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52.火柱

 翌朝。

 ソルイール帝国に居るかも知れない、その得体の知れない人間の話で頭が一杯の地球人一行は遺跡の事も後回しにして獣人の操るワイバーンでソルイール帝国へと出発した。

 と言っても明確な目的地までは決めていない。

 何故ならその得体の知れない人間が、今何処に居るのか分からない以上行く当てが無いからである。

 ソルイール帝国の領土までは半日かかるらしいので、単純に1日が24時間だとすれば12時間の飛行プランになる。


 これがもし飛行機なら、機械故にメンテナンスをすれば幾らか連続で飛び回る事が出来るが、ワイバーンは哺乳類の自分達と同じく生き物である。

 睡眠も食事も人間と同じ様にしなければならないので、やっぱりワイバーンの都合も考えなければならない。

 異世界で暮らして行くよりも地球で暮らす方が便利だ。

 1度その便利さに慣れてしまったら、なかなか便利になる前の生活に戻るのは難しい。

 それにプラスしてエイヴィリンとウォルシャンは、リオスからも「何故か武器と防具が使えない」との話を聞いていた。

 その事を聞いてみると、あの集落で武器と防具の実験をした時と全く一緒の音と光と痛みが発生したらしい。


 それを考えてもこの世界で生きて行くにはかなりのハードモードらしいので、何としてでも地球に帰りたいと言う決意を固めた3人を乗せたワイバーンは、長い長いフライトを終えてソルイール帝国へと入った。

 朝の太陽に照らされていた空はもうすっかり夜の月が見えており、この世界にやって来てから6日目の夜を迎えている事を意味していた。

「ソルイールに着いたが、問題は何処で降りるかだな……」

 人間よりは夜目の利く狼獣人のガレディがそう呟くものの、下手にソルイールの町に近づけばそれだけ地球人だけで無く自分までもが地球人の……魔力を持たない人間達の仲間だと見なされて色々とややこしい事になってしまうのが目に見えていた。

 だからそのややこしい事態を避ける為に着陸地点は慎重に選ばなければいけないだろうな、と思っていた矢先!!


 スッドゴォォォオオオオ……ンンン…………。

「んっ!?」

「な、何だ今の音は!?」

「お、おいあれ……!!」

 背中に乗っている3人の地球人がそれぞれ別のリアクションを同時に取ったのを見て、そのリアクションが指し示す先を見てみるガレディ。

 夜の闇に煌々と突然輝き始めた、花火……と言うよりはこの距離から見える限りでは余りにも大き過ぎるそれはまさに火柱と言える物だった。

 その火柱が上がっている場所に一体何があるのだろうか、と思いながらも急いでワイバーンをその方向に向けるガレディ。


 黒い煙と炎が轟々と燃え上がり、夜空をオレンジ色に照らしているその状況は絶対にただ事じゃ無いと言える。

 燃え盛る炎のそのシルエットを見る限り、何かの塔が燃えている様な……名実共に火柱が燃え上がっているのが分かる。

 今、このワイバーンが進んでいる場所からではかなり距離があるのだがそれでもこうしてはっきりと見えると言う事はかなり大きな建物の様である。

 それだけの大きさと高さの建物が燃えていると言う事は、何か嫌な予感がするのでガレディはワイバーンを一直線に炎を目印にして進ませた。


「うおっ……やばいぞあの熱気は!!」

「凄い事になってるが、このままあれを放って置いたら森にも延焼するんじゃないのか?」

「かと言って、俺達にはどうにも出来ないだろう」

 ワイバーンがその燃え盛っている建物に近付いて行くに連れて、熱風が感じられる様になり視界もオレンジ色1色に埋め尽くされつつあった。

 とりあえず手近な所に降りて、一体何が燃えているのかを確かめるべくワイバーンを着陸させるガレディ。

 どうやらここはカルブラット山脈と呼ばれる山の麓らしく、麓には森が広がっているので自分達では手の施しようも無く何時か延焼するだろう。

 だがここは帝都のランダリルから余り離れていない場所なので、帝都の騎士団がこの火事に気が付くのもそうそう時間は掛からないだろうと判断した。


(……ん?)

 そう考えていたガレディだが、地球人達が燃え盛る建物に視線を釘付けにしているその横で奇妙な事に気が付いた。

 遠目にではあるが、その燃え盛っている建物の方から1つの人影が走って来ているのが見えた。

 地球人達の視界では捉えられない距離なので地球人達が気が付かないのも無理は無い。

 そして走ってこっちに向かって来ている途中、爆発して倒壊して行く建物の姿が遠目で捉えられた。

 その人影は倒壊して行く建物に気が付いたのか、走るのを止めて建物の方を振り向き、そして座り込む。

 あの爆発した建物の方から走って来たのだから、決して無関係では無い筈だ。

「おい……誰かがこっちに向かって来ているんだが」


 地球人3人にその事を伝えてガレディがその人影の方向を指差すと、それに呼応するかの様なタイミングで人影は立ち上がってまた歩いて来た。

 その人影のシルエットが段々大きくなって来るに連れて、3人の地球人の内2人の表情が見る見る変わって行く。

「え……あ、あれって……!!」

「グレリスぅ!?」

 何故ならそれはエイヴィリンとウォルシャンが何時も自分達と一緒に行動している筈の、茶色を基調とした時代遅れのカウボーイファッションが特徴的なバウンティハンター仲間に間違い無かったからだ。

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