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15.使えない理由

 だから貴方も早くこの国から出る事を勧めるわ、とアーシアが言うのでここは素直にそのアドバイスに従ってアイヴォスはその提案を受ける。

「分かった。それで肝心の国外へのルートなんだが、どんな乗り物を使ってどれ位の時間が掛かる?」

 事前にシミュレートしてから行動に移すタイプのアイヴォスは、出来る限りの情報を先に聞いておくのは当たり前だと思っている。

 なので今回も同じ様に聞き出せるだけの情報を聞き出そうとするアイヴォスだったが、どうにもこうにも曖昧な情報しか返って来ない。

「あー……うん、それなんだけどね……何も無ければこの王都イレイデンからは馬を使って東にずっと向かって、そこから陸地でエスヴァリークとの国境を超える形のルートで大体5日位って所かしら。貴方は馬に乗った事はあるかしら?」

「馬……は趣味程度にならある」

 日本の文化に憧れる内に、武士がヨーロッパで言う所の騎士と同じ様な存在であると言う事を知ったアイヴォスは、将来武士になり切る予定ならば自分も馬には乗れていた方が良いだろうと言う事で乗馬の経験を高校入学から卒業まで積んでいた過去がある。

 なので乗馬に関しては特に問題無いと考えているらしいが、5日と言うのはそれでも結構な長旅だ。


 だから馬以外にもどんな移動手段があるのかを聞いてみると、アーシアからはファンタジー世界らしい回答が出て来た。

「馬以外かぁ……そうねぇ、お金は掛かるけど例えばワイバーンとかドラゴンとか、それから転送装置とかかしらね?」

 ワイバーンはイギリスの紋章等で見かける事が出来るし、ドラゴンはヨーロッパ全土で空想上の生物として広く知られているのでアイヴォスも耳に挟んだ事はあるし、実際にイラストで見かけた事もある。

 だけど所詮、地球においては神話だったりそれこそ空想上の生物であるが故に実際にその姿を生で見た事は当然アイヴォスには経験が無い。

 もし、そのワイバーンやドラゴンがアイヴォスのイメージしている生物と一致するのであれば、空を飛んで一気にエスヴァリーク帝国まで乗せて行って貰う事も出来るのでは無いか? とアイヴォス自身はそう思っていた。


 しかし、最後にアーシアの口から出て来た転送装置を使えば良いんじゃないかと思ってしまう。

 さっき説明して貰ったばかりだが、もう1度その転送装置について話を聞いておく事でアイディアが浮かぶかも知れない。

「転送装置についてもう1度説明して貰えないか?」

「それじゃもう1度だけよ。転送装置は魔力を使って人や物を転送させる事が出来る装置ね。開発されたのは100年位前で、当時は小さな物しか転送出来なかった上に魔力が上手く供給されなくて装置が誤作動を起こしたりして大変だったらしいのよ」

 だがその後に研究と改良を重ねる事により、大きな物や人も転送出来る様になったりしたらしい。


 けど……とアーシアは首を横に振る。

「やっぱり転送装置は使えないわね。転送陣ならそれ相応の魔術が使える人と繋がりが出来ればあり得るかも知れないけど」

「ん……転送陣とは何だ? それに何故転送装置が使えないのだ?」

 転送装置の他にまたもや知らない単語が出て来た。

 当然その事もアイヴォスはアーシアに説明を求めつつ、片手ではしっかりとメモを取る。まずは転送装置が使えない理由についてアーシアが説明してくれる。

「転送装置って言うのは、開発に成功して100年位の時間が経った今でも高額なのよ。何てったって物や人を違う場所にワープさせるシステムなんだから、その開発に成功しただけでもかなりのコストが掛かっているわ」


 それに、とまだ他の理由があるらしいのでアーシアは続ける。

「コストが掛かっている分転送装置の値段は高いからなかなか私達みたいな一般庶民に手は出せないし、設置するのにも色々と手続きが必要で手間も時間も掛かるし、何より魔力を定期的に補充しなければいけないからそれなりの魔力を補充出来る人間が居ないと利用するのも一苦労だから、幾ら近年の転送装置が小型になってスペースを取らなくなって来たと言っても、なかなかそうした理由から全然普及してないのよね」

「分からんでも無いな」

 動かす原理やスケールは違うが、それこそ自家用の小型飛行機やヘリコプターを所有する様な話なのだろうとアイヴォスは思ってしまった。


「だから所有しているのは何処の国でも貴族が大多数ね。一般の国民でそう言うのを持っている人は、そうした貴族の知り合いから譲り受けたり相当借金してまでも欲しかったりした人でしょうね。このヴァーンイレスでもそう言う人を見かけた事があるから」

「金持ちの特権みたいなものなのか」

 ポツリとそう口に出したアイヴォスの家柄も、別にそこまで悪くは無い中流家庭だ。

 しかし流石に自家用の飛行機やヘリコプターを所有する様な家柄のレベルと言う訳でも無いのが現実だ。

「だからそうした貴族に知り合いでも居れば転送装置を利用できる可能性はあったんだけど、ここは今カシュラーゼ軍に占領されているから無理なのよね」

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