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58.因縁の存在

 しかし、向かって来ているのは魔術師だけでは無く騎士団員達もだ。

 だから魔術師達の相手をしながら騎士団員達の相手もしなければいけない。

 そう言う意味でも、この動きが制限される倉庫の中をバトルフィールドとして選んだのは正解だったなと自分の判断に自画自賛しながら、エヴェデスは騎士団員を3階下へと投げ落とす。

 フリーランニングだけでは無く、伊達に陸軍の日課で日頃からトレーニングをしている訳では無いのだ。

 更に突き出される槍を宙返りで回避し、着地したエヴェデスに次の槍の攻撃が出される前に素早く騎士団員に近づいて喉を短剣で切り裂く。

 囲まれそうになれば手すりを飛び越えながらその手すりを使ってグイっと半回転の方向転換をしつつ、下のフロアへと方向転換の反動で身体を反らしながら飛び降りる。


 フリーランニングの経験を存分に活かした戦い方で翻弄しつつ、この世界独特の魔術師の魔術や騎士団員達の包囲から逃れながら戦っていたエヴェデスだが、ここである事に気が付いた。

(……そろそろ打ち止めか?)

 フェンスを乗り越えた最初の時よりも、自分を追いかけて来ている人数が減って来ている事に周りの状況を見て判断したエヴェデスは、ラストスパートだとばかりに残りの騎士団員達と魔術師達を潰して行く。

 短剣だけでは無くキックも併用し、パンチだって時には繰り出す。首もへし折る。

 手すりを乗り越えて1階へと着地しても倉庫の中にある棚を力任せに引き倒して騎士団員を押し潰したり、身軽な動きで自分をロックオンされない様にしながら自分なりのやり方で戦った。


 そして騎士団員を全滅させ、最後の1人になった魔術師も心臓への一突きで絶命させて息を吐く。

(……終わったらしいな)

 そのままドアから外に出ても良い様な気がしたのだが、念の為に3階まで一気に駆け上がってその3階の窓から外を見下ろす。

 待ち伏せとかをされていたらまた面倒な事になるからだ。

(……大丈夫みたいだな)

 あのキヴァルス山でのバトルの前に鉢合わせになった事を思い出し、用心しながら再び1階へと戻って安全確認をした方向の窓から外に出る。

 勿論倉庫の陰から周りの状況と気配を確認する事も忘れずに、エヴェデスは再び用心深くなった。


 この倉庫の中に入って来た人員だけでどうやら騎士団員も魔術師達も終わりだったらしく、後はフェンスによじ登っていた時に見えたテントの中の様子を窺うだけだ。

 辺りはさっきまでの大騒ぎが嘘の様に静まり返っている。

 誰かが隠れていて上手く気配を殺しているのか、あるいは本当に全員潰してしまったのかまでは分からない。

 さっきフェンスを乗り越えた時にフェンスの内側に落としてしまった自分の荷物入りの袋を回収は後回しにしてから、人の気配が無い事を確認しつつ再び短剣を構えてエヴェデスはテントへと用心しながら近付いて行く。

 果たしてこの中に何があるのか。

 ごくりと唾液と息を呑みつつ、テントの中に侵入した……その瞬間!!


「ぬおぅ!?」

 バリッとテントの外布を突き破って変わった形の武器が飛び出て来るのを、エヴェデスはその肌に感じた強烈な殺気と衰えて来た反射神経をフルに活用してギリギリ回避。

 横っ飛びで避けた勢いで地面を転がって立ち上がり、更にもう1度宙返りで大きくテントから距離を取る。

 しかしその瞬間、視界の隅から何かがやって来るのが見えたので3連続のバック転でその「何か」からも距離を大きく取る。


 視界が2回3回と目まぐるしく回転し、上下左右が元の位置に戻った時にエヴェデスが見たものはまさに因縁の存在だった。

「……惜しかったな、後もうちょっとだったのによ」

 その因縁の存在に対してそんな軽口を叩いてみるが、こうして対峙しているだけでも分かる。

 この2人、ドミンゴと……もう1人の銀髪の男は名前すら知らないが、これまでの騎士団員とも魔術師達とも明らかに格が違う2人なのだと。


「色々と仕出かしてくれた様だな。絶対に貴様をこの国から出す訳には行かない」

 筆頭魔術師のドミンゴがエヴェデスに向かって口を開いた。

「……それはそっちの都合だろ。俺はこの国から出させて貰うぜ。こんな危険な国はもううんざりなんだよ」

 そう言いながらも短剣を構えるその姿勢は崩さず、次のセリフを口から出す。

「それに御前達は色々と周辺諸国とトラブルを起こしているみたいだし……例えば空気清浄機の話とかな」


 その瞬間、エヴェデスのセリフに銀髪の男がビックリした表情になる。

「貴様、何故その事を知っている!?」

「親切な人間から聞かせて貰ったんだよ。空気清浄機を使ってお前達がやろうとしてる事は、今まで受けた恩を仇で返す様な事なんだよな?」

 今度はドミンゴの表情が変わる。

「……まさか、馬車の中から無くなった資料は貴様が持っているのか?」

「さぁ? 知りたかったら俺を止めてから幾らでも確認すれば良いだろ。でもこれだけは確認させてくれ。この魔法王国カシュラーゼは、空気清浄機の名目で他国に殺人兵器を輸出する計画がある……そうだろう!?」

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