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39.住む世界が違う

 ワイバーンに乗った3人は、次はエレデラム公国の北に位置しているルリスウェン公国へと向かう。

 しかし、ここで足止めを食らう事実がガレディからもたらされてしまう。

「ルリスウェンは出来れば通りたくなかったが、そこにも遺跡があると言うのであれば仕方が無いか……」

「通りたくない?」

「何か理由があるのか? 通りたくないと言うのはよっぽどだぞ?」

 エイヴィリンとウォルシャンの質問に、ガレディはルリスウェン独特の気候の変化について話し始める。

「俺は風水師じゃないから天気の詳しい事までは分からないけど、ルリスウェンは昔から雨とか曇りの日が多くてな。曇りとかならまだしも、雨に降られるとそれだけでワイバーンは飛ぶのが難しくなる。だから雨が降っている様だったら一旦ルリスウェン国内に降りて、雨が上がるまで待つぞ」


 それは別に構わないのだが、問題はルリスウェンの欠片の場所である。

「南にレフォールの町って所があるんだが、そこから更に西の方に遺跡があると言う話を旅行が趣味の集落の奴から聞かされた事があってな。そこに目星を付けて俺は今向かっている。ただ、そこに何も無い様であればまた別の場所を探すつもりだ」

 そこで今後の予定についての説明は終わり……かと思いきや、最後に一言エイヴィリンとウォルシャンが唖然とするセリフを口に出すガレディ。

「……ああそうだ、その北のリーフォセリアから先の遺跡については俺も情報を持ってないから知らないぞ」

「は?」

「えっ? おいそれはちょっと待ってくれよ。その話だったらさっきの旅行好きな奴の話が活かせる筈だろ?」


 そんなピンポイントで遺跡の話を網羅していないって言うのは、ちょっと都合が良いのか悪いのか分からない複雑な気持ちとやり場の無い怒りがミックスするウォルシャン。

「俺に聞かれても知らん。そいつが旅に出たのは50年以上も前の話だしな。そして俺達の集落に帰って来たのは今から3年前。すっかり老けちまったよ」

 相変わらずぶっきらぼうで愛想の無い喋り方をするガレディだが、エイヴィリンは今のそのセリフを聞いていてあの集落に居た時から口に出来なかった質問を今ここでガレディにしてみる。

「50年……そう言えばあの集落に居た時も確か100年だか120年だか生きている獣人が居た様な気がするが……あんた達獣人と言うのは一体どう言う種族なんだ?」

 エイヴィリンのその質問にガレディは意外そうな顔をした。

「……御前達の世界には獣人は居ないのか?」

「ああ、見た事も聞いた事も無い。あんたを始めとしてあの集落の獣人達は色々な動物の頭や手足を持っているみたいだったが、こっちの世界でそんな存在が認められた日には恐らくアメリカ中……いや、世界中がパニックになる事は間違い無いだろう」

「パニック……と言われても、こっちの世界では俺達みたいな獣人が居るのが当たり前の話だから想像が出来んな」


 当たり前の話。

 そう、ガレディにとってはやはり自分達の様な存在があるのが当たり前であり、その世界で生きて来たのだから、地球の常識や獣人に対する反応の予想を聞かされた所でまさに「住む世界が違う」以上はお互いの話は平行線を辿る未来しかエイヴィリンにも見えない。

 だけど今はこの世界でエイヴィリンもウォルシャンも活動している以上、獣人と言う未知の存在が目の前で動いたり喋ったりしているのでその存在の詳細について情報を得る事は可能である。

 だからその「この世界では当たり前の事」が「地球では当たり前じゃない事」なので是非とも説明して貰いたいとエイヴィリンもウォルシャンも思っていた。

 その要望を申し出ると、ルリスウェン公国に辿り着くまでの暇潰しも兼ねてガレディが自分の種族について話し始める。


「獣人は人間と動物のハーフだ。簡単に言えば動物と人間が交尾をする事で生まれる。俺は見ての通り狼と人間の交尾から生まれたんだ」

「そうだろうな。んでその獣人って言うのは、普通の人間と違う所ってやっぱりあったりするのか?」

 ウォルシャンの質問にガレディは頷く。

「ああ。例えば俺だったら狼とのハーフだから普通の人間より足が速い。今は2足歩行をしているがその気になれば4足歩行も出来る。その時は人間なんかあっと言う間に追い付くぞ」

「ほう……」


 狼の走るスピードはおよそ時速70kmらしい、と2人は何処かで聞いた事がある。

「それから視野もかなり広い。ただし、足の速さも視野の広さも純粋な狼には負けるがな。……ああ、それと狼の言葉も理解する事が出来る」

「ほーう、そりゃーいかにもファンタジーだぜ」

 やっぱり普通の人間には出来ない事を獣人と言うのは出来るんだなー、とウォルシャンはガレディの説明を聞きながら感心していた。

(アフリカでは動物の足跡で何日前にどれ位の大きさの動物が通ったか判別出来たり、動物の病気を手で触っただけで当ててしまう部族がいるらしいが、やはりここは地球とは違う世界だから自分に半分だけだとは言えその血が流れている動物の言葉が分かるのも珍しくは無いのかもな)

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