「ほう……御前達も魔力を持たない人間だったとはな」

 フィランダー城で帝国騎士団長のセバクター直々に取り調べを受けていた4人は、ガレディとワイバーンとは別の場所に移動させられて今までの事情を聞かれていた。

「ああそうだ。で、これがそのパズルの欠片だ」

 エイヴィリンがそう言いながらセバクターの前に欠片を差し出すと、横に控えていた帝国騎士団特殊部隊隊長のフォンがそれに食いついて来た。

「何か、やたらと大きな物だな……」

 欠片にしては結構大きめなのが気になるらしいが、そう言われてもこの大きさで見つかったのだからエイヴィリンとウォルシャンは何とも言えなかった。


 それよりも地球人達にはもっと気になる事があった。

「それもそうなのだが、そのドラゴンから他に聞いていたのは俺達と同じ魔力を持たない人間に会うにはここに来い、って話だったんだが……」

 まさかここに居るのか? とリオスがそう聞いてみればセバクターは真顔で頷いた。

「ああ、居るぞ」

「えっ、本当かよ!?」

 ガタッと椅子を揺らしてグレリスが立ち上がるが、それをエイヴィリンに抑えられる。

「落ち着けよ。それで、その人間は今何処に?」

「だったらここに呼んで来よう。ニーヴァス、シーディト、カヴィルド、頼むぞ」

 セバクターのサポートとして控えていた、帝国騎士団特殊部隊副隊長のニーヴァスと元盗賊団の騎士団員2人にその人間を連れて来る様に指示を出す。


 この取調室で取り調べを受けていた4人がこの国に来て聞いていたのは、「黒ずくめの服装の男」の情報だけである。

 だからその後の展開に、思わず4人は唖然としてしまった。

「セバクター、城の中に全員居たから連れて来たぞ」

「ご苦労」

「……えっ!?」

「はぁ!?」

「あ、あれっ!?」

「リオス……だよなぁ?」

 帝国騎士団員達に連れて来られたのはその黒ずくめの服装の男だけでは無かった。

 地球人4人の内、リオスが見覚えのある人間が何人か混じっていたからである。


 アイクアル王国で盗賊団と死闘を繰り広げ、最終的にアイテムを入手したロシア軍のジェイヴァス・ベリルード。

 リーフォセリア王国からワイバーンで王国騎士団第4師団師団長と共にやって来た、ヴィサドール帝国のレナード・サーヴィッツ。

 そのレナードの上官であり友人でもある、エレデラム公国の騎士団長の野望を阻止して同じくワイバーンでここまでやって来たアルジェント・エルレヴィン。

 魔力を持たない人間と言うだけで執拗に騎士団に追い掛け回され、最終的にカシュラーゼの筆頭魔術師と騎士団長を殺して逃げ切った後に、ナチス親衛隊の格好で船でエスヴァリーク帝国へ入って来たドイツ軍の軍人エヴェデス・カースリッヒ。

 そのカシュラーゼにほぼ占拠され、しまいにはそれにうんざりしてカシュラーゼ軍に寝返った男を倒してヴァーンイレス……つまりこのエスヴァリーク帝国の隣国からやって来たヴィサドール帝国軍の軍人アイヴォス・ソリフォード。


 そこにイーディクト帝国で合流したアイヴォスの上官リオス・エルトレインに、エイヴィリンとウォルシャンのバウンティハンター仲間でソルイールのタワーを爆破したグレリス・カーヴァラス。

 最後にこのエスヴァリーク帝国にトリップして来て、連続爆弾テロ事件を解決する手助けをしたガラダイン王国陸軍の軍人で階級は大佐のアイベルク・グリスレイン。

 大勢の地球人がこうしてエスヴァリークへとそれぞれの思惑で偶然にもやって来て、そしてこうして一堂に会したのである。

 その後に地球人達でお互いに自己紹介をし合って判明したのが、ソルイールからワイバーンでやって来た4人よりも先にここにやって来ていたこのメンバーにはある共通点があった事だった。

 ワイバーンでやって来たリオスと同じく、彼等は4カ国の合同軍事演習に参加している、もしくは参加予定のメンバーだったのである。


「何かもう、魔力を持っていない人間ばかりで大分この状況に慣れて来た様な気がする。不思議な気持ちと状況なのは確かだがな」

「それはそうとして、魔力を持たない人間達の大部分には共通点があるみたいだが……問題はそれ以外の3人だねぇ?」

 ゆっくり話し合いが出来る様に大会議室まで彼等を案内した、こちらも元盗賊団の騎士団員であるルディスとライウンがそれぞれ別々の事に対して不思議に思っていた。

「また忙しくなりそうだな」

「ああ……爆弾騒ぎがようやく収まったと思ったらこれだもんな」

 とにかくこれだけ魔力を持っていない人間が集まると言う事は、再度色々とお互いの関係だの何だのを取り調べさせて貰わなければならない、と言う事だけは確定事項であるのだとシーディトとカヴィルドは感じていた。


 だけど、それ以上にエスヴァリーク帝国騎士団がまた忙しくなる事が1つ増えた。

 それはこの大勢の対面と再会から始まり、事情聴取や監視と言う名目で地球人達とアンリとガレディが帝都ユディソスに実質軟禁状態で外に出られなくなってから1ヶ月と1週間が過ぎた頃である。

「セバクター、ちょっと良いか?」

「どうした?」

 アンリと一緒にリーフォセリアへの連絡事項を話し合っていた所に、急ぎ足でフォンがやって来た。

 そしてセバクターにゴニョゴニョと何かを耳打ちする。

 その耳打ちを聞いていたセバクターの顔つきが次第に驚愕のものに変わって行くのを、フォンの声を聞き取れないアンリにもハッキリと見えた。

(……また何か起こった様だな)

 リーフォセリア王国からレナードと共にはるばるやって来た、リーフォセリア王国騎士団第4師団師団長アンリ・ルイ・ボワスロの心の呟きが当たってしまうのはそれから1時間後の事だった。

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