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33.図書館での収穫

 禁書庫へとその足で向かったアルジェントだったが、ここで奇妙な事に気が付いた。

(あれ、俺ってこの世界の文字読めたっけ?)

 今更ながらの話であるが、この世界の言葉が自分の居る地球の言語とは違うのでは無いかと言う疑問をアルジェントは浮かべていた。

 何故ならこの禁書庫の本の表紙を見た時、最初は英語でも無くヨーロッパの他の言語でも無い様な形をしている文字が並んでいたのだが、数秒遅れてそれがスーッと英語に見えて来るのである。

 その事から、この世界の言葉ももしかしたら自分が今喋っている英語では無くて、何かこの世界独自の言葉なんじゃ無いかと推測するアルジェントだったが、凄く今更の事だしそれが分かった所で別に支障が出ると言う訳でも無いので「言葉が通じて文字が読めるのであれば別に良いや」と考えてその話題は終わりにした。


 その話題を終わらせてから、アルジェントは禁書庫へと行く前にまずは図書館の事をラニサヴに説明して貰う。

「この国の事であればここにある本で全て調べる事が出来る、と言われている程の本がここにはある。俺でさえも一生掛かっても全て読み切れないだろうな。地上2階建て、地下1階建ての構造で禁書庫はその地下にある。そのまま禁書庫に行くか? それともまずはこの誰でも閲覧出来る本棚から何か本を探すか?」

 説明を聞き終えたアルジェントは、無礼とは分かっていながらも質問に質問で返しておくべき事があった。

「んー、質問に質問で返す様で悪いが……この図書館の本って借りられるのか?」

「禁書庫以外の本なら1週間限定で借りる事が出来るぞ」

「ああそうなの? だったら目ぼしい本があったら借りさせて貰うぜ」

 やっぱり禁書庫の本は持ち出し厳禁と言う事らしいが、これはアルジェントにもイメージ出来ていた事だったので特に驚きはしなかった。


 その注意事項を聞いてからアルジェントがラニサヴと向かった禁書庫は、採光が重視されている地上部分の図書館と違って地下だと言う事もありやや薄暗い場所だった。

 シャンデリアが申し訳程度に幾つか天井に設置されている位で、他には特にランプの類は見当たらなかった。

「ええと……俺こう言うのは疎いからなぁ。何かこうほら、俺の時みたいに何処かで謎の人物が発見されたみたいなエピソードが載ってる本ってねーのかな」

「今は無いだろう。貴様の様な魔力を持たない人間が現れたとなれば、これから先で貴様がこの世界のこの国に存在していたと言う本が作られる可能性は大いにありえるが」

「あ、なーるほど」

 白い手袋をはめたままの指で器用にパチーンと指を鳴らし、納得したアルジェントは禁書庫の中を色々と見せて貰う事にした。


 結果的に、アルジェントにはまず禁書庫云々の話の前にこの世界の事をもっと勉強する事が必要だと言う事が、図書館に来た事で分かっただけでも大きな収穫になったのは間違い無い。

 元々、こう言ったファンタジーな世界観には全くと言っても過言では無い程、アルジェントには知識が無い。

 そんな人間がいきなりこの世界の持ち出し厳禁の本を読んだ所で、何も理解出来る筈が無かったのだから。

 以前あの魔石を見つけた洞窟へと向かう時に少しだけこの世界の事を教えて貰ったのだが、興味が余り無かったアルジェントは話半分にしか聞いていなかったのも災いした。

 なので子供向けの児童書から借りる事にして、アルジェントは城へと戻る事にしたのである。

(子供向けか……この世界の住人からしてみりゃあ、俺はこの世界の事は何も分からない子供みてーなもんだよな)

 自分でも自虐なのか良く分からない事を口走りつつ、軍の事以外の勉強もやっぱり大事だよなと彼はこの歳になって今更思ってしまった。


 基本的にアルジェントには、許可を取った時以外の城からの外出は許されていない。

 この世界の人間にとってまだ彼の身体には謎が多い上に、魔力を持たない人間をフラフラと外へ出したら何をされるか分かったものでは無いと言うのがこの国のトップである大公と騎士団長の結論であったからだ。

 なので多少窮屈ではあるものの、今後の生活が保障されているならばそんなに不便な物でも無いかも知れないと言うのがその話を聞かされたアルジェントの考えだった。


(ってか、俺の世界でも人間の身体は謎だらけなもんだけどよ)

 地球でも人間の身体の謎は全て解明されていない。

 だからこそ、この世界ではそれに輪をかける形で格好の研究対象なのだろう……と考えるアルジェントは自分に与えられた城の客間で児童書を読みふけっていたのだが、元々活字が苦手な彼はすぐ飽きてしまいそうになる。

(あー、何か飽きちまったなぁ)

 そう言えばシラットのトレーニングもこの世界に来てから全然やってねーんだよなと思い出し、何処かで身体を動かす事が出来ないかをラニサヴに聞きたかったアルジェントだが、あいにくラニサヴにも騎士団長と言う立場上色々と仕事があってなかなか忙しいらしいので、彼とは別の人物に聞いてみる事にした。

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