表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/625

47.やっぱり効果無し

 そして、男が答えたホルガーの行方は……。

「いいや、騎士団の連中が言っていたのはあんただけだったって、倒れていたのは。黒髪の男については知らないんだけど、一体何があったんだ?」

「……出来れば、騎士団員の人達と一緒に聞いて貰った方がはかどるかも知れない」

「それもそうか。じゃ、呼んで来るから待っててくれな」

 男が部屋を出て行ったのを見て、リオスは「やはり予想通りだったか……」と呟いた。

 あの滝つぼのポイントから麓まで下りて来るには1時間はかかるし、追いつける訳が無い。

「酷い目に遭って無ければ良いのだがな」

 騎士団の人間を連れてあの男が戻って来るまで、何時も着ている黒いコート姿では無い自分の格好を見下ろしつつ今はここに居ない便利屋の安否をリオスは気にかけていた。


「……ここまでが、俺が麓に倒れていた時までの全てだ。と言っても川に流されてる途中で気絶してしまったから気絶後の話までは分からんのだがな」

「と言う事は、その集団の情報を集めれば良いのだな」

「それと黒髪の便利屋も、か」

 リオスが騎士団員達とさっき自分の看病をしてくれた男にそう話し終え、調査をして貰える事を約束してくれた。

 今の怪我が治るまではここに留まるつもりだし、むしろそれしか出来ない状況なのでリオスはその行為を素直に受け取る事にする。

(……裏が無い、とも限らないがな)

 安易に人を信用すると痛い目を見る、と言う事は軍人として以前に人として心がけておくべき事の1つだと思うし自分もそう思っているのだが、かと言って疑い過ぎるのも良くない。

(それで俺、1度失敗してるしな)

 ホルガーを尾行して騎士団に連行されてしまったあの時の間抜けな自分は、今でも記憶に新しい。


 そんな事を思っていると、どうやら調査の内容を簡単に決めていた騎士団員と看病をしてくれた男がリオスの方に向き直る。話は終わった様だ。

「あんたの怪我がとりあえず動ける位までには、さっきも言ったけど3日位かかるだろう。だから俺達も3日位調査してみるから」

 この村でも色々と他にやる事があるから余り時間のかかる調査は出来ないんだ、とリオスは看病をしてくれた男にそう言われたが、それだけで今のリオスには十分ありがたい話だった。

「結構。むしろ調査をしてくれるだけありがたい」

 でも、とそこで一旦言葉を切ってリオスはあえて問い掛けてみた。

「……俺の事、疑わないのか?」

「疑う?」

 何故に? とでも言いたげな顔をしながら騎士団員の1人が逆に問い返して来た。

「もしかしたら俺が嘘をついているかも知れない。あんた達を罠にはめる気かも知れない。なのに何故、あんた達はそこまでサクサク物事を進めたり、俺をこうして看病してくれるんだ?」

 我ながら凄く失礼な事を聞いている。怒鳴られたって仕方が無い。

 そう考えながらこの村の住人達の返答を待つリオスだったが、その返って来た答えは意外なものだった。


「あんたみたいな人が、殺人計画なんて立てられる訳が無いと思うけどなぁ」

「そうそう。まず魔力が無い人間なんて初めて見たし、魔術の効果が無い人間だって俺達も初めての経験だったし。それに明らかに、あんたはこの辺りの地域に不慣れって感じがするよ。この辺りじゃまず見かけない服装だしな」

「それに正直言って、大勢の人間と戦って滝つぼに突き落とされる程の人間がそんな罠を仕掛けられるとも思えないよ。だって明らかに無茶な勝負だし、不慣れな地域でそんな罠を大勢相手に易々と仕掛けられる様な奴はそうそう居ない」

「しかも、そんな罠を仕掛けようとする人間がわざわざ落石処理を進んで手伝うもんかね? 俺達を罠にはめやすくする為にわざと信頼を得ようとしたって話も考えられるかも知れないけど」

「あの魔物が出たとは言え、山の上の方こそ危ないだろうしな。適当な所まで進んで身を隠せば良かっただろうに」

 と言う訳で、あんた自身に危険性は無いと思うよと話を締めくくられた。

 何だか凄く馬鹿にされている気がしないでも無いのだが、疑う様な質問をしてしまった自分も同じ穴のむじななのでリオスは特に何も言い返さず黙っていた。


 だが、今の会話の中に非常に気になった事が出て来たのでリオスはその事についても尋ねてみる。

「……ちょっと待て。さっき、俺の事を「魔術の効果が無い人間だ」って言わなかったか?」

 その問い掛けに、困った様な顔をしながら男と騎士団員達が返答する。

「ああ、言ったけど」

「どう言う事か俺達も分からないんだよ。同じ事言うけど、魔術の効果が無い人間なんて初めてなんだ。治癒魔術をかけてその顔の傷の跡と他の傷を治そうと思ったんだけど。幾ら魔術を発動してもまるで傷が塞がる様子が無いんだ」

 何時もなら綺麗に治る筈なのに、これも魔力が無いのが関係しているのかな? と本当に心底困った様な表情を見せながら困る村の人々。

 そしてリオスもまた、そう言われても……と自分には如何しようも無い事を感じて同じく困った様な表情を見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ