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25.騎士団員の事情聴取

「その男は本当にそう言ったのだな?」

「間違い無い。ゴリソニーに向かうって言ってた」

 騎士団員の事情聴取を村人達が受けて行く中で、エヴェデスに道案内をしたあの男は騎士団に全てを自白していた。

 あの男に魔力が無かった事、明らかに嘘だと分かってしまう様な話を色々として来た事、マントで隠れていて服装は良く分からなかったがブーツを履いていたのは分かった等と言う事を話したら、その男と騎士団員の会話に便乗する形であの雑貨屋の女店主からの証言も王国騎士団は得られる事になったのである。


 そしてその後、1時間程遅れる形で王国騎士団長のライマンドが直々にこの村までやって来て、そしてその話を村人達から聞いてこれからの行動の予定を立てる。

「よーし、全員集合だ!!」

 事情聴取が終わった村人達を全員それぞれの家に帰し、あの魔力が無い男を探す為に結成された騎士団員の部隊を全員そのまま村の中に整列させた。

 流石に王国内の騎士団員全員をかき集めて捜索する訳にはいかないので、その分は事前に王国各地に設置された通信用の魔術設備で既に連絡をしてある。

 覚えているだけの容姿を各地に教えているが、何よりも「魔力が無い」と言うだけで大きな特徴になるのでその事を優先的に調べる様にとの連絡も勿論してある。


 しかし、この騎士団が何故ここまで来るのに一夜を明かすだけの時間が掛かってしまったのか?

 それにもちゃんとした理由があった。

 騎士団は組織体制であり、色々とめんどくさい手続きも多い。

 個人で逃げて行くあの魔力が無い男よりは、圧倒的に数の面で間違い無く有利なのは誰の目から見ても明らかである。

 が、その追撃部隊が大部隊になればなる程その末端まではなかなか命令が届きにくいものだし、部下だって1人1人が考え方も行動理念も違う。

 王国騎士団は自分達の仕える君主である国王に忠誠を誓うのだが、大多数は騎士団員としてのプライドを持って行動するものの何割かはあくまでも形だけの忠誠でだらしない団員も居る。

 それが組織で行動する上で最も考えなければならないポイントだと判断したライマンドは、まずは魔力が無い男を探す為に少数精鋭の40人のチームを結成した。


 それでも自分の信頼出来る部下を集めて追いかけられる様なチーム体制を整えるまでには様々な事務的な手続きがあったり、国王への王国があったりとすぐに出撃出来ないのがネックだった。

 後は騎士団員達のみならず、それこそあの城の敷地内で一緒に捜索に加わってくれた筆頭魔術師のドミンゴも一緒について来ると言い出したのだ。

 魔法王国と名前がついているカシュラーゼだからこそ、筆頭魔術師にもし万が一の事があれば次の筆頭魔術師を決めたりとか魔法王国の名前に傷がついてしまうとかこれからの魔術研究に大きな支障が出てしまう等の厄介な未来が見えるからだ。

 それでもドミンゴも譲ろうとしない。

 彼は筆頭魔術師であると同時に三叉槍トライデントの使い手でもある。

 そして何よりも、研究対象を自分の手の内に収めていたのにまんまと逃がしてしまった事から悔しさと憎しみと強い執着心を彼の心に生み出してしまったのだった。


 これが大人数故に時間がかかる理由であり、結局あの男を城の敷地内で見つけ出せなかった時からチーム結成してこの村にやって来るまで2日以上掛かったのであった。

 これでもかなり無理をして準備した為、まだまだ人員でもどうばらけさせるかを決め切れていなければ装備の面でも必要最小限で機動力を重視した為に不安が残る。

 何故なら、この世界で逃亡者を追いかけるのは敵がその逃亡者だけでは無いからだ。

 人間以外にも大なり小なりの大きさの魔物が居るし、それから人間と魔獣が合体して生まれたクオーターの「獣人」の存在もある。

 後はあの魔力を持たない人間に情報を教えたと言う男が、その魔力を持たない男に対して「荒くれ者が出るぞ」と忠告したのも騎士団にとっては厄介だった。

(荒くれ者か……)

 その話もあの男から聞いたライマンドは眉間にしわを寄せて考え込んだ。


「荒くれ者がどうしたって?」

「うお!?」

 何時の間にかそばに寄って来てライマンドにそう問い掛けたのは、そのライマンドの反対を押し切ってまで結局この騎士団の捜索チームに自分の部下の魔術師達を引き連れてやって来た、魔法王国カシュラーゼ筆頭魔術師のドミンゴだった。

 考え込み過ぎていたせいで気配に気付けなかったのは迂闊だったが、気を取り直してライマンドはドミンゴに今の自分の心境を話してみる。


「魔力を持たないあの男に、荒くれ者の事について忠告した人間が居るそうです」

「そうなのか? それなら……なるべく荒くれ者とは接触して欲しくないな」

 もしあの魔力を持たない男が荒くれ者といざこざを起こせば、それだけその研究対象であるその男を無事に捕まえる事が出来なくなってしまう。

 それは魔物に対しても同じ事が言える。

 なるべく健康体の状態であの魔力を持たない男を捕らえ、そして解剖実験を行いたいとドミンゴは思っていたからだ。

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