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27.身軽な動きで武器は短剣

 荒くれ者が出ると言う情報をあの男から仕入れたので、エヴェデスは事前にマントの下のズボンのベルトにあの最初の町に入る前に、茂みの奥で本物だと確かめた短剣を隠し持っている。

 こいつ等こそ、あの男が言っていたまさに荒くれ者だろう。

 そう考えてその短剣を引き抜こうとしたのだが、その前にエヴェデスに対して武器を振りかぶって来るのはこの荒くれ者達のリーダー格だろう小柄な槍使いの男だった。

 正確に数えてみれば全部で6人居るものの、体格も性別もバラバラなので襲い掛かって来た奴から倒して行くしか無い。

 でも相手も武器を持っているし、自分も武器を持っている。

 真っ向勝負では勝ち目が無いと判断し、ここは身動きがお互いに取り難くなりそうな茂みの中へと逃げ込んだ。


 当然荒くれ者達もエヴェデスを追って茂み……と言うよりも切り開かれていない森の中へ入って襲い掛かって来る。

 変装の為に以前ナチスの黒いロングブーツに履き替えた事が、ここでエヴェデスにとって功を奏した。

 現ドイツ軍の革靴であれば間違い無く足首やスネを枝や草にぶつけて思わぬケガをしてしまう可能性があったからだ。

 そのブーツを履いている足で自分を追いかけて来たロングソード使いの女の足を引っかけて転ばせ、続けて向かって来た斧使いの背の高い屈強な男が斧を振り被って来たので、その前にエヴェデスは自分よりも背の高いその男の懐に飛び込んで心臓を一突きにする。

「ぐぉ……」

 すぐに短剣を引き抜いて、絶命した男の返り血を少し浴びつつ生い茂った草や枝が無い斜め左側へとゴロッと転がり、立ち上がったエヴェデスは残りの荒くれ者達の相手もする。


 さっきのロングソード使いの女が立ち上がって自分の方に向かって来るのが見えたが、その女に向かおうとした時にヒュッと風を切る音がして、エヴェデスの目の前を矢が掠めて行く。

「うお!?」

 間一髪で矢を回避出来たが、これは弓使いが荒くれ者達の中に居ると言う証拠だった。

 だとしたら何時また狙われるかが分からないので、その弓使いを倒しに行きたい所……だったが、その前に痩せぎすの魔術の杖を持っている男がエヴェデスの背後を取ってその杖で木の陰から殴り掛かって来た。

「ぐう!」

 とっさにその杖を短剣を持っている右腕でブロックし、痛みをこらえつつも空いている左手で男の首根っこを掴んでそばの木の幹に叩き付ける。

 その手を離すと同時に男の顔に向かって頭突きをし、完全に男が怯んだ所でまた心臓目掛けて短剣を突き立て2人目を撃破。


 続け様に3人目の……後ろから躍り掛かって来たさっきのロングソード使いの女に対しては短剣を引き抜きつつしゃがんで足払いを掛けてやる。

 しかしこれは上手くジャンプでかわされたので、エヴェデスはそのまま動きを止めずに立ち上がり女の腹に前蹴り。

 距離が少し離れた所で一気に近づき、今度は女の喉を短剣で横一文字に切り裂いた。

「ぐひゅっ……」

 血が噴き出してエヴェデスに少し掛かる。

 そのまま絶命して地面に倒れ込む女を視界の端に捉えつつ、4人目のターゲットであるナイフ使いの背の高い男の元へ。

「くっ!」

 そんなエヴェデスの足元に再び矢が突き刺さり、一旦バックステップで彼はその場から逃れる。


 短剣使いとナイフ使い、そして同じく背の高い者同士……エヴェデスよりは若干背が低いがそれでも背が高い事に変わりは無い。

 短いリーチの獲物同士なので接近戦になるが、エヴェデスは怯む事無く立ち向かう。

 それに何も短剣だけが武器では無いのだ。

「っ!!」

 ギリギリで相手のナイフをかわし、足元の土をブーツでサッカーボールの様に蹴り上げる。

「ぶほっ!?」

 相手の目くらましに使ったその土は上手くナイフの男の顔面にヒットし、大きな隙となってしまった。

 よろけたその男の胸に思いっ切り短剣を突き立ててこれで4人目も殺害。


 短剣を握ったままエヴェデスが後ろを振り向くと、そこには既に槍を突き出そうとしているあのリーダー格の男の姿が。

「っ……!!」

 短剣から手を離し、ほぼ反射神経だけで身体を全力で捻って突きをかわし……たつもりがエヴェデスの頬を薄く切り裂いた。

「ぐぅ!」

 槍はそのまま既に息絶えているナイフ使いの男に突き刺さり、その男の重さに引っ張られて槍ごとエヴェデスの方に男の身体が倒れ込んで来た。


 男に寄り掛かられて喜ぶ様な趣味は無いエヴェデスは、男の顔面をメチャクチャに殴り付けてそれから膝蹴りも男のボディにかまし、男がグッタリとした所で彼の首を全力で折って絶命させた。

 そして最後の1人である弓使いの女が、リーダー格とのバトルに集中していたエヴェデスに矢を放って来たがそれはリーダーの身体がブロックになってくれた。

 さっきのナイフ使いの男に刺さったままの短剣を引き抜き、ついでに左手に石を握り締めて女の元に向かう。

 それを見て女は次の矢を用意しようとしたのだが、その前にエヴェデスは石を投げてそれを阻止。

 更に彼のスライディングが土埃を上げながら女の足元に炸裂。

 女は地面に倒れ込み、そこにエヴェデスがのし掛かって女の首に短剣を突き立ててバトルは終わった。

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