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54.喋ったあああああっ!?

 降り立ったドラゴンはワイバーンよりも大きなボディを持ち、夜空の下で月明かりに照らされながら不気味に輝いている……。

「何て言ったら良いんだこれ……赤茶色?」

 オレンジ色よりは若干暗めの、明るい赤茶色と言える色の肌を持っている。

 そのドラゴンは未だに警戒心むき出しで威嚇するワイバーンに対して、体勢を低くして首を寄せて二言三言鳴き声を小さく聞かせる。

 ドラゴンとワイバーン同士、竜の仲間で通じ合う所があったのかワイバーンは次第に大人しくなった。

 そして何よりも驚くべき事が、この後ガレディを含めた5人に起こる。

『……多少の関係はあるのかも知れんな……』

「しゃ、喋ったあああああっ!?」


 1番驚いたのはウォルシャンだったが、まさかこのドラゴンが人間にも通じる言葉を喋るとは5人にとって全く予想外だった。

 ガレディでさえも、人間のシルエットになっていない狼とはそのオオカミの言葉で会話するのが当たり前だったのだから、人間の言葉を喋るドラゴンと言うのはまるで予想外であった。

『どうした? 俺が喋るのがそんなに変か?』

「ああ、すっごく変。俺達の常識じゃ考えられないからな」

 凄くを強調しながらグレリスがそう言うと、赤茶色のドラゴンはグルル……と喉を鳴らして再び口を開いた。

『僅かに……ほんの僅かにだが、御前達からは俺が求めていたオーラが見える』

「オーラ?」

 いきなりそんな、下手なカートゥーンの様な事を言われてもどうして良いか分からないリオス。


 だけどドラゴンの目つきは本気であり、更にとんでもない事を言い出した。

『この世界には、御前達以外にもまだオーラを感じる。それも複数な』

「まさかそれは……俺達以外にも、この世界の奴じゃない奴等が居るって事か?」

『そうだ。そしてそのオーラがエスヴァリーク帝国へと向けて集まっているのが分かる。御前達も現にそうだったみたいだし、そうやって固まって行動しているからこうして会いに来てみたらどうやら正解だった様だな』

 一気にそう言われたものの、余りに突然の話過ぎて頭が混乱して来る地球人達。

 その混乱している彼等を横目で見ながらガレディが話を纏める。

「やはり俺達もエスヴァリークへと向かうべきなのか?」

『そうだ。と言うかそうして貰った方が有り難い』

「どう言う意味だ?」


 妙なセリフを吐き出すドラゴンに更に質問を投げ掛けるガレディだが、ドラゴンは首を横に振った。

『それを話すよりも、まずは同じ魔力を持っていない人間であるお前達の仲間に会いたく無いか?』

「そ、そりゃ会いたいけど……」

『ならばまずはエスヴァリークに行け。心配しなくても欠片は全て集まる筈だ。順調に集まっている様だからな。リオスの居た国の奴も……』

 最後に意味が分からないセリフを残して、ドラゴンは大空へと飛び去って行ってしまった。

「ど、どう言う事だ!? おいちょっと待てよ!! おーいっ!?」

 グレリスが飛び去るドラゴンに対して大声でストップを掛けたのだが、バサバサと翼がはためく音しか返って来なかった。

 ガレディは飛び去って行ってしまったドラゴンをワイバーンで追いかけようと思ったが、そんな余裕も無い位に素早いスピードでそのドラゴンは視界から消えてしまった。


「何だったんだ、あれは……」

 唖然とした顔つきでドラゴンの飛び去って行った空を見上げたままのグレリスとウォルシャンだが、エイヴィリンはこの世界の住人であるガレディが何かを知っているのでは無いかと踏んで尋ねてみる。

「あんな、言葉を喋るドラゴンなんて言う存在はこの世界では当たり前……じゃ無さそうだな」

「ああ、俺も流石に見た事は無い……。あのドラゴンの事も聞いてみたかったが結局分からずじまいだな」

 しかしその話とはまた別に、ドラゴンが飛び去る間際に言い残した事がリオスには気になった。

「あのドラゴン、何で俺の名前を知ってたんだ?」

「え?」


 そう言われてみると……と一気に不自然なポイントに気が付く一同。

「リオスは名前名乗ったっけ?」

 グレリスの問い掛けにリオスは首を横に振る。

「いいや、俺は名乗ってない。そもそも御前達だって名乗って無いだろう?」

「そうだな……。でも、リオスの居た国の奴も……って事はイーディクト帝国にリオスが居たって事を知っているって事だよな?」

 でもリオスを始めとして、ここに居る全員がさっきのドラゴンとは初対面なのだ。

 じゃあ何で名前を知っていたのかが分からない。と同時に気味が悪いのでさっさとここから退散してエスヴァリーク帝国に向かう事にする一行。


 しかし、それはどうやら都合良くは行かなかった様だ。

「そこで何をしているっ!!」

 突然聞こえて来た大声、それから複数のガチャガチャと言う金属音。

 一体何事かと声のした方を振り向いてみれば、そこには銀色に光る甲冑で完全武装した多数の兵士達の姿が。

 それを見たガレディが苦々しい顔つきになる。

「まずい、ソルイール帝国騎士団だ。あの火事に気が付いてここに来たんだろう」

「ど……どうする?」

「さっさと逃げる……と言いたいが、ワイバーンも飛べるかどうか……」

 軍人やバウンティハンターらしく無い決断の遅さであたふたしている所に、さっきの声を上げた騎士団員が近付いて来て怪訝そうな表情で呟く。

「……御前達、魔力が無いのか!?」

「くそっ、まずい!」

「おい、この連中を全員ひっ捕らえろ!」

 その騎士団員の指示を切っ掛けにして、夜空の下にバトルフィールドが出来上がった。

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