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56.フェンスとドイツ人

(これじゃあ身動きが取れねーよ!! くっそ、こうなったら……)

 ここは港町だが港湾区域と一体になっている、本当に小さな海沿いの町だと言う事で鉄製のゲートが設置されているのだ。

 そのゲートの構造をまずはしっかりと確認する。

 港湾区域のゲートの地上からの高さと言えば、それこそ高い物から低い物まで色々と種類が存在している。

 ここにも地球と同じ様に金属製のゲートが造られており、しかもその高さはおよそ3メートル。

 横にスライドするゲートはかなり重そうな素材で、ゲートの真正面に立ってみると町の中が見えない様になっている。


(山に向かってこんなに物々しいゲートを造るって……うーん)

 侵入者対策にしてはちょっと大袈裟過ぎやしないか? と考えたのだが、すぐに1つの結論に彼は辿り着く。

(ああそうか、山からやって来るのは人間だけじゃねーんだな)

 何度か耳にした事はあるものの、実際にその存在を目にした事は無い「魔物」の存在。

 いや、厳密に言えばあのワイバーンも魔物なのでああ言った人間以外の生物が港町に簡単に入って来られない様にしているんだな、とエヴェデスは納得した。


 そのゲートの両側からは同じ様に金属製のフェンスが伸びており、町をすっぽりと覆っている。

 それを見たエヴェデスの頭の中では、港町のフェンスとゲートと言うよりも昔テレビドラマで見たアメリカの刑務所の外観を思い出した。

 しかし救いだったのは鉄の壁がゲートの両側から続いているのでは無く、そのアメリカの刑務所の様に金網のフェンスとなってその町の敷地を覆っていた事である。

 町の中が見えない壁で全てを覆ってしまうと海風が通り抜けないからなのか、あるいはフェンスの外からやって来る人間や動物が見えなくなってしまうからか、もしくはこの港町が山の麓に存在しているので周りの地面の状況から考えて壁を造り辛かった為に断念してフェンスで妥協をしたのか。

 どれもこれもエヴェデスが勝手に自分の中でイメージした予想でしか無いのだが、いずれにせよ金網のフェンスがあるのならば好都合なので早速行動を開始する。


 軍人であると同時にフリーランナーでもあるエヴェデスにとって、これ位のフェンスを上るのはブレックファースト前の準備運動レベルの話である。

 ただし、余り素早く上ってしまうとガチャガチャとフェンスが音を立ててしまうので騎士団員にバレる可能性がある。

 なので金網に手を掛けて非常にスローペースで上って行くエヴェデスのその姿は、さながらジェームズ・ボンドを始めとするスパイ映画の主人公の様であった。

 あの村の柵をくぐった時と正反対の潜入の仕方なのだが、フェンスをよじ登って行く内にエヴェデスの目は妙な光景が見えた。

(……あれって……)

 港の中には魔術で開発されたのかどうかまでは分からないが、ドイツの首都ベルリンで未だに多く人々の歩く道を照らしているガス灯に似ているデザインの街灯が、港の中のその光景を映し出している。


 どんな光景なのかと言えば、野外遠征の活動等で使用される様な大きなテントが港の中心に張られていたのだ。

 明らかに港の光景としてはミスマッチ。

 そしてそのテントの周りでは、何かの作業をして数人の騎士団員達がウロウロと歩き回っているでは無いか。

 夜の時間帯だと言う事で人気が無いのなら分かるのだが、別の意味で人気があり過ぎる港の中のこの状況。

 それを見て、エヴェデスはついさっきあのキヴァルス山で戦った騎士団員と魔術師の連合部隊の出所がこの部隊からだと直感的に気が付いた。

(あー成る程な、俺の情報を手に入れてこうしてここまで先回りして、こいつ等と一緒に来ていた部隊が俺が山を越えて来るかも知れないって事で山に来て、俺と戦ったって事か……)

 そう考えれば全て納得の出来る理由だ。

 だけどそうやって感心している状況では無い。

 この港から船を使ってエスヴァリーク帝国まで行く予定なのだが、こうして待ち伏せをされているとなればルートの変更を余儀無くされてしまうだろうと考えるエヴェデス。


 一旦ここはフェンスを乗り越えるのを止めて、また1日掛けてキヴァルス山を越えてあの町に戻り、それから何かの移動手段を見つけて別の町へ向かった方が安全に国外へ脱出出来る可能性がアップする。

 だけどここまで来てしまって、今のエヴェデスにはもうそんな気力は残っていない。

 食事もあの山の頂上で摂ったのが最後だったし、何より大量殺人を犯して来たあの山に戻って大騒ぎになっているだけならまだしも、こんな夜の暗闇の中で山を登り下りして滑落でもしたら全てが水の泡だ。

 じゃあ一体どうすれば良いのか?


 このまま町の中に入れば騎士団員と魔術師達に見つかるのは必死だし、かと言って今からだと戻れない。

 キヴァルス山からこの港町まで1本道しか無く、他の方面に向かう為の出入り口が港町の中を通らなければ利用出来ないのもエヴェデスの考えに追い打ちを掛けた。

(くっそ、如何すりゃ良いんだよ!?)

 自分の行動をフェンスにしがみ付いたまま決めきれないエヴェデスだったが、その瞬間フェンスからズルっと足が滑った!!

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