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22.国の存亡に関わった異世界人(?)

「それではまず、なるべく多く覚えている方から説明が欲しい」

「それだったらまずはエスヴァリークの騎士団長と関わりがあったって言う、男女2人組の方だな。こっちは3年前にアイクアル王国の中に存在した、シルヴェン王国の存亡に関わった話でもある」

「国の存亡か……」

「ああ。男女2人のコンビで、背は低くて……それでも最終的には王国騎士団を敵に回してシルヴェン王国の未来を決める為に戦ったって話だ」

「……国の未来に関わったのなら、その2人は王国の味方じゃなかったのか?」

 シルヴェン王国と言う国が存在「した」のなら、その2人も一緒に散ってしまったのでは? とアイヴォスは話の続きを期待半分、不安半分の気持ちで待つ。

「まあ待て、その前にこの世界の人間が戦う時の話だ。この世界では一般的に剣や槍や斧等の武器を持つのが当たり前だ。あーっと……でも、軽い喧嘩や酔っ払いのいざこざとかなら素手での取っ組み合いとか殴り合いとかもある。けど、ここでの戦うって言う意味は戦場に立つ騎士団員だったり各地を放浪している傭兵だったりの話だ。武器の扱いに慣れていない奴は魔術を使う。両方出来るなら両方とも使う。でも……」


 そこまで話を引っ張ったコルネールは一旦セリフを切って、やや興奮気味な口調でその人間の戦い方をアイヴォスに伝える。

「その2人は素手で騎士団と渡り合ったって話だ。武器を持った相手にも1歩も退かずに、むしろ攻撃をスルリとかわしてから反撃に移るまでが凄く上手かったらしい。あれは武器を持っている相手と普段からやり合ってなければ、そうそう出来ない動きだとその戦いに参加していた傭兵の知り合いが言ってたぜ」

「そうか。ちなみにその2人はどんな容姿だった? 背格好とか年齢とか髪の色とか……」


 武器を持っている相手に素手で立ち向かうのはかなり難しい。

 それこそ後ろから一気に近づいて抑え込むか、こちらも複数人で一気に抑え込むか等で対処するべきなのだが……と考えつつも、アイヴォスはなるべくその2人の情報を聞き出しておいた方が後々出会える可能性が高くなると踏んで更に質問をする。

 だが、コルネールからの返答は「曖昧にしか分からない」だった。

「あー……それなんだけどな。俺の知り合いの話だから不確定情報になるけど良いのか?」

「構わん。情報はあるに越した事は無いからな」

 何のためらいも無く貪欲に情報を求めるスタイルのアイヴォスに、コルネールは「じゃあ全部話してやるよ」と言って話せるだけの情報を提供する。

「その2人を近くで見た奴の話によると、男の方は20代前半位。余り身長は高くは無い奴で、戦う時には背が低いのをスピードで補っていたらしい」

「スピードで……」


 この時点でアイヴォスが真っ先に思い浮かべたのが、東南アジアのタイで発祥したムエタイだった。

 ムエタイは他の格闘技と比べて背が低い選手が多く、肘と膝を多用するのでそれを使えばパワー不足も幾らか補えると考えた。

 ちなみに、アイヴォスの習っている空手の膝蹴りとはフォームもまた違うものなのだ。

 肘による攻撃も空手にはあるものの、実際の試合ではフルコンタクト空手や極真空手で認めている団体や流派もあれば反則技として使用禁止となっている流派もあったりするので流派によって肘への考え方は違う。

 正式には猿臂えんぴと言い、アイヴォスも猿臂に対しては苦い思い出がある。

 記念すべき……とは言えないかも知れないが、最初の1度目の肘のテクニックの思い出は師範にアイヴォスがハイキックを出して、師範が肘で受け止めると言う動きを「軽く」やって貰った事だった。


 勿論最初なので師範の肘でのブロックには手加減があるものの、なかなかのハイキックを繰り出したアイヴォスが肘で軽くブロックされただけでもかなりの衝撃を「アイヴォスが」食らったのは今でも覚えているらしい。

 アイヴォスが習っていたのはフルコンタクト空手なので、実際に試合で肘でのブロックやカウンター……それこそアイヴォスの思い出の様にハイキックだったり回し蹴りを肘で迎撃するテクニックも存在する。

 この様に肘だけでもかなりの威力があるのだが、空手はその肘を多用しない。

 むしろ使うのは拳による突きの方が多いので、その男が使っていた素手の格闘術は空手では無いと何となくだがアイヴォスは考えていた。


 続いて女の方の話も聞いてみる。

「女性の方は?」

「女の方は余り詳しく分からないらしい。その男と一緒に行動しているのを数回見た事がある程度らしいんだが、男よりも更に背が低い黒髪の女だった……としか聞いていないな」

 アイヴォスの先を見越したセリフに、コルネールも頷いて結果から話す。

「そうなのか。しかし……その2人はシルヴェン王国と言う国に現れたのだろう? なのに何故エスヴァリークの騎士団長と関わりを持ったんだ?」

「さあな。そのシルヴェン王国を領土内に有していたアイクアル王国と言えばこのヴァーンイレスの西にある国で、反対側がエスヴァリークだから俺達から見ると隣同士なんだよ。距離としてもそこまで遠く無さそうだし、何か任務があってシルヴェン王国に行ったんじゃないのか?」

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