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6.ホテルでのミッション

「……!!」

 咄嗟にエイヴィリンは、自分が黒帯を取得させられるまで組織のトレーナーからトレーニングさせられたカンフーで培った反射神経を活かして、銃口を手で弾く。

 そのままベテランメンバーに向けてカウンターの要領でトリガーを引くものの、ベテランメンバーもすんでの所で地面を蹴って横っ飛びで回避。

 この狭いホテルの部屋の中で良くそんな動きが出来るもんだ、とエイヴィリンは内心で感心してしまったが、その考えをすぐに打ち消す光景が目の前に見えた。

 ターゲットの男が今度はエイヴィリンに銃口を向けていたのだ。

 普通に回避は出来ないと踏んで、自分が1番入り口に近い場所に居たエイヴィリンは後ろに跳びつつ自分の両足を目一杯開き、その間からターゲットの持っているハンドガンを狙う。

 ハリウッド映画では良く見られるこのフォームで撃たれたその銃弾は、見事にターゲットのハンドガンを弾き飛ばし……は出来なかった。


 やはり映画の様に上手くは行かない結果だったが、それでもターゲットの発砲をストップさせる事は出来た。

 銃口がこちらを向いていると分かれば、割と先に撃ってしまった方がアドバンテージを取れる。

 まさに先手必勝のそのやり方で、エイヴィリンは後ろに背中から着地しながらもゴロッとそのまま後転し、ホテルの部屋を飛び出て廊下を全力疾走し始める。

「逃げたぞ!」

「逃がすかっ!!」

 後ろからターゲットとベテランメンバーのそんな声が聞こえて来たが、エイヴィリンはこのまま逃がして欲しいとばかり考えていた。

 何故ベテランメンバーが自分に銃口を向けたのだろうか?

 何故自分がこうして追いかけ回されなければならないのだろうか?

 もしかしてこの状況は、自分がターゲットに切り替わったのか?


 考えれば考える程に頭がパニック状態になって行くが、考えるのは後でも出来る。

 今はとにかくあの2人から逃げ切る事が先決だと思い、エイヴィリンはホテルの中を駆け回りながらリボルバーを発砲し始める。

 当然そんな事をしようものなら、ホテルの中には彼等だけでは無く他の客や従業員も居るのでたちまち騒ぎがホテル全体に広がって行く。

「何だ、銃声か!?」

「きゃあああああっ!!」

「警察だ、警察を呼べ!!」

 パニックになっているのはエイヴィリンだけでは無く、ホテルの人間も同じこの状況で当事者であるエイヴィリンは上へと逃げる。

 エイヴィリン自身は下の方に脱出しようかと思ったのだが、若さ故か冷静な性格ではあるものの焦ってしまった結果が階段を上へと上がらせている状況だった。


 それでも、もう逃げて来てしまったものはしょうが無い。ホテルの下の方はパニック状態が続き、じきに警察もやって来るだろう。

 エイヴィリンは何とか頭を回転させる。

(屋上……そうだ、屋上にも非常階段はある筈だ。後ろから来ている奴等を何とか倒すか隠れるかしてやり過ごし、非常階段を使って下に逃げれば!!)

 落ち着いて考えてみれば幾らでも脱出ルートが見つかりそうだと思い、エイヴィリンは徐々に冷静さを取り戻して行く。

 冷静さを取り戻す中で、先程から心に引っ掛かっていた事も息を切らしながらだが考えられる様になった。

(後ろから俺を追いかけて来ているこの2人は、きっと裏で繋がっていたんだろうな。そして今回、運悪く俺があのターゲットの男を始末するミッションをこうして引き受けて、更にその指導役として選ばれたあの先輩にとっては非常にまずい事になる。だから裏切ったあいつはここで俺を殺そうとして……)


 まさかの裏切りの連鎖。

 ベテランの指導役の人間は組織の先輩として尊敬していたエイヴィリンだったが、今はもう尊敬では無く憎しみの対象だ。

 でも、そんな尊敬していた人間でも敵に回るのであればエイヴィリンは容赦しない。

 だからエイヴィリンは屋上へと続く階段を上がり、夜風が吹き荒ぶ屋上へとドアを蹴り破って飛び出る。

「くっ!」

 周辺のビル風もミックスして屋上はかなり風が強い。

 雨が降る可能性も考えられるので、そうなればその雨が来ない内にさっさとここから逃げなければならないのだが、後ろから追いすがって来る裏切り者2人は簡単にエイヴィリンを逃がしてはくれそうに無い。


(こうなったら……!!)

 一か八かでエイヴィリンは、今しがた自分が蹴り破ったドアをタイミングを見計らって蹴り閉める。

「ぐおっ!?」

 ガンッと音がして、ターゲットの男がドアにぶつかる音が聞こえた。

 だがそれで勿論終わりでは無い。エイヴィリンはこのドアを蹴り閉めたのは攻撃の為では無い。

「……のやろおおおお!!」

 そう、怒りで我を忘れさせる為だったのだが案外上手く行ってしまった。

 怒りで周りが見えなくなっているターゲットの男が屋上に飛び出て来た所を見計らい、エイヴィリンはそのターゲットに手が届く位まで接近してからそのターゲットの額に向けて、至近距離から発砲して絶命させる。

「がっ……!」

 奇妙な声を上げて、ターゲットは鮮血と脳漿を撒き散らして絶命した。

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