表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
573/625

22.追われている男

「……落ち着いたか?」

「ああ、何とか。お前は?」

「俺も大丈夫だ」

 お茶を飲んで少しは気分が落ち着いたアメリカ人とイギリス人は、お互いに状態を確認して白ライオンの質問に答える。

「答えから言わせて貰えば、全く心当たりは無い」

「エイヴィリンの言う通りだ。俺達はこの世界にやって来たのはこれが初めてだし、その話を聞いたのも今が初めてだ。それに俺達には情報が足りねーからな。その魔力を持たない人間の情報がまだ必要だ」


 魔力を持たない人間はどの様な容姿をしていたのか?

 ある事件、と言っているがその人間は一体何をやらかしたのか?

 少なくともそれが分からなければどうしようも無いので、その辺りの情報提供を獣人達に求める。

 しかし、情報提供を求められた白ライオンの口からは更に驚きの情報が!!

「私達が知っている限りでは、確かその魔力を持たない人間はソルイール帝国の騎士団長と国の英雄を殺したって話だ」

「は?」

「殺したっ……て……それってまさか殺人の罪なのか、そいつは?」

「どうもそうらしい」

 神妙な顔つきで白ライオンは肯定する。


「ソルイールの方からアイクアル王国にその男の情報提供を求められているのだが、今の所、まだその男は見つかっていないらしい」

「って事は、まだこの世界の何処かに隠れている可能性があるな」

 少しの可能性をエイヴィリンが考えてみるが、もしくはもう既に自分の世界へと帰ったかも知れない。

「魔力が無い」と言う情報だけでは、その男が自分達と同じ地球から来た人物かどうかは分からない。

 地球と違う文明を築いて来た歴史を持ち、尚且つ地球では絶対に見られない魔法やら魔術やらのある世界がこうして存在しているのだから他にも違う世界があっても不思議じゃ無いだろう、とエイヴィリンもウォルシャンも考えていた。


 しかし、そこまで考えていた2人の内エイヴィリンがある事に気が付く。

「ん? ちょっと待てよ……今あんたはその人物が男だと言ったな? その情報はソルイール帝国から伝えられたのか?」

 男女の性別が最初はハッキリしない切り出し方だったのに、何時の間にかそのソルイール帝国で殺人を犯して逃げ出した人物は男である、との話になっていたのを不思議がったのだ。

 そこに違和感を覚えたエイヴィリンが質問をぶつけると、白ライオンはハッキリと頷いた。

「そうだ。アイクアルにもたらされた情報によればその人物は男。それも御前達よりも見た目の年齢が上らしい。あくまで見た目だから本当の年齢は分からないとの話もあったがな。体格に関してはやや細身寄りの中肉中背で、顔には髭を生やしていて服装が赤いシャツに青のズボンを身に着けた男らしい」


 かなり詳しい情報がもたらされた。

「なるほどな。良く分かった。でもそんな男が何で騎士団長や国の英雄を殺さなきゃいけなかったんだ?」

 それ程までにかなりの重要人物を殺してしまう事情があった、と言う事になるのは話を聞いている限りでも明らかだが、それについてもエイヴィリンとウォルシャンは気になる。

「その魔力を持たない人間は、騎士団長と国の英雄に追われていたらしい。詳しくは私達にも知らされていないんだが、おそらくそれだけの事をしたんだろう」

「だよなぁ。そうじゃなかったら普通は追われたりしねーと思うけど」

 ウォルシャンが白ライオンの説明に同調する横で、エイヴィリンが1つの可能性を考える。

「……そう言えばこの世界では、魔力を持たない人間って言うのは珍しいんだったか?」

「珍しい所か、本来は存在しない筈の生命体と言えるだろう。私達獣人もそうだが、この世界にある魔力と言うものは神が生み出したものと言われている。だからこの世界に生まれて来る人間や獣人のみならず、例えばその辺りに落ちている石ころだったり生えている草木だったりと言うもの全てに必ず魔力が存在しているんだ」


 だけど、と白ライオンは続ける。

「その魔力を持たない人間が自分達の国に現れたとなれば、放っておいても問題無いと思う国は少ないだろうな。現に私達もこうして御前達の様に魔力が感じられない人間が目の前に居る事が信じられん。私達だって本当は御前達を存分に調べてみたい気持ちで一杯だ」

「……そうか」

 色々な意味にも取れるものの、どの意味に転んでもやっぱりお断りしたい気持ちになるエイヴィリンとウォルシャン。

「だが、御前達は元の世界へ帰りたいのでは無いのか?」

「ああ、帰りたい」

「帰れるなら今すぐにでも帰りたいんだがな」

「なら、もしかしたらその男はまだこの世界に居るかも知れん。ソルイール帝国に御前達が向かえばその男の仲間と見なされて追い掛け回される可能性があるかも知れないが、そのリスクを冒してでも向かいたいと言うのなら私達も止めはしない」

 そこまで言われたら、2人はその男の行方を探し出したいと言う気持ちになってしまう。

「出来る事ならそうしてくれた方が助かる。俺達はこの世界から無事に地球に帰りたいからな」

「何事も無く帰れるならそれが1番だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ