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23.素手メインで戦う2人組

 今すぐにでも地球に帰りたいが、どうやらそうもいかないらしいのが今の現状。

 ひとまずはもっとこの世界の事を良く知って、それから世界を回って元の世界に帰る為の情報を集める。

 それでも帰れないと分かったら……もう諦めるしか無いだろう。

 少しでも地球に帰れる可能性があるのならそこに繋げて行きたい。

 そう言った思いをエイヴィリンとウォルシャンが白ライオンを始めとした獣人達にぶつけてみると、最初にウォルシャンとトラブルを起こしていたあの獣人が「そう言えば……」と何かを思い出したらしいリアクションをする。

「どうした?」

「そのソルイール帝国の魔力を持たない人間の話なんだけど、俺の旅行好きの知り合いからそれに似た奴の話を聞いた事があるぞ」

「似た奴だって?」


 もしかしてその殺人逃亡犯の目撃情報があったのだろうか?

 そう思って続きを促す2人だが、男の言い分はその殺人逃亡犯の話とはまた違うものだった。

「あ、いや……似た奴って言うのはその男に似ている格好とか顔つきの奴を見た訳じゃなくて、このアイクアル王国の領土内に3年前まで存在していた、シルヴェン王国に突然現れたって言う魔力を持たない人間の話だよ」

「え……?」

 その話だと、殺人を犯して逃亡している男とはまた別にもう1人魔力を持たない男が居る事になる。

「ならそっちの話についても教えてくれ、頼む」

 アメリカ人がそう頼むと、その獣人は旅行好きの知り合いから聞いた話の記憶を思い出しながら話し始める。

「俺も随分前に聞いた話だからうろ覚えの部分がある。それでも良いなら話すけど」

「何かヒントが得られるんだったら教えてくれ!!」


 旅行好きの知り合いから聞いた話、と言う事で自分と親近感を覚えたイギリス人も地球に帰りたいが為に必死に頼むその姿勢を見て、獣人は苦笑いを漏らしながらその武術大会の男の話をスタート。

「この世界の騎士団の人員や傭兵達は剣や槍を始めとして、武器を使った戦い方が主流だ。素手でも戦える様に訓練をするんだが、あくまでも素手は武器を失った時の最終手段にしか過ぎない。しかし、そのシルヴェン王国に現れた男女は最初から最後までなるべくその素手の姿勢を崩さなかったから、ちょっと見ただけでもかなり印象が強かったらしい」

「ああ、だろうな」

 武器による戦いが主流なのであれば、素手メインで戦う人間の存在はそれこそ異端だろう。


 しかし、イギリス人は別のポイントに注目する。

「ん……男女と言う事はまさか、2人居たのか?」

「そうだ。そのシルヴェン王国ではその男女が最終的に国の存亡に関わったらしくて、素手の他にもなるべく身近な物を使って戦ったらしい」

 その獣人からは、シルヴェン王国と言う国に現れた2人組の話が更に出て来る。

 武器を使う者ばかりとは言え、基本的に素手で戦うスタイルの人間を見たのはその知り合い曰く初めての経験だったらしい。

 その男女の内、見た感じでは男の方がメインで戦っていたらしいのだが、彼は武器を持った相手にも怯む様子を見せずにむしろガンガン攻め込むタイプで追っ手を撃破して行ったのだとか。


 そして最終的には追っ手を撒いて逃げ去ってしまったらしいのだが、その辺りの事情は人伝いに聞いた話だし、もう3年前の出来事なのでもしかしたら違うかも知れないと獣人は言う。

 それを聞き、アメリカ人とイギリス人は考え込んだ。

「武器を持った相手に、素手で真正面から挑むのはかなり厳しくないか?」

「ああ、普通はこちらも武器を持つか背後から一気に奇襲を掛けるか位だな。その男女の戦い方はその知り合いは覚えているか?」

 戦場に近い職業に身を置いていた2人としては、自然とそっちの話題にも興味が移る。


 だが、獣人の男は首を横に振った。

「いや、その知り合いはその男女が戦っていたのを丁度町中で目撃しただけで、戦いそのものが好きって訳じゃないらしい。だから戦い方までに関しては素手で戦っていた、と言う事位しか覚えていないんだそうだ」

「そう、か……それじゃ2人の容姿については?」

 3年も前の事なのでそれもおぼろげではあるらしいが、男は白いズボンに黒だか灰色だかの上着を着ていて、女は緑だったか黄色だったかのシャツを着ていた事しか分からなかったらしい。

「2人は大勢に追われていたらしくて、すぐ目の前を通り過ぎただけだから良く見えなかったんだそうだ。だから見た目の年齢とかまでは知らないと言っていた」


 ならば、と聞く方向を変えてみる。

「さっきのその……ソルイールの中年の男なんだが、そっちの奴は騎士団長とか国の英雄を倒せる程に凄い奴ならどう言う戦い方をしていた……って言うのは手掛かりに無いかな?」

 中年の男の戦い方が分かればそれも手掛かりの1つになるので聞いてみたかった地球人の1人だが、村長の白ライオンは首を横に振る。

「戦い方まではこちらも聞いていない。騎士団長と英雄をその男が殺したって言うのはどうやら事実らしいのだが、素手で戦っていたと言う話しか無いし手配書も回って来たんだが、似顔絵の他には背格好とか服装とかしか書いていなかったな」

「うーん、そうか……」

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