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18.バッドタイミング

「もしその細かい国まで全てひっくるめた地図が必要なら、それも一緒に渡す事も出来るけど……」

「ああ、一応貰っておこう。新しい地図を買ったら返すからそれまで……」

 そう言いかけたアイヴォスに、アーシアは手をブンブンと横に振ってまたもや「NO」の意思を示した。

「いや、それはもう使わないから別にもう持って行っちゃって大丈夫よ。買おうと思えば私は何時でも地図を買えるからね」

「そうか。ではありがたく頂いておこう。感謝する」

 と言う訳でこのエンヴィルーク・アンフェレイアの世界地図とヴァーンイレスの地図、それから細かい国まで網羅しているエスヴァリーク帝国の地図をゲットしてエスヴァリークへの出発準備が整って行く。

 そこでふとアイヴォスが考えてみたのが、この小屋からまだ1歩も外に出ていないと言う事だった。

 お互いの自己紹介から始まり、自分達の世界の説明や戦争についての話、そしてこれから何をすれば良いのかと言う事を話し合ってばかりだったので外に出たい気持ちがアイヴォスは強かった。

 エスヴァリーク帝国に向かう為に馬を調達しなければならないと言うのなら尚更だろう。

 それと同時に、金を稼ぐ為の手段もどうにかして見つけなければいけないのでますます外に出なければならない。


「そろそろ外に出たい。金を稼ぐ手段と移動手段を見つけて、エスヴァリーク帝国へと私は向かいたいからな」

「そっか……じゃあ変装して」

「変装?」

「さっき私が渡したローブがあるでしょ。それに上手い具合に身を隠してさっさとこのイレイデンから抜け出すわよ。無事に抜け出す事が出来たら町の外に立っている道案内の看板の所に立っていて。そこで馬を渡すから」

「分かった」

 只でさえ魔力が無い事でああだこうだと呼び止められ、結果的に余計なトラブルを招いてしまうよりは格好だけでもこっちの世界の人間達ーーーと言っても今の所はこのアーシアしかアイヴォスは見た事が無いのだがーーーと同じ様な格好をしている方がまだマシなレベルで怪しまれるリスクを回避してイレイデンを脱出出来ると考えた。

 それでも完全にリスクを回避出来る訳では無いので、脱出するならさっさと脱出してしまうのが1番良い。


 その気持ちで出発しようと思っていた矢先、思わぬ出来事が2人の元にやって来る。

 ドンドンドンッ!!

「おーいアーシア、居るかー?」

「えっ、あ……ちょ、ちょっと待ってて!」

 入り口のドアを強めにノックする音の主。いざ出発と言う時になってまさかの来訪者。

 そしてアーシアはその主とは知り合いの様である。

「まずいよ、私の元彼!!」

「……隠れた方が良いか?」

「そうね。もうこの際しょうがないから窓から出て貰えないかしら?」

「分かった」

 このままだと男女関係のトラブルに発展してしまう可能性もあるので、ここは一旦アーシアの言う通りに窓から出ておく事を決意するアイヴォス。


 しかし、その行動が完全に裏目に出てしまうのはそれからすぐの事だった。

 アイヴォスが窓から外に出る前にノックの音が止んだかと思うと、土と落ち葉が入り混じっている地面をザシザシと踏みしめる音が窓側に現れた。

「アーシアー、居ねーのか……っておい、何だお前は!?」

 まさにバッドタイミング。

 これ以上のバッドタイミングは、アイヴォスの今までの人生の中でも味わった事は無いだろうと言える位のものだった。

 何せアイヴォスが窓から外に出るのと声の主が窓側に回り込むのはほぼ同時のタイミングだったので、幾ら軍人として日常的に身体を鍛えている身のこなしの素早いアイヴォスだって、タイミング次第ではもう1度窓の外から家の中に入る事は不可能だったからだ。

 そうなれば当然声の主がアイヴォスの姿を発見してしまう。

 しかも逃げる様に……いや実際逃げ出す予定だったアイヴォスのその行動は、はたから見れば明らかな不審人物以外の何者でも無かった。


「おいっ、テメェ人の家で何してやがる!!」

「……ま、待て落ち着け……」

 背中に背負った、かつて日本旅行でアイヴォスが見た事のある「ナギナタ」に似ている形状の槍を構え、ジリジリとアイヴォスに近づいて来る。

 男は白くて長い髪の毛をオールバックに垂らしており、顔に大きな傷があるのが何よりの特徴である。

 アイヴォスはこれ以上話がこじれるのを防ぐ為、両手をホールドアップの体勢にしながらも明らかに興奮状態にある男を宥めるべく口を開く。


「落ち着いて話そう。とにかく私とアーシアとそれから君と3人で話し合うべきだ」

「うるせぇ!! 俺の女に手を出したのか? 出したんだな!?」

(駄目だ……)

 このままだと話が通じないままでややこしくなるだけだろう。

 顔に傷がある男をまず落ち着かせ、それから話を聞いて貰わない事には何ともならないので、ここは下手に逆らわない様にしつつも自分の言い分はしっかり言っておいた方が賢明だ、とアイヴォスは判断。

「アーシアの事を言っているのか? それだったら私は彼女に手を出していない。私はこの近くで倒れていたのを彼女にここまで運んで来て貰って、そして介抱して貰っていただけだ」

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