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8.メモ

 アイヴォスのそんな問い掛けに、アーシアはハッとした顔つきになった。

「……あ、そう言えばそうね……。そもそもの話、魔力を持たない人間って言うのがまずこの世界じゃあり得ないのよ。少なくとも今まで貴方みたいな存在は見た事も聞いた事も無いから、これはもしかしたら世紀の大発見って事になるんじゃないかしらね?」

 やや興奮気味にそう言ったアーシアだが、アイヴォスにとっては34年間この身体でこうして生きて来たので魔力がどうのこうのと言われてもさっぱりだし、魔力とかって言うのはそれこそファンタジー世界の話だと思うが、アイヴォスはそっちの知識がまるで無いので全然分からない。

「……ひとまず、まずはこの世界の説明からお願いしたい。私はあいにくこっちの世界の人間では無い様なのでな」

「そうね、それが良さそう」


 まずはこの世界の事を知らなければ、戦争がどうのこうのと言う事を聞いてもまるで何も分からない。

 だからその戦争の話は一旦置いておき、先にまずこのエンヴィルーク・アンフェレイアと言う世界の事をこの世界の住人であるアーシアが代表して、地球代表のアイヴォスに教える事にする。

「この世界は伝説によると、はるか昔に2つの神が創ったの。「エンヴィルーク」と「アンフェレイア」って言う2つの神が居て、大地を創って空を創って海を創って山を創って、そして人間を始めとして幾つもの生命体をこの地上に生み出したのね」

 手始めにこの世界の創世の歴史から話し始めるアーシア。

 しかしそんな彼女の話を聞いていたアイヴォスは、ここで早くもストップをかけた。

「ちょっと待ってくれ」

「え?」


 まさかもうストップを掛けられるとは思っていなかったアーシアは、アイヴォスのそのセリフにキョトンとした顔つきになる。

「どうしたの?」

「1度に色々言われてもやはり覚え切れないだろうし、後から何回も聞き直すのも悪いからな。相手が話している最中に失礼とは分かっているが、ここはメモを取らせて貰っても構わんか?」

「メモ……あー別にそれ位なら良いわよ。そう言うの私は全然気にしないタイプだし、しっかり理解して貰った方が確かに私も理解する手間が省けるから、ちょっと待ってね……紙とペンが確かこの辺りに……」

 アーシアはそう言いながら、先程地図を取り出して来た場所の上の方をガサゴソと漁ってお目当ての物を発見した。

「あったあった。はいこれ紙とペンね。それじゃ今の創世の話をもう1度聞きながらメモする?」

「ああ。しかしそれは今聞いた話だから再度の説明は不要だ」


 流石に聞かされたばかりの話を忘れる程アイヴォスも脳が衰えてはいないと自負しているので、その話をメモしてから続きを促す。

「この世界を創世したのがエンヴィルークとアンフェレイア……と。それじゃ続きを頼む」

「ええ。そのエンヴィルークとアンフェレイアって言うのは元々大きなドラゴンの姿をしていたんだって。だからこの世界を創ったのはドラゴンだって事にもなってるから、言うなればこの世界でのドラゴンは尊敬の対象なのよ」

「ドラゴン……」

 ドラゴン、と言う名詞だけでファンタジーな世界だと言う事が一気に現実味を帯びて来る様な気がしているのは、それこそドラゴンが空想上の生き物だからなのだろうとアイヴォスは思った。


「うん。最初の内はドラゴンの姿で人々と関わっていたみたい。そして人間や動物達がそれぞれの生活を確立した後に、もう自分達の役目は終わったって事でエンヴィルークもアンフェレイアも人の前に現れる事は無かったんだって」

「その2匹のドラゴンが、この世界を創り上げたいわゆる神様なのだな。しかしまた、何故この世界を創ったのだ?」

 アイヴォスの質問にアーシアは困った顔つきになる。

「私に聞かれたって困るわ。それこそ何処かの図書館とかに行けばその理由が載っている本があるのかも知れないけど、少なくとも私はその理由は知らないわね。逆に聞くけど、貴方の世界はどうやって誰が何の為に創り出したの?」

「……」


 そうだ、そんなの自分だって知らない。

 地球がどうやって創り出されたのか? それから色々な宗教が自分の住んでいる地球上には存在しているが、宗教の中で信仰する存在はバラバラなので一言で「神」と言われてもどの神が地球を創りだしたのかなんて分からない。

「……知らないの?」

「ああ、知らない。神って言っても色々な存在がこちらではあるんだが、どの神を信じるかは人それぞれ。勿論信じなくても生きて行ける。こちらの世界の創世の話は色々な説が唱えられているが、実際にその創世の瞬間を今の私の世界で見た事がある人間なんて誰も居ないだろう。……そして、それはこちらでも同じか?」

「そうね。もうかれこれ5万年以上は前の話だから……」

 その年数だけ聞いてみれば、誕生してかれこれ40億年は楽に突破している地球の時間の方が歴史が長い。それは当たり前だ。

 だけどその理屈は通用しない事はアイヴォスも分かる。何せ、ここは「異世界」なのだから。

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