55.夜空の下のバトルフィールド
結論から言ってしまえば、ワイバーンにも手伝って貰い騎士団員達を撃退する事に成功した一行。
グレリスを裏切ったアニータとその仲間達との決着をつけたタワーの火災を見て、近くの部隊が駆けつけたソルイール帝国騎士団に魔力が無い、と言う理由で襲われてそれぞれの武術やガレディの斧、そしてワイバーンの引っかきや体当たり等を駆使して撃退したまでは良かった。
しかし、その結果は今までのバトルの中で1番深刻な状況であった。
グレリスとエイヴィリンが負傷してしまったのである。
エイヴィリンは足をロングソードで斬り裂かれてしまい、グレリスは背中に矢が突き刺さってしまった。
まさかこんな時にこんな怪我を負うなんて……と集団の乱戦の中で思いも寄らないアクシデントに見舞われてしまったのだが、ぼやぼやしている暇も無く何処か近くの町か村までワイバーンと一緒に運ぶ事になった。
2人とも意識はあるのだが、特にグレリスは背中に矢が突き刺さっているのでさっさと何処か安静な場所に移さなければまずい。
ワイバーンで空を飛び、何処か安静に出来そうな場所は無いだろうかと焦りながら他のメンバーがそう言った場所を探していると、やはりと言うかこの状況下でも人間より目の良いガレディが真っ先に見つけた場所があった。
「あ、あそこはどうだ?」
「良く見つけられるな……しかし迷っている時間は無い、とにかく降りるぞ」
リオスもうっすらとではあるが村があるのを発見し、ウォルシャンと共にグレリスとエイヴィリンを支えながらその村へと降り立ったのだが……また問題が起こった。
「……まずい、ここは既に廃村になった村だ!」
「何だと!?」
夜だと言う事が災いし、人気が無い事で廃村と普通の村を勘違いしてしまったのである。
だけど怪我の状態もしっかりチェックしなければならないし、これまでずっと飛びっ放しだった上にさっきまで戦っていた上にワイバーンにこれ以上飛ばさせて墜落でもしてしまったらまずい。
その村の家屋では家具や家財道具が置きっぱなしの家もチラホラあったので、その家屋のベッドに2人を寝かせてそれぞれエイヴィリンをウォルシャンが治療し、リオスがグレリスを治療する。
獣人の集落から食料と一緒に、何か怪我した時の簡単な治療セットも一緒に持たせてくれていた事が幸いして……と言っても簡単な止血位しか出来ないのだが、それでも2人の怪我がそこまで重いもので無かった事も重なって2人はそのままここでしばらく休む事にした。
逆に廃村であった事が幸いし、騎士団に通報される恐れが全くと言って良い程無いのも救いの1つだった。
かと言って傷口から色々と細菌が入って感染症を引き起こしたりするかも知れないので、魔力を持っているこの世界の住人ガレディが近くの町まで翌朝から治療薬や包帯をワイバーンで買いに行った。
ワイバーンで行くので戻ってくるまでにはさほど時間は掛からないのが幸いしたが、リオスとウォルシャンの判断で一先ず1週間程度様子を見る、と言う判断が下された。
怪我したての身体をすぐに動かしてしまうと、また新たなトラブルを引き起こす可能性があったからだ。
「急ぎたい気持ちも分かるが、全員無事に揃って地球に帰るのが目的だろう」
その気持ちは怪我をしている人間もしていない人間も同じであった。
その気持ちを抱えたままグレリスとエイヴィリンが回復して、トータルで丁度1週間をその廃村で過ごした4人は再びワイバーンに乗ってエスヴァリーク帝国を目指す。
この世界にやって来て13日目に出発だが、エスヴァリークまでは遠いので2日程掛かるとの話だった。
1週間の間はガレディにこの世界の知らない事をもっとそれぞれ教えて貰ったり、リオスとウォルシャンがお互いの軍での生活についてトークをしてみたり、と言う事で時間を潰していたので実質遺跡調査等は出来ていない。
そもそも怪我人が居るのに遺跡調査なんて出来なかった。
ちなみにあのドラゴンにもう1度出会えるかな……とひそかにワクワクしながら思っていた5人だが、そのドラゴンはあれきり姿を見せなかったのも気になる所だった。
それでも、そのドラゴンに言われた通りに何かの切っ掛けを掴むべくエスヴァリーク帝国へと向かう一行。
仲間がどうのこうのと言っていたので、あのドラゴンの言う事が本当であればエスヴァリーク帝国に新たな仲間が居る筈だと信じて。
そして、そのドラゴンの予言と信じる気持ちが現実になった。
エスヴァリーク帝国で、自分達と同じく地球からやって来たと言う他のメンバーと合流する事になったのである。
ワイバーンを休み休み飛ばしていた5人は、既にエスヴァリーク帝国の帝都ユディソスに到着。
と言うのも、エスヴァリーク帝国では昨日の今日と言うレベルで女がリーダーのグループによる爆弾事件が相次いでいたらしい。
それを解決したのが帝国騎士団長であるセバクターと、魔力を持たないと言う黒ずくめの服装の男だった。
だからその黒ずくめの男と同じ魔力を持たない人間達一行は、帝国騎士団に早々に目を付けられてフィランダー城へと案内された。




