表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
596/625

45.混戦状態

「そ、それは!?」

「ここで見つけたんだよ。俺が。この部屋のその壁画の前でな」

 やっぱり勝ち誇った様な顔付きと声色で、見せびらかすかの様に欠片を自分の目の前に突き出す若い男。

「……それ、俺達が探してるパズルの欠片じゃあ……」

「そうなのか? しかしこれは俺が見つけたんでね。御前達に渡す訳には行かないんだよ」

 だけどそう言われてはいそうですか、と引き下がる様なエイヴィリンとウォルシャンでは無い。

 渡してくれないと言うのであれば実力行使に出るだけである。

「そうか。だったら俺達も力尽くで……」


 しかし男はウォルシャンのそんなセリフを遮り、先手必勝とばかりにパチンと指を鳴らした。

 すると音も気配も無く、バラバラと男の背後から十数人の武装した人間達が現れたのである。

「なっ……!?」

「こう言う時の為に、信頼出来る人間をこうして用意しておくのは当たり前の事だろう? それじゃ俺はこれで失礼させて貰うよ」

「おい待てっ!!」

 小馬鹿にした様な口調で、そう言いながら引き返す男を追い掛けようとするエイヴィリンとウォルシャンだが、その前に2人の足元目掛けて足止めの為に何処からか矢が飛んで来た。


 その飛んで来た矢を合図にしてバトルスタート。

 薄暗いがそれでも何も見えない状況では無いので、ガレディも加わって3人でここを切り抜ける為に戦う。

 弓兵は何処にでも居そうだが、自分がその弓兵に狙われているとなれば排除しなければいけないのは3人とも同じだ。

 飛んで来る矢は1本だけでは無く何本も飛んで来たので、確実に自分も狙われているのだと緊張感が更にエイヴィリンは高まる。

(弓兵相手にリーチは俺が断然不利!)

 だったらその矢を射って来ている奴を探し出して、さっさと仕留めなければ自分が穴だらけになってしまう。

 弓兵以外の奴も居るし、この乱戦でどっちかって言うと敵の方が多い状況。

 だがその中できちんと自分を狙う事が出来ると言うのならばかなりの弓の使い手であると言う事は、銃を使った射殺経験もあるエイヴィリンにもイメージが付き易かった。


(こうなったら……乱戦の中に紛れ込んでしまえば狙いが付け難くなる筈だ!!)

 そう考えて混戦状態の中に飛び込もうと後ろを振り向いたその時、いきなりエイヴィリンの身体に衝撃が走った。

「うぐっ!?」

 思いっ切り体当たりされたのだと分かったのは、自分の身体と密着する様に目の前に誰かの髪の毛が見えたからである。

 更にそのタックルして来た人間の背中には弓が背負われている。

(弓兵……!)

 弓兵は倒れたエイヴィリンに飛び掛かって、そのまま床に押さえつけて来た。

「ぐお、むぅ……っだらぁっ!!」

 それでもエイヴィリンも渾身の力で男を押し返す。

 押し返された男はこの乱戦状態ゆえに弓を構えはしなかったが、代わりに懐から1本のナイフを取り出した。


 弓兵の男はナイフを振りかざして向かって来たが、そのナイフのリーチを含めてもエイヴィリンの足の方が長いので攻撃を見切りつつ反対に男の腹にミドルキック。

 それからすかさず顔面に左のパンチを叩き込んでやった。

「ぐほっ!!」

 だが何とか踏ん張った男は次に繰り出されたエイヴィリンの左回し蹴りを回避し、懐に飛び込んでエイヴィリンの脇腹にナイフを思いっ切り突き刺した。

 ……筈だったが、そのナイフを持っている男の腕をエイヴィリンはギリギリ両手で押し返す。

 その押し返しから、テコンドーばりの540度キックで男の顔面を蹴り飛ばして地面に倒れ込ませた。

「ふぅ、ふぅ……!」

 早く勝負を決めないとまずいと感じたエイヴィリンは、起き上がろうとしている男目掛けて勢いを付けて身体を捻り、空中から右足を男のみぞおちに落として気絶させた。


(これで一先ずは大丈夫か)

 気絶した弓兵を見ながら、すぐにエイヴィリンは他の2人に加勢する為に動き出す。

 まだ他に弓兵が居ないとも限らない以上、少しでも弓兵に限らず他の敵の数を減らしておかなければいけないと考えるのは当たり前の事だった。

(俺達は絶対に元の世界に帰るんだ。だからこそ、こんな所でくたばる訳には行かない)

 心の中でそう呟きつつ、素手での不利な状況を今まで培って来たカンフーのテクニックで、この乱戦の状況でもなるべく1対1の状況に持ち込むエイヴィリン。

 囲まれたら終わりなので、囲まれない様に戦うのが乱戦の基本だからだ。


 それはエイヴィリンだけでは無くウォルシャンも分かっている事である。

 ガレディは武器を使う事が出来るので、乱戦状態になっても斧を振り回すだけである程度牽制出来るのだが、エイヴィリンとウォルシャンはあの謎の現象を経験しているが故に素手で戦うしか無いのだ。

 もし武器が使えれば……と思ってしまうのは当たり前の事なのだが、使えないので今更それを言った所でどうにかなる訳でも無い。だったら素手で対抗するしか無い。

 カンフーや太極拳のテクニックに限らず、時には敵の1人の身体を持ち上げて他の敵に投げてぶつけたりジャイアントスイングで武器代わりにする事でエイヴィリンとウォルシャンは確実に敵を潰して行くのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ