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59.結末

 馬に負担を掛けない様に……と思っていても焦りが心の中に少なからずあるせいなのか、馬のスピードをついついアイヴォスはトップスピードにまで上げ気味になってしまう。

 流石に馬もバテてしまい、ペースをそれまでよりも大幅に落とさざるを得なくなってしまった頃に、アイヴォスの目の前に真っ赤な夕日に照らされる町並みが見えて来た。

(あれか!)

 馬が限界に近いのでペースを上げる事が出来ないのがもどかしいが、アイヴォスはようやく辿り着いた町の光景に安堵の息を吐いた。

 だがすぐに顔と気持ちを引き締める。

 アーシアとそしてコルネールを見つけてその姿を確認し、2人から色々と話を聞かせて貰うまではまだこのチェイスは終わりでは無いからだった。


 この町に入る為に、色々と時間の掛かる検査をされる事が無かったのはアイヴォスに取って救いだった。

 町の中に入ってバテた馬を預け、早速この町の人間にコルネールの特徴を伝えて行方を追う。

(やっぱりあの男の特徴は掴みやすいな)

 かなり堂々とこの町に入って行ったらしく、アーシアと言う大きな荷物を抱えたコルネールの存在は多くの人間に目撃されている。

 だからこそ、3人位にコルネールの行方を聞いてみれば最終的に1つの大きな建物の中に辿り着いた。

(サリスイール会館はここか……?)

 そこは貴族の屋敷……だった場所で、既に古びた廃墟となっている。

 おとぎ話に出て来る魔王の城の様な存在なのかも知れないが、やっぱりアイヴォスはそっち方面の知識には疎いので良く分からない。


 それでもコルネールがアーシアを連れてここに来た、と言うのは町の人間達への聞き込みで明白なので入り口のドアに手を掛けてみる。

 ロックでも掛かっているのかと思いきや、意外と入り口はすんなり開いてしまった。

(……私を待っているのか?)

 まさかな……と思いつつも、腰の刀に手を添えて何時でも抜ける様にしながら屋敷の中を探索し始めるアイヴォス。

 一体何がこの先に待ち受けているのだろうか?

 本当にコルネールはこの先に居るのだろうか?


 そのまま色々と屋敷の中を見回って、ようやくコルネールの元に辿り着く……前にある事に気が付いた。

(水の音がする……?)

 不思議に思って屋敷の裏を見下ろせる窓から下の方を覗き込んでみれば、そこには小さな船着場があるではないか。

(やはり貴族だからこう言う設備もあるのか?)

 これだったら漁に出てそのまま直に戻ってくるのも楽だろうな、と思いつつ改めて屋敷の中を進んで行く。

 軍人としての勘と経験、そして気配で何と無くだが分かる。

(この屋敷の中に、間違い無くコルネールは居る……)


 大きな屋敷と言ってもそこまで大きな物でも無く、1階部分と2階部分しか無いので捜索するのはそんなに時間が掛からない。

 2階部分もあらかた見終えたが、まだ見ていない部分はある。

 だからその見ていない部分へと足を進めて行くと、屋敷の主人が使っていたと思われる大きな部屋の豪華なドアの前に辿り着いた。

 そのドアの向こうから声が聞こえて来る。

「コルネール、今ならまだ引き返せるわよ!」

「うるせぇ!! 俺はもうカシュラーゼの人間になったんだよ!!」

 この2つの言い争う声は間違い無くアーシアと、そしてコルネールの声である。


 何やら只事では無い様なので、アイヴォスは部屋のドアをバンッと思いっ切り押し開ける。

「……なっ、テメエは……!!」

「あ、アイヴォス!?」

 リアクションこそ少し違えど、驚いているのはアーシアもコルネールも一緒だった。

「そうか、あいつ等はどうやら駄目だったみてーだな」

「貴様、ここで何を企んでいる?」

 納得するコルネールにアイヴォスはそう問い掛けてみるが、コルネールは鼻で「はっ」と笑った。

「しつこい奴は嫌われるぜぇ? ここでは出発の最終準備をしてたんだ。俺はカシュラーゼで大隊長待遇で迎えられる事になってるんだよ。いずれは騎士団長さ」


 けどその前に……とコルネールはコートの内側から短剣を取り出して、後ろ手に縛られたままのアーシアの長い金髪を掴んで引き起こす。

「うあっ……!?」

「俺の邪魔をする奴は、こうなるんだよ!!」

 アイヴォスが動き出すよりも速く、コルネールは何の躊躇もせずにその短剣でアーシアの喉をかき切った。

「ぐふっ……!?」

「あ、アーシア!?」

 そのまま力無くアーシアは床に倒れ、そしてコルネールはそんなアーシアを放って部屋の後ろにある窓に突っ込んで屋敷の1階へと飛び降りた。


「アーシア、おいしっかりするんだ!! アーシア!」

 喉から大量の出血をしているアーシアだが、ギリギリ喋れる部分をかき切られたらしい。

「あ、い……」

「喋るな!」

「コルネー、ル……止めて……ここ、爆発……逃げ……」

「な、何っ!?」

 衝撃的な一言を残して、アーシアはそのままアイヴォスの腕の中で息絶えてしまった。

「……くそっ!!」

 悲しむのは後だ。まずはコルネールを止めなければ!!

 アイヴォスがアーシアのセリフを信じ、コルネールが逃げた窓から一気に飛び降りた瞬間にその屋敷が物凄い音を立てて爆発し始めた!!

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